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公立学校に増える日本語で学べない子どもたち(1)

~「日本語指導が必要な児童生徒」の「集住・散在化」の実態とは~

宍戸 美佳

要旨
  • 当研究所では「人口減少時代の未来設計図~社会・経済、そしてマインドの変革~」をテーマに、人口問題へのリサーチを各分野で強化していく。今回は2編に分けて、日本の児童生徒数が減少する中で公立学校の教室に増えている「日本語指導が必要な児童生徒」に焦点を当てて考察する。まず、前編では「日本語指導が必要な児童生徒」の現状を、文部科学省が公表したレポートをもとに確認していく。
  • 日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少し続けている。小学校、中学校、高等学校などに通う児童生徒数はそれより早く1985年にピークを迎え(2,235万人)、2011年には1,400万人を割り込み2024年には1,226万人となった。
  • 一方で、在留外国人は年々増加しており、このうち、日本での就学義務年齢および高等学校在学生に相当する6歳から18歳の在留外国人数も増えている。
  • 公立学校に在籍する外国籍の児童生徒数も増加する中で課題として指摘されているのが「日本語指導が必要な児童生徒」であり、「集住・散在化」しているとされる。
  • 大都市圏を中心とした公立学校に外国籍の児童生徒数が多く通学しており、こうした都府県では、外国籍、日本国籍を問わず日本語指導が必要な児童生徒が多く在籍している集住の状況がより進み、前回調査(2021年)時点で在籍数の多かった都府県で、さらにその数が増加している。
  • 散在化が進んだ結果、2021年時点で日本語指導が必要な児童生徒の数が相対的に多くなかった大都市圏以外の都道府県において、増加率が大きくなっている。また公立小学校における状況のように、新たに在籍が報告される市区町村があるなど、日本語指導が必要な児童生徒の在籍が大都市圏以外の各地にも広がっている。
目次

1. はじめに

当研究所では2025年、「人口減少時代の未来設計図~社会・経済、そしてマインドの変革~」をテーマに、人口問題へのリサーチを各分野で強化していく。今回は2編に分けて、日本の児童生徒数が減少する中で公立学校の教室に増えている「日本語指導が必要な児童生徒」に焦点を当てて考察する。まず、前編では「日本語指導が必要な児童生徒」の現状を、文部科学省が公表したレポートをもとに確認していく。後編では、そうした児童生徒への学校現場での指導状況と課題、および課題解決の方向性について考察する。

2. 減少する児童生徒と、増える外国籍の子どもたち

日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少し続けている。だが、小学校、中学校、高等学校などに通う児童生徒数はそれより早く1985年にピークを迎え(2,235万人)、2011年には1,400万人を割り込み2024年には1,226万人となった (資料1)。

図表
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  一方で、在留外国人は年々増加している(資料2)。2012年12月末は203万人であったが2023年12月末時点は341万人、また2024年12月末には377万人と過去最高を記録した。このうち、日本での就学義務年齢(注1)および高等学校在学生に相当する6歳から18歳の在留外国人数も増えている。2012年は15.5万人であったが、2023年には23.6万人と約1.5倍に増えている。ただし、在留外国人数に占める割合は2012年以降7%前後で推移し、その割合は大きく変化していない。

図表
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こうした在留外国人の子どもたち(以下、外国籍の子どもたち)については、その保護者が日本の義務教育に就学させる義務はない。しかし、在留外国人が、その子どもを公立の小学校や中学校といった公立義務教育諸学校へ就学させることを希望する場合には、国際人権規約等を踏まえ、日本人と同様に無償で通学することができ、日本人児童生徒と同一の教育を受ける機会が保障されている。教科書の無償配付や就学援助もその機会に含まれている。

在留外国人数の増加を反映して、日本の公立学校に通学する外国籍の子どもの数(以下、外国籍の児童生徒数)は年々増加している。資料3は公立の小学校、中学校、高等学校、義務教育学校、中等教育学校および特別支援学校に在籍する児童生徒数の推移を示したものである。2012年は71,545名であったが、2023年には129,449名と約1.8倍まで増加している。中でも在学者数が多い小学校、中学校および高等学校の全在籍者に占める外国籍の児童生徒の割合を見ると、小学校で約1.4%、中学校で約1.1%、高校で約0.6%となっている。全在籍者に占める割合としては1%前後と少ないが、2012年と比較してその割合はいずれも増加している。少子高齢化により在籍者総数が逓減する中で、外国籍の児童生徒数は特に2015年ごろから増加している。

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3. 増加する日本語指導が必要な児童生徒

公立学校に在籍する外国籍の児童生徒数が増加する中で課題として指摘されているのが「日本語指導が必要な児童生徒」である。本章では文部科学省が数年おきに実施している公立小・中・高等学校等における日本語指導が必要な児童生徒に関する調査結果を踏まえて、この課題の現状を確認していく。

(1)日本語指導が必要な児童生徒の増加

そもそも「日本語指導が必要な児童生徒」とはどのような児童生徒を指しているのであろうか。文部科学省が実施した調査では、日本語で日常会話が十分にできない児童生徒、もしくは、日常会話ができても学年相当の学習言語が不足し、学習活動への参加に支障が生じている児童生徒と定義されている。したがって、この定義に基づき見ていきたい。

