株高不況 株高不況

工作機械受注が教えてくれる世界経済と日本株(24 年10 月)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。
  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。
  • FEDはFF金利を25年末までに3.50%、26年末までに3.00%まで引き下げるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国株は、S&P500が▲0.3%、NASDAQが▲0.1%で引け。VIXは14.7へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.368%(+0.4bp)へと上昇。

実質金利は2.064%(+12.0bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+8.3bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面高。USD/JPYは154後半へと上昇。コモディティはWTI原油が68.1㌦(+0.1㌦)へと上昇。金は2606.3㌦(▲11.4㌦)へと低下。

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経済指標

  • NY連銀が公表した10月の消費者の予想インフレ率は、1年先が2.87%へと0.13%pt低下。3年先も2.54%へと0.12%pt低下、5年先も2.77%へと0.11%pt低下した。今やインフレ沈静化はFedにとって最重要課題でなくなっているものの、政策のかじ取りを容易にするという点において予想インフレ率低下は一定の意味があるだろう。

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注目点

  • 筆者が定点観測する工作機械受注統計(日本工作機械工業会)は10月に上昇加速。受注増加の足取りは遅々としているが、生産・投資活動の拡大に期待を繋げる動きになってきた。昨日発表された10月の受注額(原数値)は1224億円、前年比伸び率は+9.3%とプラス圏に浮上。筆者作成の季節調整値は前月比+4.8%と2ヶ月連続の増加。基調的な力強さには欠けるとはいえ、下値固めの様相を呈してきた。単月の内訳は「国内向け」が季節調整済み前月比▲2.2%と減少も、前年比では▲1.0%とマイナス幅縮小。「外需」は前月比+6.8%と4ヶ月ぶりに増加し、前年比でも+13.6%と明確なプラス圏に浮上した。

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  • 日本の工作機械受注は、そのサイクルがグローバル製造業PMIやアナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)と連動性を有する。グローバル製造業PMIは10月に49.4となり4ヶ月連続で50を下回ったものの、9月からは0.7pt上昇した。地域別では自動車生産の回復が進む日本が49.2と50を視界に入れた水準で推移、IT関連財の生産集積地である台湾は50.2と7ヶ月連続で50超を維持し、中国も旺盛なEV需要等を背景に50.3と堅調な領域を維持した。他方、韓国は48.3へと水準を切り下げた他、ユーロ圏ではドイツが43.0、フランスが44.5と苦境が続いた。米国は大統領選を控えた設備投資の手控えもあってか9月に47.3まで低下した後、10月は48.5へと持ち直した。

  • 先行きは、欧米中銀の利下げや中国の経済対策の効果発現が期待される。利下げが所期の効果を発揮すれば、住宅や自動車の販売回復を通じて世界経済を下支えするだろう。中国の不動産市場が直ちに快方に向かうとは考えにくいものの、一連の景気刺激策は少なくとも短期的には中国経済に恩恵を及ぼすと期待される。そうした下で日本企業の業績予想(TOPIX予想EPS)は円安や資本効率の改善にも支えられ、はっきりとしたプラス圏にある。なお、グローバル製造業PMIと世界半導体売上高の乖離が拡大傾向にある。これが半導体「以外」の業種における苦戦を浮き彫りにしているのだとすれば、今後は自動車関連(特に北米)の生産・投資が復調することでPMIが上向くことで収斂が期待される。

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  • 工作機械受注サイクルの位置取りを確認するために縦軸に受注額の水準(36ヶ月平均値からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、最新値は右下局面(低水準・伸び率プラス)と左下局面(低水準・伸び率マイナス)の境界線付近で膠着状態にあり、受注残高の底辺が長くなっていることを意味する。過去の経験則に従うなら今後は再び右方向へ回帰した後、徐々に上向きの進路をとると予想されるが、そうなるには国内の設備投資に加え、海外、特に中国向けの持ち直しが必要になろう。

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  • そこで中国の固定資産投資に目を向けると、現時点で製造業の動きは良くも悪くもプラス圏横ばいとなっているが、先行きは大型景気対策の波及効果も予想されることから、ある程度の期待が持てる。また日本国内においては、円安と地政学的リスクに対応したサプライチェーン再構築の動きが相俟って、設備投資を国内に振り分ける動きが顕在化しても全く不思議ではない。トランプ氏の勝利を受けて関税率引き上げの公算が大きくなった現在、米中の経済的分断が深刻化する懸念は一段と高まったが、それに伴うサプライチェーン再構築の需要が発現する可能性もあり、リスクは必ずしも下向きではない。日本や米国、欧州における半導体工場の新設もその一環と見做すことができる。そうした下、株価は既に上昇しているが、工作機械受注を見る限り梯子を外されるリスクは和らいでいると判断される。

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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。