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- 時評『人口減少時代の故郷とのつながり』
2025年の国勢調査速報(総務省)によれば、日本の総人口は1億2,305万人で、ピークだった10年調査から500万人程減少した。とりわけ地方では、交通、商業、教育、地域行事など、暮らしを支えてきた仕組みの維持が難しくなっている。私の故郷も例外ではなく、帰省するたびに地域の変化を感じる。
一方、国土交通省が2025年に公表した調査では、移住や観光、単なる帰省とは異なり、特定の地域と継続的かつ多様な形で関わる「関係人口」は、全国の18歳以上の約22%、約2,263万人と推計されている。人口そのものが減る中で、地域を支える力を、そこに住む人の数だけで捉えないという考え方は、重要性を増しているように思う。
私自身も、故郷のいわゆる「ふるさと大使」として、故郷を離れて暮らす人と地域との関わりを意識するようになり、周囲に故郷の魅力を伝えることも続けている。
この夏、私は約2か月の間に5回帰省した。施設に入っていた母の容体悪化を受けて帰ったこともあれば、母を見送り、その後の法要のために帰ったこともあった。短期間にこれほど往復したのは、故郷を離れてから初めてであった。
故郷は遠方にあり、帰省には飛行機を利用するため、時間も費用もかかる。国土交通省の同調査でも、地域との関わりを深める上での課題として、時間的な余裕、移動・滞在に伴う金銭的負担、交通の利便性などが挙げられている。遠方の地域との関係を保つには、気持ちだけでなく、時間や費用といった現実的な制約もある。
こうした物理的な距離による制約がある一方で、インターネットやSNSの普及によって、情報面での距離は大きく縮まっている。離れていても故郷の情報に触れ、その魅力を発信することは以前より容易になった。しかし、地域の日常の変化や、人と人との間に積み重ねられてきた関係は、画面越しには見えにくい。実際に現地へ足を運んで初めて気づくこともある。
母は晩年、入院や施設で過ごす期間が長く、地域の方々と直接会う機会は減っていたが、それでも通夜や葬儀には、多くの方が訪れてくださった。一方、弔問客の中には、顔に見覚えはあっても、名前や関係を思い出せない方も多く、長く故郷を離れて暮らすうちに、地域との接点が薄くなっていたことを実感した。
また、地域ならではのしきたりや、近隣の人々が自然に支え合う姿にも触れた。人口が減っても、長い年月をかけて築かれた人間関係は、今なお地域の暮らしを支えている。観光や情報発信といった外からの視点だけでは見えにくい、地域社会の基盤ともいえるものだろう。
通夜では、地域のお寺の住職が「『当たり前』の反対は『有難い』です」と話された。身近にあるものを当然と思わず、その価値に気づき、日常に感謝することの大切さを伝えるその言葉は、地域とのつながりを考える上でも印象に残った。
私は仕事を通じて、数字で表される金融資産について考える機会が多い。もちろん、金融資産は生活や将来を支える重要な基盤である。しかし今回の帰省では、数字では表すことのできない価値についても改めて考えさせられた。長い年月の中で築かれた信頼や人との関係は、評価額を付けることはできないが、人生の節目には確かな支えとなる。
人口減少が避けられない中、地域の力を住民の数だけで捉えるのではなく、離れて暮らす人も含め、どれだけ多様なつながりを保てるかという視点が、これまで以上に重要になっていくだろう。地域に住む人、故郷を離れた人、仕事や交流を通じて関わる人。それぞれの関係が重なり合うことで、地域の厚みを形づくっていく。
今年の夏、何度も故郷を往復する中で、こうした「有難い」価値が、今も地域には残されていることを感じた。その価値を「当たり前」と思わず、どうつないでいくか。関係人口という考え方が注目される今、私自身も、故郷との距離を意識しながら、これからの関わり方を考えていきたい。
清水 智哉
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。