日本語指導が必要な児童生徒(外国籍、日本国籍)は2023年時点で全国の公立学校に合計で69,123名在籍していると報告されている(資料4)。内訳は外国籍の児童生徒が57,718名、日本国籍の児童生徒は11,405名である。2010年は合計34,007名であったが、外国籍、日本国籍のいずれでも児童生徒数は倍増している。

図表
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次に、資料4について学校種別ごとに全在籍者数に占める日本語指導が必要な児童生徒数の推移を確認する。まず総在籍者数が最も多い公立小学校を見てみると、外国籍および日本国籍の児童生徒46,132名が日本語指導を必要としている。これは全在籍児童生徒数の0.78%に該当する。1%に満たないとはいえ、2010年時点では22,321名、在籍児童生徒数在学者に占める割合が0.32%であった点に鑑みれば、総数、割合とも倍以上になっていることが分かる。

小学校に次いで在籍児童生徒数の多い中学校、高等学校についても、2010年と2023年とを比較すると、中学校は9,269名(構成比0.28%)から15,967名(0.55%)、高等学校は2,224名(0.09%)から5,573名(0.29%)との調査結果が得られている。小学校と同様に総数、割合とも大きく伸びている。

一方で、資料4ではその他としてまとめている義務教育学校、中等教育学校、および特別支援学校については、いずれも2023年時点で順に611名、112名、728名となり、小・中・高等学校と比較すると日本語指導が必要な児童生徒数は少ない。しかし、このいずれの学校種でも日本語指導が必要な児童生徒数は2010年以降最も多くなっている(ただし、義務教育学校は調査開始が2016年以降)。なお、資料4には示していないが、義務教育学校では総在籍者数に占める日本語指導が必要な児童生徒数の割合が0.85%と、全学校種別の中で最も高い。

こうした日本語指導が必要な児童生徒の増加に関して文部科学省が指摘しているのが「集住・散在化」である(注2)。次章ではこの指摘について考察していく。

4. 日本語指導が必要な児童生徒の「集住・散在化」

2021年5月に公表された文部科学省「外国人児童生徒等教育の現状と課題」では、日本語指導が必要な児童生徒の学校への在籍状況を、「集住・散在化」と表現している。しかし、報告書には定義は明記されていない。そこで筆者としては、「集住」とは大都市圏を中心とした公立学校に外国人児童生徒数が多く通学しており、日本語指導が必要な児童生徒が多く在籍している状況、「散在化」とは日本語指導が必要な児童生徒の在籍が大都市圏以外の各地にも広がっている状況と定義したうえで、最新の調査結果である2023年度分も踏まえて集住と散在化について詳しく見ていく。

(1)日本語指導が必要な児童生徒の集住

資料5は、公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国籍および日本国籍の児童生徒数(2023年)、および2021年からの増加数上位10都府県を示したものである。まず左図の児童生徒数を見ると、最も多いのが愛知県(13,984名)、次いで神奈川県(8,589名)、東京都(6,312名)、大阪府(5,040名)、静岡県(4,804名)となっており、この上位5都府県で日本語指導が必要な児童生徒総数の56%を占める。これらの都府県のほか、埼玉県(4,362名)や千葉県(3,925名)と首都圏各県で児童生徒数が多い。なお、2021年の児童生徒数上位5都府県は、愛知県、神奈川県、東京都、静岡県、大阪府である。順位の入れ替わりはあるが構成は同じである。

この大都市圏に日本語指導が必要な児童生徒数が多い理由のひとつに、公立学校に在籍する外国籍の児童生徒数が多いことが考えられる。2023年時点で、公立学校に在籍する外国籍の児童生徒数上位5都道府県は東京都、愛知県、神奈川県、埼玉県、大阪府である。

次に、日本語指導が必要な児童生徒数(外国籍、日本国籍)上位5都府県について、2021年からの増加数を順に見ると、愛知県(増加数4位)、神奈川県(同3位)、東京都(同1位)、大阪府(同5位)、静岡県(同7位)といずれも増減数の上位を占める。なお増加数2位は千葉県である。

こうしたデータから、もともと日本語指導が必要な児童生徒数が多い都府県で、さらにその数が増加していることが見てとれる。

図表
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以上から、大都市圏を中心とした公立学校に外国人児童生徒数が多く通学しており、こうした都府県では、外国籍、日本国籍を問わず日本語指導が必要な児童生徒が多く在籍している集住の状況がより進み、前回調査(2021年)時点で在籍数の多かった都府県で、さらにその数が増加している、と言える。

(2)日本語指導が必要な児童生徒の散在化

資料6は2023年の日本語指導が必要な児童生徒数を2021年からの増加率で示したものである。全国平均が18.6%であったところ、それを大きく上回る増加率50%超の都道府県が、大分県を筆頭に8つある。これらの8道県について、日本語指導が必要な児童生徒数を見てみると、いずれも500名未満である。すなわち日本語指導が必要な児童生徒数が多い大都市圏とは異なる都道府県で、その児童生徒数増加率が大きくなっており、「散在化」が進んでいる。  

