武器になる経済指標 武器になる経済指標

ISM製造業が教えてくれる米国株

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲0.1%、NASDAQが▲0.8%で引け。VIXは16.8へと上昇。

  • 米金利はツイスト・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.292%(+0.8bp)へと上昇。

実質金利は1.935%(+0.6bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+46.7bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はJPYが最強。USD/JPYは143前半へと下落。コモディティはWTI原油が65.5㌦(+0.3㌦)へと上昇。銅は9934.0㌦(+65.0㌦)へと上昇。金は3349.8㌦(+42.1㌦)へと上昇。

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注目点

  • 米国の6月ISM製造業景況指数、5月JOLTS求人統計は共に非連続的な変化は観察されず、現時点においてトランプ関税の直接的影響が限定的であることを示した。特に労働市場が底堅さを維持していたことは安心材料であった。

  • 5月のJOLTS統計によると求人件数は前月比+5.1%、777万件と2ヶ月連続で増加。減少を見込んでいた市場予想(730万件)に反し、企業の求人意欲がなお強いことを示した。3ヶ月平均値でみても745万件と底打ち感が明確化しつつある。もっとも、業種別にみると、宿泊・飲食(31.4万件増加)に強さが集中していたことは留意する必要がある。不法移民の取り締まり強化に伴い、代替人員確保のための求人があった可能性がある。ただし、金融保険(9.0万件増加)、ヘルスケア(6.0万件増加)、運輸・倉庫(6.0万件増加)などで増加が確認されており、全体として底堅かった。またFedが現在も重視しているとみられる、失業者数に対する求人件数の割合も1.07へと0.04pt上昇。分岐点の1.0から上放れており、労働市場に対する警戒感を和らげる結果であった。

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  • 解雇率は1.00%へと0.12%pt低下した。速報性に優れた新規失業保険申請件数がじわりと増加傾向にあることから悪化が警戒されていたが、現段階では杞憂に終わった。人手不足感と景気減速懸念が併存する中、企業は人員整理を急いでいないと推察される。この間、転職活動の活発度合いを示す、自発的離職率は2.06%(3ヶ月平均値)と小幅ながら反発基調にある。この尺度は平均時給の先行指標として知られており、現在においても一定の関係が保たれている。ここから判断すると平均時給上昇率は半年程度にわたって鈍化を続けた後、安定すると予想される。

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  • 5月JOLTS統計の数値は、労働市場の底堅さを確認させるものであり、Fedに時間的余裕を与えた。Fedは政策判断にあたって、関税由来のインフレ圧力と景気減速の度合いを見極める必要があるとして、早期の利下げに距離を置いている。インフレの帰趨が見えにくい中、労働市場が底堅さを維持しているのであれば、利下げの緊急性は低下すると考えるのが自然であろう。パウエル議長は7月1日に開催されていたECBフォーラムで「利下げはデータ次第であり、会合ごとに対応していく。いずれの会合も除外することはない」として7月FOMCにおける利下げの選択肢を排除しなかったが、一方で「経済成長、労働市場はともに堅調で、失業率は依然として歴史的に低い水準にある。非常に厳しい金融政策に苦しんでいるような経済ではない」として米国経済の底堅さにも言及していた。筆者は、引き続き9月FOMCにおける利下げが最も蓋然性が高い選択肢であると判断している。

  • 6月ISM製造業景況指数は49.0となり、5月から0.5pt改善。4ヶ月連続で50を下回ったものの、底割れは回避できている。ヘッドラインを構成する5つの項目は新規受注(47.6→46.4)と雇用(46.8→45.0)が低下した半面、生産(45.4→50.3)は50を回復。その他ではサプライヤー納期(56.1→54.2)は短縮化しヘッドラインの下押しに寄与、在庫(46.7→49.2)は押し上げに寄与した。

  • ISM製造業景況指数は50を僅かに割れる水準で「下値固め」をしつつある。もちろん、関税交渉の行方次第で、企業活動が抑制される可能性は残存するが、ここから50に向けて上昇を開始するならば、株式市場には安心感が広がろう。ISM製造業と株価(S&P500指数)の関係に目を向けると、依然として株価が行き過ぎた領域にあるものの、その差は縮小傾向にある。

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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。