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フランスに極右大統領は誕生するか?

~防疫線(コルドン・サニテール)は弱まっている~

田中 理

要旨
  • 2027年のフランス大統領選挙の勝利を目指す極右政党のルペン候補は現在、欧州議会議員在職中の不正受給疑惑の係争中で、有罪となれば5年間の公職停止となる。その場合、同氏の大統領選挙への出馬が困難となり、党ナンバー2のバルデラ党首が最有力候補となる。ルペン氏・バルデラ氏ともに最近の世論調査で30%以上の支持を集めてトップを走る。過去の大統領選挙では、初回投票で敗北した候補の支持者が極右大統領の誕生を阻止するために、決選投票でマクロン氏に投票した。初回投票で敗北する可能性が高い左派勢は、このところ反マクロン色を強めている。二番手につけ、マクロン氏の事実上の後継者であるフィリップ元首相を決選投票で支持するかは予断を許さない。過去2回の大統領選挙と比べて、極右大統領が誕生するリスクは高まっている。

2027年のフランス大統領選挙での勝利を目指す極右政党「国民連合(RN)」のルペン氏が公職を停止され、大統領選挙に出馬できない可能性が浮上している。ルペン氏を含む27名の「国民戦線(RF、後に現在の「国民連合」に党名変更)」の元欧州議会議員とその議員アシスタントや党スタッフは、2004~16年の間に勤務実態のない欧州議会の議員アシスタントを雇い入れたと偽ることで、欧州連合(EU)から関連経費を不正に受給した疑いで訴えられている。フランスの検察当局は13日、ルペン氏に対して5年間の収監と公職停止、国民連合に対して200万ユーロの罰金を求めた。ルペン氏や国民連合は不正はなかったとして無罪を主張している。来年1月頃に判決が言い渡されるとされ、5年間の公職停止が確定する場合、ルペン氏は2027年の大統領選挙に出馬できなくなる。過去2回の大統領選挙の決選投票でマクロン氏に敗れたルペン氏は現在、大統領選挙の支持率調査でトップを走っている。

いささか気が早いが、最近の世論調査に基づき、2027年の大統領選挙の行方を占ってみる。フランスの大統領は三選が禁止されており、現職のマクロン大統領は次の選挙に出馬しない。最近の世論調査では、ルペン氏が35%前後の支持を集めてリードし、マクロン大統領を支持する中道会派のフィリップ元首相が25%前後で続き、6月の欧州議会選挙で中道左派の「社会党」を率いたグリュックスマン欧州議員と極左「不服従のフランス」を率いるメランション氏が何れも10%台前半の支持を集める(図)。首相就任当初、マクロン氏の後継候補と目されたアタル前首相は、首相退任後の支持が10%未満にとどまり、後継候補レースから脱落しかけている。ルペン氏が出馬できない場合の極右の大統領候補としては、ルペン氏から党首を引き継ぎ、6月の欧州議会選挙で同党を勝利に導いたバルデラ氏が最有力候補となろう。同氏を首相候補とする世論調査は少ないが、ルペン氏と同等か僅かに下回る30%以上の支持を集め、首位を走る。

フランスの大統領選挙は二回投票制で、初回投票で過半数の支持を集める候補がいない場合、上位2候補が決選投票で争い、その勝者が大統領の座を手にする。過去2回の決選投票でマクロン氏に敗れたルペン氏の当時の世論調査は20%台前半で、20%台後半の支持を集めたマクロン氏にリードを許していた。今回はルペン氏・バルデラ氏ともに、マクロン氏の事実上の後継者であるフィリップ氏をリードする。

過去2回の大統領選挙の決選投票では、初回投票で敗れた候補の多くが極右大統領の誕生を阻止するため、マクロン氏の支持に回った。初回投票で三番手や四番手につけるグリュックスマン氏やメランション氏を支持する左派勢は、6・7月の国民議会(下院)選挙で議会の最大勢力となったものの、政権を率いる機会を奪われ、反マクロン・反政権色を強めている。そのため、決選投票でマクロン派のフィリップ氏の支持に回るかどうかは予断を許さない。多くの左派支持層は反極右のため、ルペン氏やバルデラ氏を支持する可能性は低いが、投票を棄権することで極右候補が初回投票でのリードを守り、勝利する可能性は過去2回の選挙と比べて高まりそうだ。

極右候補に立ちはだかるのは、既に2027年の大統領選挙への出馬表明をしているフィリップ元首相だろう。フィリップ氏はマクロン氏の下で首相に就任する以前は中道右派の共和党に所属し、首相退任後の2021年に中道右派の新党「ホライゾン」を立ち上げた。マクロン氏が2016年の大統領選挙への出馬に先駆けて旗揚げした中道政党「ルネサンス(旧党名は「前進」や「共和国前進」)」とは統一会派を結成することが多いが、最近ではマクロン氏との距離を置き始めている。マクロン色を薄めることで、決選投票で幅広い支持を集めることを目指しているのだろう。穏健左派の社会党の支持層が決選投票でフィリップ氏の支持に回るかが勝敗の鍵を握りそうだ。

(図)2027年フランス大統領選挙の世論調査
(図)2027年フランス大統領選挙の世論調査

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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