図表
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こうした日本語指導が必要な児童生徒数が比較的多くはない道県で増加率が大きいということは、実際の教育現場に大きな影響を与えるのではないだろうか。この点を考察するため、各論となるが日本語指導の必要な児童生徒数の在籍人数が最も多い公立小学校を例にとって詳細に見てみたい。

資料7は、2023年にいずれかの国籍で1名以上の在籍が新たに報告された市区町村の数、および資料6で確認した増加率50%以上の8道県の状況である。調査が実施された1,741の市区町村のうち、これに該当するのは302市区町村(17.3%)であった。次に増加率50%超の8道県について見てみると、全国平均を上回ったのは5道県であった。増加率の最も高かった大分県では、県下18市町村のうち、3割を超える6市町村で新たに発生している。また8道県のうち最も高かった宮城県では4割を超えている。  

図表
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ここまで確認してきた日本語指導が必要な児童生徒の散在化が進んだ要因のひとつとして考えられるのが、家族帯同が可能な在留資格(注3)を持つ外国人の増加であろう。資料6および資料7で着目した8道県について、2021年6月末と2023年6月末時点の在留資格別増減数を見てみると、「技術・人文知識・国際業務」(注4)および「留学」が増減数の上位を占めている。これらの在留資格を持つ外国人が必ずしも家族を帯同しているとは限らないため、要因として特定することはできない。したがって、あくまで可能性として指摘したい。

以上から、散在化が進んだ結果、2021年時点で日本語指導が必要な児童生徒の数が相対的に多くなかった大都市圏以外の都道府県において、増加率が大きくなっている。また公立小学校における状況のように、新たに在籍が報告される市区町村があるなど、日本語指導が必要な児童生徒の在籍が大都市圏以外の各地にも広がっている。

(3)散在化の深堀~学校単位で捉える

次に、散在化を各学校への在籍状況という視点でより詳しく見てみたい。資料8は公立学校のうち、総在籍者数が多い小学校、中学校および高等学校について、日本語指導が必要な児童生徒の在籍が報告された学校数の推移を、在籍児童生徒数で区分して示したものである。

まず、小学校、中学校および高等学校とも公立学校総数は減少する一方で、日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校は、その数、および学校総数に占める割合とも増加していることが分かる。ただし、外国籍の高等学校生で日本語指導が必要な生徒が在籍する学校数のみ微減している。注目すべきは、資料8に示したいずれの学校種別でも、日本語指導が必要な児童生徒が1名のみ在籍している学校が最も多く、またほぼすべての区分で1名のみ在籍校が2021年より増加している点である。ここに2名、3名と少数の児童生徒が在籍している状況まで広げて考えると、ある学校に1名だけ在籍している、あるいは各学年に1名だけ在籍している、といった散在の状況が浮かびあがってくる。他方で、日本語指導が必要な児童生徒(外国籍)が100名以上在籍する公立学校が小学校で7校(うち1校は200名以上)、中学校で2校、高等学校で1校報告されている。

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以上(1)から(3)を踏まえると、集住と散在化が同時並行で進む一方で、特定の市区町村では特定の学校への集中、という状況も発生していることがうかがえる。

5. 小括

本稿では、教室に増える日本語指導が必要な児童生徒の現状を、集住と散在化という視点から確認した。集住により、大都市圏を中心とした公立学校には外国籍の児童生徒が多く通学しており、こうした都府県では、外国籍、日本国籍を問わず日本語指導が必要な児童生徒が多く在籍している、しかも前回調査(2021年)時点で在籍数の多かった都道府県で、よりその数が増加している。また、散在化が進んだことにより、2021年時点で日本語指導が必要な児童生徒の数が相対的に多くなかった大都市圏以外の都道府県において、増加率が大きくなっている。加えて、公立小学校における状況のように、新たに在籍が報告される市区町村があるなど、日本語指導が必要な児童生徒の在籍が大都市圏以外の各地に広がっている。

次号では、学校において日本語指導が必要な児童生徒に対して授業中や放課後にどのような指導や補講を行っているのか、その状況を確認する。そして、そうした指導の状況から見えてくる課題を特定するとともに、解決の方向性を考察する。

(続く)

【注釈】

  1. 就学義務年齢とは、「保護者は、子女を満6才から満12才まで小学校に、その修了後満15才まで中学校に就学させる義務を負う」旨、学校基本法に定められている。

  2. 文部科学省中央教育審議会の「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」では、顕在化している課題として、主体的に学びに向かうことができていない子供の存在として外国人児童生徒を挙げて諮問している。

  3. 2025年4月時点で家族帯同が可能な在留資格は、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「特定技能2号」、「文化活動」、および「留学」。

  4. 在留資格のうち「技術・人文知識・国際業務」とは、機械工学等の技術者などや、通訳、デザイナー、語学講師として就労することが認められる資格。

 

【参考文献】

宍戸 美佳


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。