Well-being QOLの視点『自分で決めること、主体性を重視しよう』

古村 譲

目次

キャリアデザイン研修からの一考察

私が所属するキャリア開発支援室では、毎年社内向けにキャリアデザイン研修を年代別に実施している。この研修のテーマの副題に「自分の人生は自分で選ぶ」というフレーズを使っている。なぜこのフレーズとしているのか、その意図はどこにあるのかをWell-beingの観点から個人的な見解を示したい。

研修ではテーマに沿って「キャリア自律」を強調している。「キャリア自律」とは、自ら主体的に、自身の価値観や強みを理解し、仕事や周囲との係わりの意味を見出し、キャリア開発の目標と計画を具体的に描くこととしている。この定義で最も重要な観点は、「自ら主体的に」という点である。変化の激しいこの時代、自分のキャリアを築くためには組織や他人任せにせず、「自分で決める」ことを説いている。

自己決定の度合いが成果を左右する

コーチングで用いられる理論に、1985年にアメリカの心理学者であるエドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した自己決定理論がある。この理論は自己決定の度合いが動機づけや成果に影響するという理論で、「自分で決める」ことを重視している。この理論で根幹としているのは3つの基本欲求、「有能さ」「関係性」「自律性」としている。「有能さ」は自分の能力とその証明に対する欲求。「関係性」は周囲との関係に対する欲求。「自律性」は自己の行動を自分自身で決めることに対する欲求。特に3番目の「自律性」欲求が重要だとしている。

これら3つの欲求、特に「自律性」が満たされると、人は動機づけられ、心理的適応が促進されるとしている。その結果、良い成果につながり幸福感が得られる。この幸福感がWell-beingの源泉となる。

この理論から「自分で決める」ことの重要性をWell-beingの視点から再認識させてくれる。

Well-beingと主体性

このWell-beingであるが、ポジティブ心理学で使われる概念でもある。このポジティブ心理学は、1998年にアメリカの心理学者マーティン・E・P・セリグマン博士によって提唱された。これによれば、Well-beingを測る指標として、①「ポジティブな感情(positive emotion)」②「没入・没頭(engagement)」③「ポジティブな人間関係(relationship)」④「意味(meaning)」(人生や仕事に意味を感じること、何か自分よりも大きなことのために貢献しているという感覚)⑤「達成感(achievement)」という5つを提案している。なお、5つの頭文字をとって「PERMA」と称している。

ポジティブ心理学では、この「PERMA」指標を向上させるために、「レジリエンス」という心の力、心のテクニックに注目している。「レジリエンス」とは、困難や逆境に対処する力であり、人生の前向きな側面を増強する力である。状況が良くても悪くても、自分の主体性でしなやかな対応を可能とする力である。

自分が主体的に考えて行動することが、Well-beingを高めるということだ。

「自分の人生は自分で選ぶ」

ここまで、「自分で決める」ことがWell-beingの源泉であること、Well-beingを高めるためには、「自分の主体性」という心持ち次第であることを、心理学の理論から見てきた。

このような背景があって、私たちのキャリアデザイン研修では「自分の人生は自分で選ぶ」と題していると解釈している。流されずに自分で自分の道を切り開きたいものだ。

古村 譲


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