「敬老の日」の柔軟な捉え方

北村 安樹子

目次

1.祖父母には、親や祖父母を祝う立場の人もいる

9月の第3月曜日は「敬老の日」。「国民の祝日に関する法律」によれば、その趣旨は「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」日とされる(注1)。幼い子どもがいる親世代には、子の祖父母や曾祖父母へのメッセージやプレゼントを準備中の人もいるだろう。ただ、60~70代のシニア世代には、子や孫とのコミュニケーション機会を楽しみにしながらも、自身が「敬老の日」に祝われることを、どこか不思議な感覚で受け止める人もいるのではないか。シニア世代にも、自身が子の立場で長寿・健康を祈っている親がいる場合があるからだ。

生命保険文化センターが行ったアンケート調査によると、家族や付き合いのある親族として、60代前半の4割弱、60代後半の約半数、70代以上では6割前後が「孫」を挙げている(図表1)。一方で、60代前半の6割弱、後半の3割強、70代前半の2割弱が「親(配偶者の親を含む)」を挙げている。わずかではあるが、なかには「祖父母(配偶者の祖父母を含む)」を挙げる人もいる。

夫婦の年齢差や結婚の回数などによって、家族・親族のつながりには多様な形があると考えられるが、このような人のなかには、「敬老の日」にお祝いをする立場とされる立場を同時に経験するケースもあるだろう。

図表1 60歳以上男女における家族や付き合いのある親族(年代別)<複数回答>
図表1 60歳以上男女における家族や付き合いのある親族(年代別)<複数回答>

2.幼い孫やその親も、祖父母をまだ「高齢者」とは思っていないことも

自身の祝われる立場をしっくりこない思いで受け止めるシニア世代がいると考えられるもう1つの理由は、制度上では「高齢者」とされる人を含む65歳以上の人のなかに、自身を高齢者とは感じていない人が一定程度みられることだ。内閣府が行った別の調査によると、60代では自身を高齢者だとは思っていない人の方が圧倒的に多く、70代でも前半までは半数近くが思っていない(図表2)。「敬老の日」を「高齢者」の長寿を祝う日だと考えているシニア世代には、祖父母の立場になることや、体力や記憶力などの面で年齢を感じることはあっても、自身が長寿の域に達しているとは思わない人もいると考えられる。

一方、今のシニア世代の子どもたちも、若いうちは「敬老の日」を祖父母や曾祖父母にかかわる日としてイメージすることはあっても、親を対象として意識したことのない人は多いだろう。子世代に子どもが生まれ、シニア世代が祖父母の立場となり、孫の幼稚園・保育園や学校の行事案内などを通じて、「敬老の日」をコミュニケーション機会として意識するようになるケースも多いのではないか。

図表2 60歳以上の男女のうち、自分を高齢者だと思う人の割合(年代別)
図表2 60歳以上の男女のうち、自分を高齢者だと思う人の割合(年代別)

3.「敬老の日」の柔軟な捉え方~つながりを楽しみ、確かめる日に~

シニア世代のライフスタイルや、「長寿」や「高齢者」にかかわる意識が多様化するなかで、「敬老の日」は、実年齢に基づいて、社会や若年者が年長者の長寿を祝う機会にとどまらなくなっている。そのなかには、幼い孫がいる家族・親族が、祝日をきっかけに食事や余暇の時間をともにしたり、贈り物を贈ることを通じて、互いのゆるやかなつながりを確かめる機会も含まれよう。

ただ、シニア世代には、自身が子の立場で親を祝う人もいることなどから、自身の祝われる立場をやや複雑な思いで受け止める人もいると思われる。このような場合、祝う側は、従来から重視されてきた年齢を重ねたことへの祝福というより、変わらない日常への感謝の気持ちや、コミュニケーションの機会がもてることの喜びを率直に伝えてはどうだろうか。シニア世代が、加齢に伴う自身や配偶者の変化をそれほど強く意識することなく過ごし、子・孫世代が親や祖父母の老いを意識することなく過ごせる時間は案外限られている。コミュニケーションを楽しんでいるときは、シニア世代自身も、その貴重さに気づかない場合も多いからだ。

他方、健康上の理由などから、親や祖父母が家族・友人とのコミュニケーションや、外出の機会が少なくなりがちな場合、それらが大きな楽しみになることもある。子世代は、親や祖父母に疲れが出ない環境や方法でコミュニケーションや外出の機会をつくったり、リラクゼーションや快眠など、健康的な生活につながる贈り物を考えてみることも喜ばれるだろう。加齢にともなう変化や、自立して暮らしたいと思う親や祖父母の気持ちを尊重する接し方も、お祝いの気持ちを前向きに受け止めてもらうための大切な視点になる。祝われる立場の親や祖父母にも、「敬老の日」の趣旨を柔軟に捉え、受け止める姿勢が求められるのではないか。


【注釈】

  1. 内閣府「国民の祝日」について
    https://www8.cao.go.jp/chosei/shukujitsu/gaiyou.html

【参考文献】

  1. 宮木由貴子「交流機会としての年中行事・イベント実施-子どもの有無や年代で異なる20~40代の実施状況-」2018年1月
    https://www.dlri.co.jp/pdf/ld/2017/wt1711.pdf

北村 安樹子


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