歩きスマホ 便利さの代償

~他者を巻き込む危険も~

水野 映子

目次

1.歩きスマホによる事故の事例

歩きながらスマホ(スマートフォン)を操作したりその画面を見たりすること、いわゆる「歩きスマホ」の危険性が指摘されるようになって久しい。実際、歩きスマホによる事故も多く報告されている。

東京消防庁によると、2017年から2021年の5年間に、歩きスマホ等にかかわる事故により、管内で165人が救急搬送された。年代別にみると、20代(20.0%)・30代(17.0%)の順に多く(図表1①)、若い人が特に事故に遭っていることがわかる。事故の発生場所は「道路」(41.8%)、「駅のホーム」(15.8%)などの「道路・交通施設」が7割以上を占めており(図表1②)、事故の種別は「ころぶ」「ぶつかる」「落ちる」がそれぞれ約3分の1ずつ(35.2%・33.3%・30.3%)となっている(図表省略)。

また、国土交通省の報告によると、「携帯電話使用」を要因とする駅ホームからの転落事故は、2021年度では全国で25件発生している(注1)。歩きスマホによる事故は道路や駅をはじめ、さまざまなところで発生していることがうかがえる。

図表1
図表1

2.大半が危険を感じているが…

では、スマホを使う生活者は、歩きスマホに対してどう感じているのだろうか。

電気通信事業者協会とその会員事業者は、全国の鉄道事業者と協力して「やめましょう、歩きスマホ。」という啓発キャンペーンを継続的に実施するとともに、首都圏と関西圏の人に対して、歩きスマホの実態や意識に関する調査を毎年おこなっている。2022年末の調査では、歩きスマホをすることがあると答えた人が約半数にのぼった(図表2)。その割合は5年前も概ね同じであり、減る傾向はみられない(注2)。一方、歩きスマホが危ないと思うことがある人は95%以上と大多数であり、実際に危ないと感じたことがある人も9割近い。

図表2
図表2

また、歩きスマホが危ないと感じたことがある人に対し、危ないと感じた具体的なシーンをたずねた結果では、「人にぶつかる/ぶつかりそうになる」が最も多く、次に「目の前の人が急に立ち止まる」「自転車にぶつかる/ぶつかりそうになる」があがった(図表3)。前述のような事故のケース、事故には至らないものの人や物にぶつかったり足を踏み外したりするケース、さらにはその少し手前、いわゆる“ヒヤリハット”のケースを合わせると、歩きスマホによる危険を目の当たりにしている人はかなり多いといえる。

図表3
図表3

3.利便性と引き換えにもたらされる他者の危険

以上で述べたように、多くの人が歩きスマホに伴う危険を認識しているにもかかわらず、それをおこなってしまうのはなぜだろうか。

前述の調査で、歩きスマホをしてしまう理由として最も多かったのは、「移動しながら時刻表や地図アプリを使用するのが便利だから」であった(図表4)。次に、「SNSやLINE、メールなどでのやりとりをタイムリーにしたいから」「スマートフォンをみることが癖になっているから」「SNSやLINEのやりとり/メールを見たり、文字を打つのについ夢中になってしまうから」があがっている。利便性や効率性を求めて歩きスマホをする人のほか、歩きスマホがもはや無意識の習慣になっている人もいることがうかがえる。

図表4
図表4

確かに、スマホの時刻表や地図などを見ながら移動するのは便利だし、移動中にSNSやメールを見れば時間の節約にもなる。だが、歩きスマホがもたらす利便性や効率性の代償として、ケガなどを負う危険性もあることは見逃せない。

また、自分だけでなく周囲の人に危険が及ぶ場合もある。特に、目や足の不自由な人、車いすやベビーカーを使用している人、子どもなどは、歩きスマホをしている人が前から近づいてきてもすぐによけることが難しいし、そもそも前から人が近づいていることにも気づきにくい。目の不自由な人などは、歩きスマホの人にぶつかられたことによって本来の歩行ルートを外れてしまった結果、後で事故に遭うこともある。

道路や交通機関などの公共の場でスマホを使おうとする人は、たとえ自分は危険を避けられる自信があったとしても、知らず知らずのうちに周囲の人を巻き込む危険があることを十分認識し、歩きスマホを控えるべきだろう。自分の利便性や効率性と引き換えに、他者を危険にさらすかもしれないことを忘れてはならない。

【注釈】

1)国土交通省「鉄軌道輸送の安全に関わる情報(令和3年度)」2022年10月(https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001459192.pdf)

2)2017年の調査では首都圏49.1%、関西圏49.3%であり、その後の各年の調査でも45~52%台の間で推移している。

水野 映子


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