半導体、電子部品の風向き変化

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年3月に利上げ開始、年後半にはQTに着手するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+1.7%、S&P500は+2.4%、NASDAQは+3.1%で引け。VIXは27.70へと低下。NASDAQは週間でプラス圏を回復。
  • 米金利カーブは中期ゾーンを中心に金利低下。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.462%(+3.2bp)へと上昇。債券市場の実質金利は▲0.694%(▲6.3bp)へと低下。
  • 為替(G10通貨)はUSDが強く、USD/JPYは115前半へと上昇。コモディティはWTI原油が86.8㌦(+0.2㌦)へと上昇。銅は9507.5㌦(▲274.5㌦)へと低下。金は1784.9㌦(▲8.2㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

経済指標

  • 米11月PCEデフレーターは前月比+0.4、前年比+5.8%。コアデフレーターは前月比+0.5%、前年比+4.9%であった。サプライチェーン問題に起因するインフレ圧力は鈍化しているとみられる反面、足もとではエネルギー価格が再び上昇しておりヘッドラインインフレは落ち着く気配に乏しい。なお同日発表された雇用コスト指数(21年4Q)は前期比+1.0%へと3Qの+1.3%から減速。前年比+4.0%であった。この指標はFEDが賃金動向を計測するうえで重視している。

  • 1月中国製造業PMI(IHS Markit)は49.1へと12月から1.8pt低下。市場予想(50.0)を下回り2ヶ月ぶりに50の節目を割れた。同日発表された政府版製造業PMIも50.1と0.2pt低下した。また非製造業PMI(政府版)も51.1へと1.6pt低下。厳格なコロナ対策、北京冬季五輪を控えた経済活動抑制が影響した可能性がある。

CPI・雇用コスト指数
CPI・雇用コスト指数

CPI・雇用コスト指数
CPI・雇用コスト指数

中国 製造業PMI
中国 製造業PMI

注目ポイント

  • 日本の12月鉱工業生産は前月比▲1.0%と3ヶ月ぶりの減産。部材不足が残存するなか、過去2ヶ月の大幅増産に対する反動がみられた。生産の水準(96.5)は2019年10月の消費増税前の6ヶ月平均(102.3)を明確に下回るも、2021年夏場を底に回復傾向にある。

鉱工業生産指数
鉱工業生産指数

  • 生産を押し上げたのは自動車工業。前月比+1.5%と増産基調を維持。1月入り後に大手自動車メーカーの稼働率は再び低下した模様だが、少なくとも12月の段階では供給制約が緩和していたことが示された。生産予測調査に基づけば、輸送機械工業の生産計画は1月に+3.3%、2月は+5.7%と挽回生産が計画されており、全体の生産計画は1月が+5.2%、2月が+2.2%と2ヶ月連続の増産となっている。経産省が独自にバイアスを補正した1月の予測値は+0.6%であった。

  • 株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業に目を向けると、12月の生産は前月比▲3.0%と減産であった。3ヶ月平均でも▲0.3%と下向きに転じ、出荷・在庫バランス(3ヶ月平均)はマイナス幅を拡大。サプライチェーン問題が緩和に向かう下で最終製品(スマホ、自動車)の出荷が回復すれば、2018年にみられたような意図せざる在庫の大量発生には発展しないと思われるが、それでも足もとで製品需給が緩みつつあることは事実。たとえば固定コンデンサの輸出数量(通関統計)は前年比▲11.9%と3ヶ月連続で減少している。世界的なDX進展、旺盛な耐久財需要を背景に集積回路(IC)、固定コンデンサ、電子回路基板、水晶振動子、コネクタ等といった電子部品は構造的な需要増加に直面しているとはいえ、一旦そのモメンタムは鈍化しつつある。電子部品・デバイス工業の在庫循環図の位置取りから判断すると、在庫を積み増す動きはピークアウトが近いようにみえる。同じく株式市場との関連が深い半導体製造装置(←生産用機械工業に分類される)の生産は前月比▲14.2%と大幅減産であったが、3ヶ月平均では増加基調を維持。生産水準は過去のシリコンサイクルのピークを遥かに凌駕しており本邦メーカーの競争力がなお強いことを示している。

  • 株式市場における半導体、電子部品関連銘柄に対する中長期的な期待は揺らぎそうにない。ただしそれら銘柄の一部は過度な成長期待が織り込まれているようにみえ、短期的に調整圧力が強まる可能性はある。過去、電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランス(あるいは在庫率)が日経平均株価に連動性を有してきた経緯を踏まえれば、一定の警戒が必要だろう。

IT関連財(生産)
IT関連財(生産)

IT関連財(生産)
IT関連財(生産)

固定コンデンサ輸出数量
固定コンデンサ輸出数量

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

日経平均・出荷在庫バランス
日経平均・出荷在庫バランス

藤代 宏一


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