6月末までに高齢者ワクチン接種が終わるなら

~米国の事例再現か~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年前半に資産購入の減額を開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.5%、S&P500は+0.4%、NASDAQは+0.1%で引け。堅調な米指標が景気回復期待を強めた。VIXは16.30へと低下。社債市場はIG債(投資適格)が概ね横ばい、HY債(投機的格付)が堅調。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。10年は過去数日の急低下が一服。予想インフレ率(10年BEI)は2.370%(+2.7bp)へと上昇。債券市場の実質金利は▲0.793%(▲2.4bp)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

  • 為替(G10通貨)はUSDの強さが中位程度。USD/JPYは109近傍、EUR/USDは1.20近傍で一進一退。コモディティはWTI原油が63.1㌦(▲0.3㌦)へと低下し、銅も9211.0㌦(▲73.0㌦)へと低下。金は1779.0㌦(+13.6㌦)へと上昇した。景気の強さを反映する「銅」と安全資産「金」の相対価格は低下。ビットコインは急落。

主要通貨の変動率(前日比)
主要通貨の変動率(前日比)

経済指標

  • 4月ミシガン大学消費者信頼感指数は86.5へと小幅に改善。現況はコロナパンデミック発生後の下落の半分程度を埋め、期待指数はコロナパンデミック発生初期段階にあたる2020年3月のレベルを回復。1400ドルの給付金効果に加え、ワクチン接種の進展およびそれに伴うコロナ感染状況の好転が人々のマインド改善に寄与していることに疑いの余地はない。予想インフレ率は1年先が3.7%へと急上昇。ガソリン価格上昇が体感物価上昇を通じて予想インフレ率を押し上げた可能性が指摘できる。5年先は2.7%へと小幅低下も、過去6年程度のレンジ上限近辺で推移。過去数ヶ月、前月比ベースの消費者物価が上昇率を高めており、それが人々の予想に影響を与えた可能性がある。現時点で予想インフレ率上昇が金融政策に与える直接的影響は限定的とみられるが、今後、例えば3%に切り上がるようなことがあれば、金融緩和の段階的終了を正当化する材料になるとみられる。

ミシガン大学消費者信頼感指数 米国予想インフレ(ミシガン大学調査) 
ミシガン大学消費者信頼感指数 米国予想インフレ(ミシガン大学調査) 

ミシガン大学消費者信頼感指数
ミシガン大学消費者信頼感指数

米国 予想インフレ(ミシガン大学調査) 
米国 予想インフレ(ミシガン大学調査) 

  • 3月米住宅着工件数は前月比+19.4%、173.9万件であった。大寒波の影響を受けた2月の落ち込みを埋めてなお余りある増加を示した。戸建てが+15.3%、集合住宅が+30.8%とそれぞれ大幅に増加。着工許可件数も+2.7%と反発。既発表のNAHB住宅市場指数が高水準を維持していたことと整合的である。

住宅着工(許可)件数
住宅着工(許可)件数

注目ポイント

  • 米国経済は3月入り後、ワクチン効果が明確になってきた。季節要因や国ごとの医療体制に相当なバラつきがあるため、人口100人当たりのワクチン接種が〇〇人になれば経済活動再開が可能になるといった閾値を見つけだすことは難しいが、米国の例に基づくと、やはり高齢者のワクチン接種に目途が付く20%が一つの転換点だったように思える。米国の65歳以上人口(高齢化率)は16%程度であるから、医療従事者や重症化リスクの高い人々の接種に目途が付けば経済活動再開が加速度的に進むという、一つの実証結果が得られた形だ。ある意味当然の帰趨かもしれないが、何かと不透明感の強い状況でこうした先行事例は明るい。
  • その点、日本の高齢化率は28%と米国対比10%pt以上も高いため、経済活動再開が加速度的に進むためのハードルはその分だけ高い。もっとも、日本政府の思惑通りにワクチン接種が進めば、今夏にもそれが達成されることになる。河野大臣は18日のテレビ番組でファイザー製ワクチンの追加購入について「同社と実質的に合意」したとしており、6月末までに高齢者3600万人分についてファイザー製ワクチンの供給が可能と説明した(※「接種」が可能とした訳ではない点に注意)。そのうえで9月までに接種対象者全員分(16歳以上、1.1億人)のワクチンを確保できるとの見通しを示した。むろん、ワクチン接種がスケジュール通り進むかは予断を許さないものの、日本でも高齢者がワクチン接種を終えると期待される6月末頃に流れが変わる可能性はあるだろう。ワクチン接種率30%程度を一つのポイントとして認識しておきたい。

米国 ワクチン接種状況
米国 ワクチン接種状況

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。