1.テーパリングは時間の問題 2.いよいよ加速してきた日本のワクチン

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年前半に資産購入の減額を開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.0%、S&P500は+0.2%、NASDAQは+0.6%で引け。VIXは17.40へと低下。新規の材料に乏しいなか、小幅ながら買い優勢。
  • 米金利カーブはベア・スティープ化傾向。予想インフレ率(10年BEI)は2.427%(▲2.0bp)へと低下。債券市場の実質金利は▲0.856%(+3.7bp)へと上昇した。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

  • 為替(G10通貨)はUSD高傾向。USD/JPYは109を回復、EUR/USDは1.22を割れた。コモディティはWTI原油が66.2㌦(+0.1㌦)へと上昇し、銅も9979.0㌦(+61.0㌦)へと上昇。金は1901.2㌦(+3.2㌦)へと上昇。ビットコインは上昇。

注目ポイント

  • 25日から26日にかけてクラリダ副議長クォールズ副議長は共にテーパリング開始の議論についいて言及した。25日にクラリダ副議長は「恐らく、今後数回の会合で資産購入ペースの縮小について議論を開始できる状況になるだろう」と発言。また26日にはクォールズ副議長が「今後数カ月間の経済成長、雇用、インフレに関して私の予想が裏切られ、とりわけ上振れた場合、FOMCは今後の会合で資産購入のペースを調整するための議論を始めることが重要になる」と発言。

  • 両名とも4月FOMC議事要旨(5月19日公表)に記載のあった「数人の参加者(a number of)はFOMCが設定する目標に向けて経済の急速な進展が継続すれば、今後ある時点のFOMC(upcoming meetings)で、資産買い入れペースの調整(≒テーパリング)を巡る議論を開始することが適切になる可能性がある」との見解を上書きした形だ。4月FOMC(27‐28日)時点においてこの2人の副議長が「数人(a number of)」に含まれていたのかは判然としないが、いずれにせよ現時点で「今後数回のFOMCでテーパリングの議論を開始する」ことがFED中枢部の見解であることが明らかになった。

  • もっとも、こうした重要発言に対して金融市場は「知っていた」と言わんばかりに、ほとんど反応を見せなかった。テーパリングの議論開始それ自体はもはやコンセンサスとなり、テーパリング開始時期についても2022年前半で一致しつつあるように思える。2022年前半にテーパリング開始という日程から逆算すると、夏から秋(ジャクソンホール講演前後)までに明示的なシグナルが発せられ、年末頃に公式な「宣言」があるという流れが自然だろう。多くの市場参加者がそうした展開を描いていると思われる。次回6月15‐16日のFOMCでは、一連の経済見通し(SEP)と共にテーパリングに関するより具体的な情報発信があると考えられるが、金融市場が大きめの反応を示すかは微妙なところだ。今後、金融市場が大きな反応を示すとしたら、テーパリング開始“後“の減額ペースに関する情報だろう。現在のところ市場関係者のコンセンサス(NY連銀実施の4月プライマリーディラーズサーベイ)は2022年1Qのテーパリング開始、2022年末の買い入れ停止だが、それよりも早いペースで資産購入が減額されるなら、金利が急上昇する可能性は否定できない。なお、筆者個人の見解として2022年末よりも早い資産購入停止の可能性は低いと考えている。

市場関係者が予想する資産購入ペース
市場関係者が予想する資産購入ペース

  • 最後に別の話題として日本の高齢者ワクチン接種が加速している点に触れておきたい。首相官邸が日々更新しているワクチン接種回数(高齢者等、26日公表時点)によると、5月24日は27.2万回、25日は26.0万回となっている。今のところ大きな混乱もなく進展し、医療従事者を含めた累計接種回数は1000万回を超えた。思いのほか順調な印象を受ける。7月末までの高齢者接種に目途がつけば、経済活動正常化の期待が膨らみそうだ。

ワクチン接種回数(累計)、高齢者ワクチン接種回数(一日あたり)
ワクチン接種回数(累計)、高齢者ワクチン接種回数(一日あたり)

ワクチン接種回数(累計)
ワクチン接種回数(累計)

高齢者ワクチン接種回数(一日あたり)
高齢者ワクチン接種回数(一日あたり)

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。