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QOL向上の視点『「前に進む力」で幸せに生きる』

古村 譲

目次

人生100年時代といわれ、還暦を過ぎた自分の身においてもこの先の長さを実感するようになった。還暦前までは、漠然と定年退職後に老後の生活が始まると思っていたが、ここへ来てまだまだ老後ではないと思える現実に直面している。キャリア支援の仕事に就いたこともあり、この長い先をどう生きていこうかと考える機会が増えたが、その際に一番大切にしたい価値観は幸せに生きるということである。では、どうしたら幸せに生きられるのであろうか。

60歳の転機

若い時は、決められたレールがあり、その上を走るだけであった気がするが、年齢とともにそれがなくなりつつある。特に60歳を超え、自分自身や環境の変化の大きさに驚く。これまでと同じやり方が通用せず、新しいことに取組むことが徐々にできなくなっている自分がいるようで不安を感じることも多々ある。また、人にはそれぞれ役割があり、それを果たしていくことが求められる。役割は様々で、仕事もあれば、家庭、余暇、学習など多岐に渡り、これらが時間とともに変化しているが、変化に対応できないという不安も感じるようになった。

そしてこれらの不安は、長い人生において繰り返される転機の中の混沌から発生するものであるといえる。この転機を乗りきることが、新たな前進であり、次のステージへ進むことを意味するが、それを乗りきることは容易ではない。混沌状態を突破するには、自分自身が持つリソースのうち「前に進む力」を使うことが必要となる。この「前に進む力」があることが、幸せに生きることに他ならないと思う。ではこの「前に進む力」とは何であろうか。

ナラティブに「前に進む力」を考える

自分のキャリアを考える上で、ナラティブアプローチという方法がある。このナラティブの観点から「前に進む力」を考えてみたい。ナラティブとは、語り、物語であることから、キャリアのナラティブとは、自分の人生の物語である。このナラティブアプローチで重要なことは、様々なライフイベントに対してその時々の自分の感情を見ていくことである。「あの時は楽しかったな」とか「あれは嫌な思い出だ」など喜怒哀楽を入れながら、これまでの自分の人生の物語を作るのである。その過程で、自分が何をしている時に楽しいのか、どんな時にワクワクするのかを整理してみると、自分の価値観や志向の気付きへとつながっていくのである。この気付きのうち前向きなものが「前に進む力」の大きなヒントとなる。

ナラティブのもう一つの視点は、過去から未来への流れであり、過去から築いてきた自分の価値観や志向が未来にも進むことである。自分はこういう事が好きだからこうありたい、これを目標にしようといった未来を描くことにより「ありたい自分の姿」が見えてくるであろう。自分の価値観や志向に合致したものであれば、自ずとモチベーションも醸成され、未来へ自信を持って進むことができるのである。これがまさに「前に進む力」ではないであろうか。

このようにナラティブから見ると、「前に進む力」とは、自分の価値観の下で「ありたい自分」に向かう力と考えられる。つまり、自分自身を知り、自分の道を決めて自らが進んでいくことこそが幸せな生き方であろう。

転機を乗りきる

ここまで、現在の60歳の転機とそれを乗りきる「前に進む力」について考えてきたが、過去にも多くの転機があったと思う。その都度「前に進む力」で乗りきって来たからこそ今があるのである。この「前に進む力」は過去から未来へとつながる自分が持つエンジンのようなものである。人生100年時代、今後も幾多の転機が待ち受けているが、この「前に進む力」こそが転機を乗りきる原動力であろう。

古村 譲


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