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- QOL向上の視点『高齢期の働き方とWell-Being』
この1月に筆者は65歳の前期高齢者の仲間入りをしたのだが、どうも実感が湧かない。筆者が小学校に入学した頃に60代半ばだった祖父母は子供の筆者からは高齢に見えたものだが、孫たちから見て筆者もそう見えているのだろうか。
1998年より文部科学省が行っている「新体力テスト」において、65歳以上の合計得点には2019年にかけて男女ともに明らかな向上が見られる。(2020年以降は若干の低下がみられるが新型コロナによる運動機会の減少の影響か)ことに「6分間歩行」の歩行距離は男女ともにこの24年間に約10%向上している。また年齢群団別にみても2021年の75歳~79歳の歩行距離は1998年の65歳~69歳のそれと変わらない結果となっており、10歳ほどの「若返り」がみられる。(かといって我が身を振り返ってみて、以前のような俊敏な動きができるかと言われれば自信はないが)
また、介護の必要がなく健康的に生活できる「健康寿命」の平均も、2001年から2019年までの18年間で男性で3.28年、女性が2.73年延びた(2019年男性72.68歳・女性75.38歳)。
働き手という点から見てみると令和4年版「高齢者白書」によれば我が国の労働者人口6907万人(2021年)の内、65歳以上の人数は926万人(13.4%)であり、10年前と比較して342万人増えており65歳以上の働き手は増加し続けている。これらから、多くの人が指摘する通り、現代の我が国の60代後半はかつてのような「お年寄り」のイメージとは違うように感じる。
現在、多くの先進国における高齢者の定義は65歳以上となっており、我が国においても65歳~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼んでいるが、身体機能が若返っているのであればこれを見直すべきだという声もある。 (日本老年学会・日本老年医学会2017年)
確かにそうなのだが、ただこの「高齢者」の定義は社会保障制度とも密接に絡んでおり、拙速に定義年齢を引き上げる、あるいは呼称を変えることには慎重であることが必要である。
現在収入のある仕事をしている60歳以上の人に仕事をしている理由を聞いたところ、公的年金支給開始後の65歳以上でも「収入が欲しいから」が4割を超える結果となっており(2020年内閣府「高齢社会白書」)、公的年金だけではなかなか生活費が賄えない中、高齢期も働くことへの経済的理由によるモチベーションは今後も上がっていくことが予想される。では、高齢期にはどのような働き方が望まれるのだろうか。
人には新しい情報を獲得しそれを処理操作していく「流動性知能」と長年にわたる経験や教育・学習により蓄積された「結晶性知能」があり、前者の代表的なものとして「処理スピード」「直観力」があり、後者に「言語能力」「洞察力」があると言われる。このうち前者は20代前半にピークを迎え、以後は低下の一途をたどるのに対し、後者は20代以降も上昇し、高齢になっても安定している。(Horm.J.L.,&Cattell Acta Psychologica 1967)
ピアノやクラシックギター等の著名な演奏家は指の動きが不自由になり若い頃のようには演奏できなくなった状況でも、演奏する曲のレパートリーを減らし、若い時のように早く引くことを目標とせず、曲全体のスピードを押さえて全体として美しい抑揚を出すことにより円熟した演奏を行うことが出来るという。
このように、高齢期の働き方としては、若い時のように量やスピードを追い求めず、得意な分野の仕事を自分のペースに合わせて継続して行っていくことが「生きがい」や「Well-Being」に繋がっていくのではないかと考える。
白水 朝日
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。