過去最高を更新した輸出

~外需頼み、国内はワクチン待ち~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年前半に資産購入の減額を開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.6%、S&P500は+1.1%、NASDAQは+1.8%で引け。VIXは20.70へと低下。インフレをテーマとする株価下落は落ち着きがみられる。
  • 米金利カーブは中期ゾーンを中心に金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.453%(▲4.3bp)へと低下し、債券市場の実質金利は▲0.834%(▲0.5bp)へと低下した。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面安。USD/JPYは109前半を割れ、EUR/USDは1.22前半へと上昇。コモディティはWTI原油が62.1㌦(▲1.3㌦)へと低下。銅は10048.0㌦(+46.5㌦)へと上昇。金は1881.9㌦(+0.4㌦)へと上昇。ビットコインは下げ止まり。

経済指標

  • 米新規失業保険申請件数は44.4万件へと減少継続。4週間前から12.2万件も減少した。一部の州では失業保険の特例措置打ち切りに向けた動きもあり、今後は継続受給者数も減少基調を強める可能性が高い。

米国 新規失業保険申請件数、失業保険等受給者数
米国 新規失業保険申請件数、失業保険等受給者数

米国 新規失業保険申請件数
米国 新規失業保険申請件数

失業保険等受給者数
失業保険等受給者数

注目ポイント

  • 昨日発表の3月機械受注と4月貿易統計は共に製造業の回復がなお底堅いことを示した。

  • 3月コア機械受注(民需、除船電)は前月比+3.7%と3ヶ月ぶりに増加。1-3月期では▲5.3%となった。製造業は前月比▲0.1%と小幅ながら3ヶ月連続の減少。もっとも、弱さは非鉄金属や造船業に集中しており、一般機械(はん用、生産、業務)、自動車・同部品、電気機械といった重要業種は持ち直し基調を維持していた。ネガティブな印象は受けない。国内外における財需要の高まりが製造業の設備投資意欲をかき立てている様子が窺える。非製造業は前月比+9.5%と3ヶ月ぶりに増加。運輸・郵便、情報サービス、建設業が増加した。省力化やDXに絡んだ需要が根強いと思われる。資本財輸出の先行指標となる「外需」は前月比▲53.9%と大幅減少も、3ヶ月平均値の水準は極めて高く、需要後退を懸念するには相当な距離がある。米国と中国向けを中心に資本財輸出は高水準維持が期待される。

機械受注、機械受注(需要者別)
機械受注、機械受注(需要者別)

機械受注
機械受注

機械受注(需要者別)
機械受注(需要者別)

  • 株式市場との関連が深い「電子計算機等」の受注は前年比+6.4%と6ヶ月連続のプラスであった。この系列は主として半導体製造装置の受注高を反映する。筆者作成の季節調整値では前月比▲1.0%と3ヶ月連続のマイナスも、水準は前回シリコンサイクルのピーク時を凌駕しており旺盛な需要が窺える。この指標は日経平均との連動性が強く、コロナ禍の株高を説明してきた指標でもあるから、こうしたマクロファンダメンタルズの改善を裏付ける材料は素直に好感される。

電子計算機等(機械受注)・日経平均
電子計算機等(機械受注)・日経平均

  • 輸出も好調であった。4月の名目輸出金額(季節調整値)は前月比+4.3%と2ヶ月ぶりに増加。物価調整後の実質輸出(当社作成)は前月比+3.7%と強く伸び、コロナパンデミック発生前を回復し、既往最高を更新(日銀算出ベースでも既往最高)。4月は主要地域(米、欧、中、その他アジア)が押し並べて増加した。19年12月との比較では米国向けが+0.5%と微増に留まるも、中国向けは+18.1%、NIES向けは+15.5%と大幅に伸長。半導体関連(含む製造装置)のほか、自動車が回復基調を強めている。4月の品目別では一般機械が+7.8%と大幅に増加し、海外の設備投資意欲の回復を再確認させた。

  • 株価については、当面、製造業主導の業績相場が見込まれる。東証33業種のうち2020年10月対比で12ヶ月先予想EPSが顕著に伸びているのは電気機器、輸送用機器、機械、鉄鋼、非鉄金属、海運といった業種である。

実質輸出
実質輸出

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。