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6月短観から見た24年度業績見通し

~上方修正のキーワードは、素材、防衛、生成AI、新紙幣~

永濱 利廣

要旨
  • 6月短観における大企業の24年度収益計画によれば、売上高上方修正も経常利益は下方修正。

  • 売上高計画の上方修正が目立ったのは、防衛関連需要が拡大する「造船・重機等」、価格転嫁が寄与する「非鉄金属」、不動産価格上昇が寄与する「不動産」、生成AI向け半導体需要に関連する「はん用機械」、新紙幣刷新に関連する「物品賃貸」と続く。

  • 経常利益計画の大幅上方修正が期待される業種を見ると、木材や原油など輸入原材料価格の低下が大きく寄与していることが推察される「紙・パルプ」、防衛関連需要拡大の「造船・重機等」、製品価格値上げが寄与する「鉱・採石・砂利採取」、売上高上方修正が寄与する「物品賃貸」「はん用機械」と続く。

  • 大企業の想定為替レートは、2024年度にドル円で143.2円/ドル、ユーロ円で154.1円/ユーロだが、足元のドル円レートは160円台となっている。中でも円高方向に今期の為替レートを想定しているのが「輸送機械」をはじめとした輸出関連業種。

  • 今後は想定以上の景気減速やインフレ率低下などに伴うリスクオフを通じて、各国中銀がこれまでよりも金融緩和に前向きな姿勢を示す等して為替レートの水準が想定レートの水準以上に円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高方向に想定している業種に属する企業を中心に業績が上方修正される可能性があることにも注目すべき。

目次

売上高上方修正も、経常利益下方修正

7月1~2日にかけて公表された6月短観の大企業調査は、5月下旬~6月下旬にかけて資本金10億円以上の大企業約1700社に対して行った調査であり、先月公表された法人企業景気予測調査に続いて、今期業績予想の先行指標として注目される。

そこで本稿では、同調査を用いて、7月下旬から本格化する四半期決算発表で今年度業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

資料1は、6月短観の調査対象大企業(全産業、除く金融)が計画する半期別売上高・経常利益前年比の推移を見たものである。まず売上高を見ると、23年度は下期にかけて下方修正された一方で、24年度は上期・下期とも上方修正となっている。

一方、経常利益を見ると23年度は下期が大幅上方修正となった一方で、24年度は上期を中心に大幅下方修正になっている。しかし、24年度下期の修正率に着目すれば、特に素材業種と非製造業を中心に2桁の上方修正となっている。

このことから、企業は四半期決算発表で24年度の企業業績見通しを、上期中心に慎重に出してくることが予想される。つまり、産業全体で見れば、売上高の半期ごとの伸び率は前年比で上方修正される一方、経常利益については上期が下方修正の一方で、下期は上方修正になっているということである。

資料1 大企業の半期別売上高と経常利益計画
資料1 大企業の半期別売上高と経常利益計画

売上高大幅上方修正は「造船、重機等」「非鉄金属」「はん用機械」「不動産」「物品賃貸」

続いて、6月短観の売上高計画を基に、大幅上方修正が見込まれる業種を選定してみたい。資料2は24年度の業種別売上高計画の前年比と修正率をまとめたものである。

資料2 大企業の売上高計画(6月短観)
資料2 大企業の売上高計画(6月短観)

結果を見ると、24年度は「物品賃貸」「電気機械」を除く全ての業種で増収計画となる中で、最大の上方修正率となっているのが「造船・重機等」で+9.9%である。それに続くのが「非鉄金属」の同+5.0%、「はん用機械」「不動産」の同+3.7%である。

まず、「造船・重機等」については、経常利益計画も大幅上方修正されていること等からすれば、防衛関連需要の拡大が寄与している可能性が推察される。

一方、「非鉄金属」は、経常利益計画が下方修正されていること等からすれば、資材価格や24年問題に伴う輸送コスト上昇等を受けた製品価格の値上げが寄与した可能性が示唆される。他方、「不動産」は、ここ元の不動産価格が当初の想定以上に高まったことが反映された可能性が推察される。

また「はん用機械」は、生成AI向けの半導体需要増加等による半導体製造装置市場の回復・拡大が見込まれている可能性が示唆される。なお、「物品賃貸」は、新紙幣刷新に伴う券売機等の特需が反映されたことが予想される。

従って、次の四半期決算における業績見通しでは、こうした業種に関連する企業について売上高計画がどの程度上方修正されるかが注目されよう。

経常利益大幅上方修正期待は「紙パルプ」「造船・重機等」「鉱・採石・砂利採取」

続いて、6月短観の経常利益計画から大幅上方修正が期待される業種を見通してみよう(資料3)。結果を見ると、上方修正率が最も大きいのは「紙・パルプ」となっている。これは、製品価格の上昇、木材や原油など輸入原材料価格の低下が大きく寄与していることが推察される。

資料3 大企業の経常利益計画(6月調査)
資料3 大企業の経常利益計画(6月調査)

それに続くのが「造船・重機等」である。背景には、売上高同様に防衛関連需要の拡大が寄与している可能性が推察される。

それに続くのが「鉱・採石・砂利採取」だが、こちらは電子機器の基盤等も含まれるため、製品価格の値上げや需要増が反映された可能性が推察される。

なお、それに続く「物品賃貸」や「はん用機械」はいずれも減益計画だが、売上高上方修正が利益計画の上方修正に寄与していることが予想される。

このように、次の四半期決算で経常利益見通しの上方修正が期待される業種としては、輸入原材料価格の低下に伴うコスト減が期待される素材産業に加え、世界的な防衛需要の恩恵を受けやすい加工業種、世界的な生成AIブームの恩恵を受けやすい関連産業、新札特需の恩恵を受けやすい加工業種、等が指摘できる。

為替レートの変動で業績が修正される可能性も

なお、6月短観の収益計画では、企業の想定為替レートも公表されることから、業種別の想定為替レートも今後の業績見通しの修正の可能性を読み解く手がかりとして注目したい。

資料4にて実際に今年度の想定為替レートを確認すると、大企業における事業計画の前提となる想定為替レートはドル円で143.2円/ドル、ユーロ円で154.1円/ユーロとなっている。しかし、足元のドル円レートは160円台となっている。

資料4 大企業の想定為替レート(24年度)
資料4 大企業の想定為替レート(24年度)

中でも、足元のドル円レートよりも特に円高で今期の為替レートを想定しているのが「輸送用機械」「物品賃貸」「繊維」「金属製品」となっている。

なお、輸入依存度の高い内需関連産業は円安でむしろ業績の下押し要因となる企業も含まれており注意が必要だが、最も円安の恩恵を受けやすい業種の一つとされる「輸送用機械」が140円/ドル台と円高気味の想定をしていることに注目すべきだろう。

以上の結果を踏まえれば、今後は想定以上の景気減速やインフレ率低下などに伴うリスクオフを通じて、各国中銀がこれまでよりも金融緩和に前向きな姿勢を示す等して、為替レートの水準が想定レートの水準以上に円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高方向に想定している業種に属する企業を中心に業績が上方修正される可能性があることにも注目すべきだろう。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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