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- フランスに忍び寄る政権崩壊の危機
- 要旨
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予算成立が危ぶまれるフランスでは、予算案可決の目途が立たないまま下院審議を打ち切り、上院に送付した。今後、上院での審議を経て、上下両院での一本化作業を進めるが、12月中旬頃とみられる下院の最終審議では、議会採決を迂回する特別な立法手続きを使って予算成立を目指す。その場合、最大野党の左派会派が内閣不信任案を提出する意向を固めており、これに極右政党が同調する可能性を示唆している。
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内閣総辞職となった場合も、来年後半までは議会の前倒し・総選挙ができない。首相の任命権を持つマクロン大統領は、①バルニエ首相を再任名、②新たな首相を任命、③前倒し選挙までの選挙管理内閣を発足することが考えられる。首相任命と内閣不信任の繰り返しで、フランスの統治能力が機能不全に陥る場合、マクロン大統領の退陣論や現在の政治体制の見直しが俎上に上がる可能性もある。フランスの政治不安や財政不安が再燃しかねない。
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9月に発足したバルニエ首相が率いるフランスの新政権が早くも崩壊の危機に瀕している。首相の出身政党である中道右派の共和党とマクロン大統領を支持する中道会派が率いる政権与党は、国民議会(下院)の過半数を掌握していない。年内成立を目指す来年度予算案には、与野党双方から多数の修正案が出されるなど審議が難航した末、可決の目途が立たないまま下院審議を打ち切り、元老院(上院)に送付した。与党が過半数を握る上院では当初案に近い形で可決される見込みだが、上下両院で予算案を一本化するため、両院の代表で構成される両院委員会で協議したうえで、同委員会が合意した折衷案を改めて両院に諮ることが予想される。上下両院の議会構成を考えると、両院委員会に参加する代表者の構成は、やや与党寄りになるとみられている。両院委員会の折衷案や修正案で両院が合意できない場合、下院に法案成立の優先権がある。
フランスには議会採決を迂回する特別な立法手続きがある。この手続きを利用する場合、議会は24時間以内に内閣不信任案を提出することができ、不信任となった場合は内閣が総辞職し、信任された場合には当該法案が可決されたと見做される(憲法49条3項)。与党は12月中旬とみられる予算案の下院での最終審議の際に、憲法49条3項を使って議会採決を迂回する形での予算成立に持ち込むことを狙っている。与党が憲法49条3項の手続きを利用する場合、最大野党の左派会派は内閣不信任案を提出することを示唆している。議会最大勢力となりながら政権運営の機会を奪われた形の左派会派は、バルニエ政権やマクロン大統領への敵対姿勢を強めている。政権発足直後にも内閣不信任案を提起したが、その時は極右政党・国民連合が同調せずに政権崩壊を免れた。
だが、国民連合はここにきて与党が議会採決を迂回する形での予算成立を目指すならば、内閣不信任案に賛成する可能性を示唆している。2027年の大統領選挙や次の下院選挙での政権奪取を狙う国民連合は当初、政権運営能力のある責任政党であることをアピールする狙いもあり、予算不成立や政治混乱の火付け役となることを回避しようとした。また、フランスでは下院選挙が1年に1度しかできないため、この段階で政権を倒しても選挙に持ち込むことができない。そのため、政権存続のキャスティング・ボートを握ることで、財政運営、生活支援、移民政策、選挙制度改正などの重点政策分野で、政権への影響力を確保することを優先した。バルニエ首相は国民連合に配慮する形で、移民規制の強化を訴える強硬派を内務相に任命したが、政権発足後の予算協議では国民連合との政策協議の場を持たなかった。その間、財政運営を巡る金融市場の緊張もやや和らぎ、財政危機の引き金を引いたとの責任を問われる可能性も後退している。
バルニエ首相は国民連合に対して予算成立や内閣不信任案での協力を要請したが、25日朝に首相との面会を終えたルペン氏は、面会後も方針は変わらず、政権が議会採決を迂回する形での予算成立を目指すならば、内閣不信任案に賛成する意向を示唆した。こうした国民連合のスタンスが、政権から新たな譲歩を引き出すための戦略なのかどうかは分からない。また、ルペン氏は現在、欧州議会議員在職中の不正経費受給疑惑の係争中で、有罪となった場合、5年間の公職停止となり、2027年の大統領選挙への出馬ができなくなる。次の大統領選挙での政権奪取から、早期の政権打倒に方針を切り替える可能性もある。
内閣不信任案が可決された場合、バルニエ首相が率いる政権は総辞職するが、この段階では議会の解散・総選挙ができない。首相の任命権を持つマクロン大統領がどう動くかは不透明だが、①バルニエ氏を改めて首相に任命する、②他の人物を首相に任命する、③議会の解散・総選挙が可能になるまでの暫定首相を任命することが考えられよう。①は1962年にドゴール大統領が、内閣不信任案を受けて議会を解散し、ポンピドゥー首相を再任した前例があるが、今回は早期の議会解散ができないうえ、現在のマクロン大統領に当時のドゴール大統領のような強い政治基盤はない。②は現在と同様に共和党と中道会派が支持する政権が誕生する場合、左派会派と極右勢力からの継続的な内閣不信任票に晒される可能性がある。左派政権が誕生した場合、財政拡張が意識され、フランスの財政不安が再燃する恐れがある。穏健左派の首相を任命し、極右と極左を排除する形の政権が誕生すれば、政治的には安定するが、財政はやや拡張的となる。③はテクノクラートを首相に任命する可能性があるが、近い将来の再選挙が意識され、フランスの政治不安が続くことになる。首相任命と内閣不信任の繰り返しで、フランスの統治能力が機能不全に陥る場合、マクロン大統領に対する退陣論や現在の政治体制の見直しが俎上に上がる可能性も出てくる。
田中 理
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