家庭と仕事との両立のしやすさを決めるものは?

~男性の育児休業などの「働きやすさ」の他「働きがい」「夫婦関係」も重要~

的場 康子

目次

1.男性の育児休業取得率は12.65%に

厚生労働省から7月、2020年の男性の育児休業取得率が発表された。男性の育児休業取得率は、ここ数年上昇が続いており、2020年はようやく2ケタ台になって12.65%である(図表1)。

女性の活躍推進のためには男性の協力が不可欠であるし、価値観の多様化の中で、家庭を大切にしながら働きたいと思う男性も増えている。男女ともに持てる力を発揮できる社会づくりに向けて、女性のみならず、男性にとっても家庭と仕事との両立がしやすい環境づくりが求められている。

図表
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2.育児・介護休業法の改正

こうしたことを背景に6月、育児・介護休業法の改正がおこなわれた。2022年4月1日から段階的に施行される。

今回の改正のポイントは、女性のみでなく男性の育児休業の取得を促す点にある。女性は出産後、最大8週間の産後休暇を取得できるが、この期間、父親である男性も育児のために休業ができる制度、「出生時育児休業」が創設された。いわゆる「男性版産休」の制度であり、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる。

業務内容によっては長期間の休業が取得しにくい場合もある。これが男性の育児休業取得の壁となっていたが、期間中2回まで「分割取得」ができるようにしたり、労使協定を締結し労働者が合意した場合には「休業中に就業すること」も可能にしたりして、これまで以上に育児休業を取得しやすいよう法改正がおこなわれた。

3.男性にとっても家庭と仕事との両立がしやすくなる?

こうした法改正の動きなどもあり、働く環境が変化する中で、家庭と仕事との両立のしやすさに対して肯定的に認識している人が多くなっている。当研究所が2021年1月に実施したアンケート調査によると、今後「女性にとって家事や子育てと仕事との両立がしやすくなる」と思っている人は67.1%、「男性にとって家事や子育てと仕事との両立がしやすくなる」と思っている人は61.1%である。「女性にとって」両立しやすくなると思っている人のほうが多いが、「男性にとって」も6割以上の人が両立しやすくなると思っている。年代別にみると、「女性にとって」も「男性にとって」も、若い人のほうが両立しやすくなると思っている人が多い(図表2)。

これから家族形成をする年代の人々が、女性のみならず男性にとっても両立しやすくなると展望しており、わが国が男女ともに自分らしく働ける社会へと徐々に変わっていく可能性が期待できる。

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4.両立のしやすさは「働きがい」にもつながる

このように、若者を中心に男女ともに家事や子育てと仕事との両立がしやすい社会に向かっていると感じているようであるが、実際にどのような働き方が両立のしやすさにつながると思っているのだろうか。

今後の働き方に関する意識との関連をみると、「自分がやりたい仕事を選べるようになる」と思っている(あてはまる)人は、男女ともに80%以上の人が両立しやすくなると思っており、そのように思っていない(あてはまらない)人と大きな差がみられる(図表3)。「自分らしく働くことができるようになる」も同様であり、そのように思っている人の多くが両立しやすくなると思っている。自分がやりたい仕事に就いたり、自分らしく働けることが、両立のしやすさにつながっていることを多くの人が感じている。

実際、「自分が望む時間に働くことができるようになる」や「自分が望む場所で働くことができるようになる」というように、自分が望む時間や場所で働けることも両立のしやすさにつながると思っている人も多い。しかしそれ以上に、前述の「自分がやりたい仕事に就くこと」や「自分らしく働けること」にあてはまると回答した人の方が、両立しやすくなると回答している。両立のしやすさというのは、働く時間や場所の制約に縛られないという「働きやすさ」のみならず、自分がやりたい仕事を自分らしく働くという「働きがい」にも関連するものであることがわかる。

また最近、職務内容を明確にしたジョブ型雇用が注目されているが、こうしたジョブ型雇用が進むと思っている人の多くが、両立がしやすくなると回答している。

育児・介護休業法の改正によって男女ともに育児休業を取得しやすくするなど働きやすいよう環境整備を促している。しかしそればかりでなく、社員が自分らしく働くことで生活の豊かさと自己成長を促し会社にも貢献できるよう「働きがい」の視点も含めた環境整備も重要であることがうかがえる。

図表
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5.夫婦関係の満足度も両立のしやすさに影響する?

「両立のしやすさ」は働き方のみに関係するのではない。夫婦関係の意識別に「両立しやすくなる」と思っている人の割合をみると、「夫婦関係に満足している」人の方が、そうでない人よりも「両立がしやすくなる」と思っている人が多い(図表4)。「夫婦ともにお互いに成長していきたい」「配偶者を信頼している」も同様に、そのように思っている人の方が「両立がしやすくなる」と思っている。

男女ともに家事や子育てと仕事との両立がしやすくなるとの意識は、働き方ばかりでなく、夫婦関係に対する満足度にも関連していることがわかる。家庭内で協力しあうことが仕事との両立生活においても重要である。そのことを実感し、お互いに理解し、信頼し合える夫婦は両立に対する意識も前向きになれるのであろう。

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6.男女ともに「両立しやすさ」が実感できる社会に向けて

今回の育児・介護休業法の改正では、いわゆる「男性産休」の創設など、これまで以上に男性の育児休業の取得率向上に向けて踏み込んだ内容を盛り込んだ。男性の育児休業取得率は、現在12%程度であるが、今後は上昇することが期待できる。

しかし今、男性の育児休業取得率向上に注目が集まっているが、男女ともに両立がしやすい社会に向けての対策はそればかりではない。男女ともに持てる力を発揮できる社会の実現のためには、「働きやすさ」と「働きがい」を含めて、働く一人ひとりが望むように働けることが重要である。そのためには、いかに自分を活かすかという視点で自分らしく働くということを働き手が見つめ直すとともに、企業側も「ジョブ型雇用」を含め、改めて人材の活用策を見直すことが必要であろう。その上での育児休業取得率の向上である。

また、夫婦関係の満足度も「両立のしやすさ」につながることを踏まえると、両立のための支援の取組として、働き方の視点のみでなく、家庭生活に目を向けることも求められるのではないか。例えば、男性の育児休業は、夫婦の信頼関係をさらに高めることが期待できる。これまであまり家事などに協力的でなく、夫婦関係の満足度が低い場合であっても、育児休業をきっかけとして良い方向に向かうこともある。そのための支援として、男性に育児休業中の家事や育児の仕方を伝え、夫婦の絆を強めるための研修などを企業や自治体などが行うことも考えられる。

コロナを機に在宅勤務など働き方の多様化が進む中で、「両立がしやすくなる」という展望を多くの人が感じるようになった。こうした機運を追い風にして、一人ひとりが持てる力を発揮して、真に両立して働きやすくなる社会に向けて、豊かな家庭生活を送り、働きがいをもって働くことができるような環境整備が求められる。

的場 康子

的場 康子

まとば やすこ

ライフデザイン研究部 主席研究員
専⾨分野: 子育て支援策、労働政策

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