武器になる経済指標 武器になる経済指標

株価予想に役立つ鉱工業生産(25 年5月)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.5%、NASDAQが+0.5%で引け。VIXは16.3へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.304%(+1.7bp)へと上昇。実質金利は1.957%(+1.6bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+52.7bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは144半ばへ上昇。コモディティはWTI原油が65.5㌦(+0.3㌦)へと上昇。銅は9878.0㌦(▲21.5㌦)へと低下。金は3287.6㌦(▲45.9㌦)へと低下。

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注目点

  • 日本の2025年5月鉱工業生産は前月比+0.5%と2ヶ月ぶりに増産となるも、市場予想(同+3.5%)は大幅に下回り、経産省経済解析室の予測値(同+5.2%)に対しても下振れた。増産となったのは生産用機械工業、はん用・業務用機械工業、自動車工業など9業種、減産となったのは輸送用機械工業(除く自動車)、無機・有機化学工業、電子部品・デバイス工業など5業種。

  • 6月初旬に実施された生産予測調査に基づけば、製造工業の生産計画は6月が前月比+0.3%と控え目な数値となっており、7月も同▲0.7%の減産と慎重。経産省経済解析室が生産予測指数の上振れバイアスを補正した6月の予測値は同▲1.9%と明確な減産見込みとなっている。5月分の下振れを考慮すると、6月の(経済解析室)予測値は弱さを誇張しているように思えるが、いずれにせよ生産指数の基調は横ばい・下向きとなっている。

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  • 鉱工業生産全体の方向感を決める自動車工業の生産は前月比+2.5%と増産。5月実施の予測調査が同+7.0%の増産計画だったことに鑑みると、やや物足りない印象を受ける。4月にトランプ関税(対自動車)が発動されて以降、日系メーカーは輸出価格の引き下げによって現地の販売価格を据え置くことで輸出数量の減少回避に努めているが、関税交渉が長引くと、国内生産を減らす動きが広がる可能性がある。輸送機械工業の生産計画は6月に同▲3.4%の減産となった後、7月も同▲4.4%と減産が見込まれている。新車販売に目を向けると、米国は5月に減少したが、これは駆け込み需要の反動(含む在庫切れ)によるところが大きく、基調的な需要低下によるものではないと推察される。他方、国内では認証問題に起因する供給制約が緩和し、新車販売台数が持ち直し傾向を強めている。筆者が試算した季節調整済み年換算値では480万台程度まで水準を切り上げている。

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  • 自動車と並ぶ重要産業である半導体関連については、電子部品・デバイス工業が前月比▲3.0%と4ヶ月ぶりの減産となったものの、3ヶ月平均値でみれば同+1.3%と増産基調は崩れていない。増産を主導しているのは集積回路(IC)であり、2020年を100とする指数水準は154(直近3ヶ月平均)まで高まっている。なお、この増産が2024年12月から量産を開始したと伝わっている、TSMC熊本工場の生産分によるものなのかは判然としない。経済産業省からの情報発信もない。他方、生産用機械に分類される半導体製造装置は同▲5.3%と2ヶ月連続の減産となったが、関連指標の機械受注統計(機種別集計)における電子計算機等の受注額は底堅い推移を続けており、半導体製造装置の引き合いがなお堅調であることがわかる。

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  • 株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業の生産に注目すると、上述のとおり5月の生産は前月比▲3.0%となった。生産計画は6月に前月比+3.9%となった後、7月は同+11.7%と強気な数値が見込まれている。次に出荷と在庫に注目すると、5月は在庫が前年比▲4.2%と4月対比でマイナス幅拡大となったものの、出荷が同▲7.1%とマイナス圏に沈んだため、出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)は▲2.9%ptへとマイナス圏に戻った。3ヶ月平均では+2.7%ptとなり、まだ下向きのカーブを描いている。

  • ここで長期的に電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスと、日経平均株価が連動性を有してきたことを再確認したい。株価指数において半導体を直接手掛ける企業の存在感は必ずしも大きくはないが、半導体製造装置や化学品など「広義半導体」で見ればその存在感は大きく、結果的に日本株全体のうねりを作り出す構図があると筆者は理解している。

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  • 先行きの出荷・在庫バランスを見極めるために在庫循環図の位置取りを確認すると、直近12ヶ月は、右下領域(在庫減・出荷増)から左下領域(在庫減・出荷減)へと逆走した後、大きくみれば北上している。過去の経験則に従えば、今後は東方に進路をとった後、徐々に右上領域(在庫増・出荷増)に向けて北上すると予想される。もちろん、米国の通商政策次第ではあるが、AI向け半導体以外のPC、スマホ、自動車向けが復調すれば、出荷・在庫バランスの大幅悪化は回避され、再び上向きのカーブを描くと期待される。コロナ期にあたる2020-21年に販売されたPCが徐々に買い替えサイクルに突入することも頭の片隅に入れておく必要があろう。

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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。