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イタリア大統領選出は難航が続く

~主要政党間の候補者調整がいよいよ本格化~

田中 理

要旨
  • 24日に始まったイタリアの大統領選出投票は、3回目までの投票を終え、幅広い支持を集める候補は現れていない。4回目以降は選出のハードルが下がり、有効投票の過半数の支持で足りるため、各党間の候補者調整が本格化しそうだ。主要政党から幅広い支持を得る人物が後継大統領に選出される場合や、マッタレッラ大統領が続投する場合、政治安定が継続する。ドラギ首相の大統領転身時も後継首相候補が上下両院で信任されれば、ポピュリスト政権の誕生につながる解散・総選挙は回避されよう。党派色の強い人物が後継大統領に選出される場合、ドラギ政権の支持取り止めで、政局が不安定化する恐れがある。

24日に始まったイタリアの大統領選出投票は、有効投票の3分の2以上の支持が必要な3回目までの投票を終え、今のところ幅広い支持を集める候補は現れていない。主要政党は候補者の一本化ができず、3回目までの投票では、約1000名の投票者の半数前後が白票を投じている。白票の数は初回投票では700票近くに及んだが、3回目の投票では400票余りに減少した(図表1)。ただ、投票を前に各党関係者が表明した投票行動と、実際の投票結果は必ずしも一致しない。無記名投票という性質上、党議拘束が掛かりにくく、投票の行方を一段と不透明なものとしている。

去就が注目されるドラギ首相の支持は今のところ数票にとどまるが、同氏は投票開始後も連日、主要政党党首等と面会を重ねており、有力な後継候補の1人であることが窺える。3回目の投票では、続投を否定しているマッタレッラ大統領が125票で最多の支持を集め、候補者一本化が難しい場合の次善策として、同氏の一時的な続投も選択肢となる(前掲図表1)。投票は1日1回で、後継大統領が選出されるまで週末も含めて毎日行われる。4回目以降の投票では選出のハードルが下がり、有効投票の過半数の支持で足りるため、主要政党間の候補者調整が本格化しそうだ。

考えられるシナリオは、①主要政党から幅広い支持を得る人物が後継大統領に選出される、②マッタレッラ大統領が続投する、③ドラギ首相が大統領に横滑りする、④党派色の強い人物が後継大統領に選出される―の4つだろう(図表2)。①と②の場合はドラギ首相の続投と大統領選出での主要政党間の亀裂回避で政治安定が継続する。③の場合、議員定数削減で議席を失う恐れがある議員が賛成に回るには、総選挙を回避できる後継首相候補の指名が前提となろう。後継首相候補が上下両院で信任されれば早期の解散・総選挙は回避されるが、誰が後継首相となった場合もドラギ政権ほどの安定感と改革推進力は望めない。④の場合、大統領選出での主要政党間の亀裂が表面化し、ドラギ政権の支持取り止めにつながる恐れがある。閣外協力する小政党や独立議員の動向次第だが、ドラギ政権を支持する右派ポピュリストの「同盟」とベルルスコーニ元首相が率いる中道右派の「フォルツァ・イタリア」が政権支持を取り止める場合、政権は上下両院で過半数の支持を失う恐れがある。

(図表1)イタリア大統領選出投票の結果
(図表1)イタリア大統領選出投票の結果

(図表2)イタリア政局シナリオのフローチャート
(図表2)イタリア政局シナリオのフローチャート

以上

田中 理


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