武器になる経済指標 武器になる経済指標

剥がれた大幅利下げ観測 円安・株高の地合い整う

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。

  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。

  • FEDはFF金利を25年末までに3.50%、26年末までに3.00%まで引き下げるだろう。

目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.9%、NASDAQは+1.2%で引け。VIXは19.2へと低下。

  • 米金利はベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.233%(+2.6bp)へと上昇。
    実質金利は1.733%(+9.5bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+4.1bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが最弱。USD/JPYは148後半へと上昇。コモディティはWTI原油が74.4㌦(+0.7㌦)へと上昇。銅は9943.5㌦(+77.5㌦)へと上昇。金は2645.8㌦(▲11.3㌦)へと低下。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

注目点

  • 9月米雇用統計は米国の景気後退懸念を吹き飛ばすほど強かった。雇用者数は前月比+25.4万人、失業率は4.1%と、双方とも市場予想より良好な数値となり、過去2ヶ月の雇用統計が喚起した景気後退懸念を払拭した。結論を先取りすれば、10月雇用統計が大崩れしない限り、11月FOMC以降の利下げ幅は50bpではなく25bpとなる公算が大きい。

  • 上述のとおり雇用者数は前月比+25.4万人となり、過去2ヶ月分も合計7.2万人分が上方修正された。3ヶ月平均値は8月の+14.0万人から9月は+18.6万人へと加速。12ヶ月平均値の+20.3万人をなお下回るものの、労働市場の雇用吸収力が健在であることを示した。業種別では教育・ヘルスケア(+8.1万人)とレジャー・ホスピタリティ(+7.8万人)が強く、建設(+2.5万人)と小売(+1.6万人)も堅調。政府部門(+3.1万人)に強さが集中していた訳ではない点も好感できる。また就業形態別ではフルタイムが大幅増加となる一方、パートタイムが微減と雇用ミックスが改善。フルタイム労働者比率の低下一服は企業の採用意欲がなお健全であることを映じている。

米国雇用者数増加幅
米国雇用者数増加幅

米国フルタイム労働者比率
米国フルタイム労働者比率

  • 失業率は4.1%へと0.1%pt低下。小数点2位以下では4.05%となり、8月の4.22%からはっきりと低下した。失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす基準でみても7.7%(8月:7.9%)へと低下した。求人件数の減少傾向、求人倍率の低下傾向など労働市場の更なる軟化を示すデータが増えつつあるのは事実だが、過去2~3ヶ月の雇用統計は台風等の特殊要因によって弱さが誇張されていた可能性が指摘できる。

米国 失業率
米国 失業率

  • 賃金インフレの帰趨を読む上で重要な平均時給は前年比+4.0%(8月:+3.8%)へと2ヶ月連続で上昇加速。前月比では+0.37%(8月+0.46%)と高い伸びが続き、瞬間風速を示す3ヶ月前比年率は+4.30%(8月+4.07%)、同3ヶ月平均は+4.04%(8月+3.77%)と再加速の兆し。自発的離職率の低下(数値低下は労働者が待遇改善を求めて転職活動をする勢いが鈍化していることを示す)、CB消費者サーベイにおける雇用判断DIの低下、ISMやPMIといった企業サーベイにおける雇用項目の低下など、先行きの賃金上昇率鈍化を示唆するデータは豊富に存在するものの、賃金インフレの終息が一筋縄ではいかぬことを物語っている。

米国平均時給
米国平均時給

  • 筆者は9月FOMCの直後に「Fedが利下げ幅を縮小するには『相応の理由』が必要になる」と言及し、そうした理由が見つかる可能性は低いと考えていた。しかしながら、9月雇用統計は「相応」を満たす結果であり、このまま11月FOMCまでに経済指標が著しい悪化を示さなければ、利下げ幅は25bpに縮小する可能性が高い。実際、FF金利先物が織り込む11月FOMCにおける50bpの利下げ確率は完全に消え(25bp利下げの織り込みは95%、利下げなしが5%)、年内の累積利下げ幅は50bp程度となった。

  • こうした利下げ観測の剥落は、本邦金融市場に円安をもたらした。米国の景気後退懸念が緩和する下で円安の追い風が吹けば、日経平均株価はいわゆる「石破ショック」を過去のものにする可能性が高まっていると判断される。下図のとおり円安局面で日本株が(米国株に対して)相対的な強さを発揮することを踏まえれば、年内の最高値更新(42,224円)も十分にあり得るだろう。

日米相対株価
日米相対株価

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。