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- 経済分析レポート(Trends)
- 日経平均株価に働き始めた調整圧力
- 要旨
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日経平均株価は7万円の大台に乗った後、6月中旬以降に乱高下をするようになった。ここには米国の半導体株価が軟調になった影響が及んでいるのだろう。
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原因を2つ挙げると、①米国での大型IPOが契機になり、市場全体の需給が悪化したこと、②FRBの金融政策の見通しが6月にタカ派にシフトしたこと、が挙げられる。
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今後の株価は、潜在的なインフレ圧力が弱まるかどうかにかかっている。イランとの停戦合意がこのまま継続的な停戦へと移り、原油相場が大きく下落することが条件になるだろう。
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今般は割と大きな調整
ここ数日、日経平均株価が乱高下している(図表1)。久々に大きな調整圧力が働いているような気がする。これまで日経平均株価は7万円の大台を抜いて、次はどのくらいの水準を目指すのかという勢いであった。

日々のニュースでは、個別企業の決算が予想以上によかったとか、ある企業の行動が予想外だったからなどと伝えられている。こうした材料では、今から何が起ころうとしているのかが全く見えてこない。もっと相場の底流にある大きな変化とは何なのだろうか。
まず、確かなこととして言えるのは、日本株は米国の株式市場の影響を強く受けているということである。特に、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)との連動性が高い。このところ、AIブームが起こっていて、米国のSOX指数が急上昇し、その余勢を買うかたちで、日本株やアジア株も上昇してきた。日本では特定のAI関連銘柄が牽引役になって上昇し、時価総額を膨らませてきた。韓国のKOSPIは、半導体企業のたった2銘柄で時価総額の半分以上が占められていた。台湾の加権指数は半導体企業の1銘柄で時価総額の約4割を占めるという存在感の大きさになった。これをAIバブルという人も多かった。
なぜ、AI関連銘柄に株価上昇が集中するかと言えば、米国のSOXが上がったとき、そこに投資をしている投資家のマネーが連動して、日本・韓国・台湾の半導体銘柄へと投資するからだろう。
大型IPOの影響
変調が起こった起点には、6月12日に米ナスダック市場で超大型のIPOが行われたことがあると筆者はみている。この銘柄は、高値で新規公開された後、一旦は上昇したが、ここ数日は公開価格を割り込んでいる。この銘柄だけで2.1兆ドル(約336兆円)を集めていて、多くの投資家が新規公開株を購入したことが知られている。しかし、公開後に株価が下がったことで、投資家たちは期待が裏切られ、投資資金が固定化される結果を招いているのではないか。
そもそも株式のIPOや増資は、株式市場の需給を悪化させる要因である。6月12日の新規公開を前に、米国では多くの主要銘柄が換金売りされて、その資金がIPOに回った。つまり、このIPOが潜在的な売り圧力を生んでいた可能性がある。もしも、この銘柄がIPO後に順調に上がっていれば、投資家のリスク許容度は下がらずに、換金売りをしていた主要銘柄を買い戻すこともあっただろう。
しかし、その当ては外れた。大型IPO銘柄は決算など業績データが十分にはわからない中で、期待先行で株価が上がり続ける保証はどこにもなかった。そこで一旦株価が低迷し始めると、それが疑心暗鬼を生んだ可能性はある。
実は、このIPO以外に米国では別の大型IPOが2つも予定されていた。最初のIPOが公開後に伸び悩んだために、他の2つも株価の重石になったという見方ができる。ここにきて1つのIPO予定の企業は、新規公開を2027年に延期することにしたと伝えられている。不安はごく僅かに和らいだかもしれない。
金融政策の変化
米国の株式市場を変調させる要因がもう1つある。米中央銀行のFRBが、金融緩和予想から年内利上げに舵を切ったことである。6月16・17日のFOMCでは、今後の金融政策の見通しとして2026年末までに1回の利上げが大方の見通しとして示された。新しいウォーシュ議長は、利下げを求めてきたトランプ大統領によって指名された人物なので、もしかするとハト派的な見通しにまとめるのではないかという観測も残っていた。しかし、FOMCでは利下げは議論されなかった。米雇用統計もここ数ヶ月は堅調に非農業部門雇用者数が増加しているだけに、利上げ方向の議論はしやすくなっていたとも考えられる。
FRBの利上げはすぐに実行される訳ではないだろう。トランプ大統領は11月3日に中間選挙を控えている。だから、金融引き締めに動くとしても、すぐに投資マネーが収縮するほどのインパクトはないと考えられる。
もっと恐ろしいのは、今後イラン情勢が上手くまとまらず、先行きの原油高騰の影響から、まだ織り込まれていない数回の利上げが、9月の金融政策の見通しで明らかになる場合である。そうなると、米国の株価はいよいよ本格的に調整を始めるだろう。
今後の見方
株価が崩れるときの常套文句は、「ファンダメンタルズは強い」という見方である。しかし、株価は現在のファンダメンタルズではなく、先行きの金融環境を見ながら上下動を繰り返すものである。いくらデータセンター建設などのAI半導体需要が強くても、本格的な金融引き締めが開始されれば、これまでの強気期待によって嵩上げされた株価には強い調整圧力が働くことになるだろう。
1つ好材料があるとすれば、原油価格(WTI)が1バレル70ドルを割り込むことが出てきたことだ。イラン攻撃の直前は1バレルが67ドルであった。今後、60日間の停戦合意が順調に守られて、それが継続的な停戦へとつながっていけば、原油価格はさらに下落して、FRBのタカ派姿勢が和らぐ可能性がある。FRBの中にも、3~6月までの原油高騰が一過性のコストプッシュという見方と、その後の物価上昇へ橋渡しされるとの見方がある。ウォーシュ議長や前任のパウエル議長はどちらかと言えば、これまでは一過性という見方を示してきた。だから、今後、原油相場が落ち着けば、FRBの利上げも穏当なものになっていく可能性は残っている。結論は、当たり前の話になるが、今後のイラン情勢の着地が順調に運べば、米国の株価が劇的に調整することを回避できそうだ。ここはやや楽観論だと思って聞いてほしい。
熊野 英生
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