米国:地政学リスクのなかサービス業主導で7月PMIが加速

~大型イベントによる需要拡大の一方、コスト転嫁と根強いインフレ圧力は継続~

桂畑 誠治

目次

1. 景況感は予想を上回り拡大ペースが加速

26年7月のS&Pグローバル米国総合購買担当者指数(PMI)速報値は53.6となり、前月の51.9(改定値)から1.7ポイント上昇して8カ月ぶりの高水準を記録した。市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の52.2を大幅に上回り、景況判断の分岐点である50を維持している。

部門別では、製造業PMIが53.8(前月53.9)と0.1ポイントの微減となったものの、12カ月連続で50を上回る堅調さを示した。一方、サービス業PMIはサッカーW杯や米建国250周年記念イベントなどの開催も追い風となり、53.6(前月51.2)と2.4ポイント大幅に上昇した。製造業の勢いがやや鈍化するなか、サービス業が力強く牽引したことで、経済全体の拡大ペースが再加速した形だ。

トランプ政権の関税政策やイランを巡る地政学リスクなど政策不確実性が高まるなかでも、総合PMIは拡大基調を保ち、民間需要の底堅さを示している。ただし、価格上昇や供給遅延を警戒した「予防的な在庫積み増し」や大型イベントによる一時的な押し上げ効果が含まれるため、今後は反動減も予想される。もっとも、供給網が安定し警戒感が後退すれば、世界的な需要の本格回復が期待できるため、減速は一時的にとどまり、中長期的には拡大基調を維持する可能性が大きい。

2. 需要拡大を受けて雇用が持ち直し

主要項目の動きをみると、総合新規受注は53.6(前月52.1)へ1.5ポイント上昇し、需要の加速を示唆した。ただし、これには価格上昇や供給不足を見越した駆け込み需要も影響している。内訳では、製造業新規受注が53.4(同54.7)へ小幅低下したものの高水準を維持し、サービス業新規受注は53.7(同51.7)と拡大圏で伸びを大きく加速させた。

雇用面では、総合雇用が50.7(同49.1)へと上昇して拡大圏を回復し、雇用の安定化が示された。企業がコスト増や先行き不透明感から人件費抑制を続けるなか、大型イベント関連の需要が雇用増を下支えしたとみられる。部門別でも、製造業雇用が51.2(同47.1)、サービス業雇用が50.6(同49.4)と、ともに拡大圏へと復帰・上昇した。

3. コスト増と価格転嫁の動きが一段と鮮明化

インフレ指標は高止まりしている。総合投入価格が63.0(前月61.1)、総合産出価格が59.1(同58.3)と揃って上昇し、コスト増を川下へ転嫁する動きが継続していることを示した。

米国とイランの戦闘終結合意などを受けたエネルギー・資源価格の下落により、製造業では投入価格が68.0(同68.3)、産出価格が60.1(同61.0)へ揃って低下した。しかし、依然として高い水準にあり、財(モノ)のインフレ圧力は根強い。一方、サービス業では需要拡大を背景に、投入価格が62.2(同59.9)、産出価格が58.9(同57.8)へと上昇しており、サービスインフレの粘着性の高さが確認される。

4. 製造業は生産・新規受注が重石、サービス業の楽観姿勢は高水準

製造業PMIの構成要素を詳細にみると、雇用が51.2(前月47.1)へ上昇した一方で、生産が53.6(同56.2)、新規受注が53.4(同54.7)、在庫が52.2(同56.3)と軒並み低下した。前月比の寄与度(四捨五入前の総合指数ベースで▲0.17ポイントの悪化)では、雇用が+0.83ポイントと入荷遅延が+0.32ポイントの押し上げ要因となったものの、生産が▲0.65ポイント、新規受注が▲0.40ポイント、在庫が▲0.27ポイントと、生産、新規受注、在庫の鈍化が指数の主な押し下げ役となった。

サービス業の事業活動指数は53.6(前月51.2)へ上昇し、拡大持続を示した。新規受注が53.7(同51.7)へ改善したほか、先行きを示す「将来の活動指数」も64.9(同62.6)と高水準を維持しており、サービス関連企業の楽観的な見通しは維持されている。

5. 四半期ベースでもサービス業が牽引し拡大スピード加速

四半期ベースの基調を見ても、7月の総合PMI(53.6)は4-6月期平均の51.7から一段と上昇しており、民間需要の拡大ペースが維持されていることを裏付けている。内訳としては、製造業が53.8(4-6月期54.5)へ微細に減速した分を、サービス業が53.6(同50.9)へ力強く上昇して全体を押し上げる構造となっている。製造業の堅調さにサービス業のモメンタムが加わったことで、7-9月期(第3四半期)は全体として拡大ペースが再加速する良好なスタートとなった。

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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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