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2026.11.02
日本経済
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物価指標(日本)
電気・ガス代補助の再開を巡る論点
~CPIへの影響と、恒例化する補助金の出口戦略~
新家 義貴
- 要旨
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- 政府は2026年12月~27年2月に電気・ガス料金補助を再開する。標準的な世帯の負担軽減額は3か月で7000円程度、支出規模は5000億円程度となる見込み。昨冬並みの支援を1か月前倒しで実施する。
- 今回の支援により、補助がない場合と比べて、CPIコアは27年1月に▲0.14%Pt、2、3月に▲0.63%Pt程度押し下げられると試算される。
- 前年比への影響は、2、3月にはほぼ相殺される一方、27年1月には▲0.14%Ptの押し下げ、3月使用分の支援が実施されなければ4月には+0.21%Ptの押し上げ要因となる。補助の実施時期のずれによる影響に注意が必要である。
- 補助は緊急時の家計支援として有効だが、夏冬の恒例措置となりつつある点は問題。今後は家計負担への配慮と財政負担の抑制を両立させつつ、補助の恒常化を避けるための出口戦略が求められる。
1. 今冬も電気・ガス料金支援を実施。規模は昨冬並み
政府は10月29日、今冬も電気・ガス料金への補助を実施することを発表した。実施期間は2026年12月~2027年2月使用分の3か月間である。昨冬は1~3月使用分が対象だったが、今回は開始時期を1か月前倒しする。標準的な世帯の負担軽減額は3か月合計で7000円程度、支出規模は5000億円程度になると報じられている。
具体的な補助額は、家庭向けの低圧電気料金について、1キロワットアワーあたり12月が1.0円、1、2月が4.5円となる。また、都市ガス料金については1立方メートルあたり12月が4.0円、1、2月が18.0円となる。昨冬は1、2月使用分について低圧電気4.5円、都市ガス18.0円、3月使用分について低圧電気1.5円、都市ガス6.0円の補助が実施されていた。今回は12月の補助額を小さくする一方、暖房需要が大きい1、2月には昨冬と同額の支援を行う形となっている。なお、3月使用分については、気候やエネルギー価格の動向を踏まえて改めて検討するとされている。
電気・ガス料金補助は2023年1月使用分から始まり、その後、延長・縮小・休止・再開を繰り返してきた。2026年も1~3月、7~9月に続き、12月から再び支援が実施されることになる。近年は夏と冬に期間を限定して実施されることが多く、今回もその流れを踏襲したものといえる。中東情勢悪化に伴う燃料価格上昇の影響が電気・ガス料金に波及するなか、暖房需要が増える冬場の家計負担を軽減することが狙いである。

2. CPIコア水準を27年2、3月に▲0.6%程度押し下げ。前年比では昨年との支援時期のずれに注意
次に、消費者物価指数への影響を見る。電気代、ガス代のCPIへの反映は「使用月」ではなく「請求月」に基づくため、26年12月~27年2月使用分の補助は、CPI上では27年1~3月に影響する点に注意が必要である。
今回の支援内容を踏まえると、補助が実施されないケースと比較して、CPIコアは27年1月に▲0.14%Pt、2月に▲0.63%Pt、3月に▲0.63%Pt程度押し下げられると試算される。12月使用分の補助額は小さいため、1月のCPIの押し下げ効果は限定的だが、補助額が拡大する2、3月分には押し下げ幅が大きくなる。家計負担の軽減効果は相応に大きい。
また、CPIへの影響を見る上では、前年の裏の影響を勘案することも重要だ。前年にも電気・ガス料金補助が実施されていたが、昨冬と今冬では実施時期が1か月ずれており、これが前年比上昇率に影響する。
2026年2、3月のCPIには、低圧電気4.5円、都市ガス18.0円という、今回と同額の補助が反映されていた。このため、2027年2、3月については、補助による押し下げ効果が前年とほぼ同じとなり、前年比上昇率への影響はほぼ相殺される。一方、2026年1月のCPIには補助が反映されていなかったため、2027年1月には前年比で▲0.14%Pt程度の押し下げ効果が生じる。逆に、4月については、前年の2026年4月のCPIには3月使用分の補助が反映されていたのに対し、2027年4月には支援が延長されなければ補助がなくなる。このため、2027年4月のCPIコアの前年比は+0.21%Pt程度押し上げられると試算される。このように、今回の補助はCPIの水準を大きく押し下げる一方、前年比上昇率への影響は月によって異なる。2、3月には前年と同額の補助が実施されることで影響がほぼ相殺されるが、1月には押し下げ、4月には押し上げの影響が生じる。補助金による一時的な変動と基調的な物価動向を区別して見る必要があるだろう。
3. 補助金が夏冬の恒例行事に。見えない出口
資源価格高騰に伴う電気・ガス料金の急激な上昇をならすために、時限的な補助を行うことは理解できる。特に現在は、イラン情勢の悪化に伴う燃料価格の上昇が電気・ガス料金に波及しており、家計負担の急増を防ぐための緊急対応として、今回の支援にはやむを得ない面もあるだろう。また、一律の料金補助には、幅広い世帯に迅速に支援を届けられるという利点もある。
もっとも、緊急時に有効な手段であることと、それを平時にも続けるべきかどうかは別の問題である。電気・ガス料金補助は2023年の開始以降、縮小や休止をはさみながらも断続的に実施されており、近年では夏冬の恒例行事になりつつある。一度始めた補助金を終了することの難しさが改めて浮き彫りになっている。
一律補助は即効性が高い一方、所得にかかわらず幅広い世帯に恩恵が及び、使用量の多い世帯ほど補助額が大きくなる。そのため、限られた財源を効率的に活用するという点では課題もある。また、補助の長期化は省エネを促す価格シグナルを弱める可能性があるほか、財政負担の増大も懸念される。補助の恒常化は避ける必要がある。
イラン情勢悪化による資源価格上昇が長期化するなか、家計の負担は増大しており、今冬も補助を実施することには一定の合理性はある。もっとも、その先については、エネルギー価格の動向や家計への影響を見極めながら、状況が落ち着いた段階で一律補助の縮小・終了を模索していくことが望ましい。その際には、低所得世帯など負担の大きい層への重点支援も選択肢としつつ、支援の公平性や迅速性、実効性、事務負担などを総合的に勘案した、バランスの取れた制度設計が求められる。また、燃料価格が再び急騰した場合には、規模と期間を限定した一律補助を機動的に実施することも考えられる。
重要なのは、緊急時には必要な支援を行いつつ、危機が収束した際には補助を終了できる仕組みを整えることである。政府には、エネルギー価格や家計の負担状況を踏まえて支援の必要性を見極めるとともに、補助の発動条件や終了条件を明確にし、恒常化を避ける姿勢が求められる。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 新家 義貴
しんけ よしき
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経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測
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星野 卓也