暮らしの視点(22):シニア世代が必要とする日常生活情報

~経済状況・健康状態で異なる情報ニーズ~

北村 安樹子

目次

1.三大ニーズは「健康づくり」「年金」「医療」

内閣府の調査によると、シニア世代が、日常生活に必要でもっと欲しい情報として最も多くあげたのは「健康づくり」(29.7%)で、「特にない」(28.1%)を除くと、「年金」(27.1%)や「医療」(22.9%)がこれに続いている(図表1)。「健康づくり」「年金」「医療」は多くのシニア世代がもっと情報を得たいと考えている三大テーマといえる。効果的な健康づくりの方法や年金・医療制度に関するわかりやすい情報とともに、個々人の状況に応じた具体的な情報が必要とされるテーマであることを反映しているのかもしれない。

このほか「趣味、スポーツ活動、旅行、レジャー」も約2割を占めた。生活における必要度という点では先の3項目に比べ低いものの、余暇を楽しむという点で関心を持つ人が比較的多いということだろう。

2.経済状況・健康状態で異なる情報ニーズ

このような日常生活で必要とする情報の内容には、経済的な暮らし向きや健康状態に対する主観的な評価により様々な違いがみられる(図表2)。家計への評価との関連をみると、「ゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と答えた人では「特にない」が最も多いのに対し、回答者の6割弱を占める「あまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と答えた人では「健康づくり」をあげた人が最も多い。また、「ゆとりがなく、多少心配である」「家計が苦しく、非常に心配である」と答えた人では、「年金」が約4割を超え、次いで「医療」「健康づくり」があげられている。

一方、健康状態との関連についても、「良い」「まあ良い」と答えた人では、「特にない」が最も多いのに対し、回答者の約4割を占める「普通」と答えた人では「健康づくり」が、「あまり良くない」「良くない」と答えた人では「年金」がそれぞれ最も多くあげられている。

これらの結果から、家計に不安を感じている人や健康状態が良くないと感じている人では、「年金」や「医療」に関する情報を求める人が多いことがわかる。また、「健康づくり」に関する情報も比較的多くの人に求められている。経済状況や健康上の問題に直面することは誰にでもあるが、金銭管理や健康的な生活習慣は日々の積み重ねも重要になることから、早い時期から準備を行っていくことが大切だといえるだろう。

3.高齢者の多様性と求められる情報リテラシー

なお、今回の調査結果では、回答者の8割近くが日常生活を行う上で必要な情報に「満足している」と答えている(図表省略、注1)。このなかには、60代を迎えるまでに、企業や自治体、各種メディアなどが発信する様々な情報をもとに60代以降の働き方や生活資金計画をはじめとするライフデザインについて考える機会をもってきた人、公的年金や医療制度を補う自助的な備えを行ってきた人が含まれるだろう。

一方、近年ではシニア世代にも情報機器やインターネットの多様な利用方法が急速に拡がっている。それらを通じて自ら必要な情報を探すだけでなく、他者とコミュニケーションを交わしたり、自身が情報を発信したりすることも可能になっている。しかしながら、利用状況や利用にかかわるスキルには依然個人差も大きい。新たな手段を利用しなくても必要な情報を得られると感じている人や、現状に満足している人もいるなか、それらを使わないことや使えないことが、必要な情報を得にくいと感じることに関連している場合もあるのかもしれない。また、高齢になってから新たな機器や技術を使いこなすのは難しい場合も多く、わかりやすさや親しみやすさなどの面で従来型の情報入手・提供手段やコミュニケーション機会を重視する人も多いだろう。各種情報の入手・提供方法や他者とのコミュニケーション手段が多様化するなか、今後は多様な手段を通じて必要な情報を集めるスキルとともに、その中から信頼性を総合的に判断して自身のライフスタイルに選択的に取り入れる視点をもつことが重要になるのではないだろうか。

【注釈】

  1. 「あなたは、日常生活を行う上で必要な情報に満足していますか」という設問に対し、「満足している」「まあ満足している」と答えた人の合計割合は78.5%を占める。

【関連レポート】
北村安樹子「暮らしの視点(21):シニア世代の健康をめぐる心がけ~コロナ禍で生活が変化した人で「心がけ」は高割合~」2022年6月。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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