猛暑の予想、増える消費品目

~暑さ対策に家計は知恵を絞っている~

熊野 英生

要旨

今夏も猛暑が予想される。そこで過去の経験則から増減しそうな消費品目を調べてみた。増えそうな品目は、電気代、下着、飲料である。その代わりに、魚介類、調味料、コーヒー・ココアなどが減らされる。家計は、猛暑に対して、高騰する電気代をなるべく使わない暑さ対策にお金を使っているようだ。

目次

猛暑で増える品目

気象庁の予報では、6~8月は高温の見通しだそうだ。6月上旬になった時点で、猛暑が来ると言われて、多分そうなりそうだと直感できる。実のところ、もはや猛暑と言っても、例年の現象になって驚くことはない。むしろ、地球温暖化の進行が肌でわかるところが恐ろしい。東京の最高気温を調べても、例年7・8月の平均値が上昇している(図表1)。

(図表1)毎年7・8月の最高気温の推移<東京>
(図表1)毎年7・8月の最高気温の推移<東京>

そこで、今年も高温になって、増える消費品目を調べることにした。2001~2023年の東京の最高気温を基準にとって、その7・8月平均のデータと、品目別実質消費の増減率との相関関係を調べてみた。上位10品目は、①電気代、②男子用シャツ・セーター類、③他の飲料、④他の被服、などが続く(図表2)。この関係は、夏の気温が高いときほど、家計が何の消費品目を増やしているのか、という家計の暑さ対策を反映しているとも理解できる。

(図表2)最高気温の変動と相関関係の強い消費品目
(図表2)最高気温の変動と相関関係の強い消費品目

まず、電気代は高温になるほど使用量が多くなる。今夏は、電気代高騰が特に厳しい。政府の電気代補助がなくなると同時に、再生エネルギー賦課金が上がるからだ。この5~7月の電気料金の値上がりで、家計負担は著しく増えそうだ。丁度、定額減税があるので、それによっていくらか負担感は吸収されるだろう。しかし、逆に言えば、定額減税が企図した消費刺激効果は、電気代高騰に食われて、乏しくなることが予想される。電気代を継続的に引き下げるためには、原発再稼働を急ぐなどの対応が求められる。

なお、筆者はしばしば猛暑効果で消費支出が増えるという話を聞くが、この仮説をサポートする結果は得られなかった。おそらく、猛暑になれば、増える消費が出てくると同時に、節約されて減る消費もあるということだろう。 筆者が気付いたのは、家計は夏のエアコン代が野放図に増えるのを防ぐために、堅実なやり方でお金のかかりにくい猛暑対策にも注意を払ってきていることだ。そこには、過去に家計は暑さ対策にどんなことをしてきたかという様々な知恵も隠れていると思う。

図表2の猛暑で増える消費品目には、②男子用シャツ・セーター類、④他の被服があった。シャツなどの下着を発汗作用が高いものに替えて、暑さに備えようとしていることがわかる。最近で言えば、暑さ対策の衣類は数多く発売されている。冷感アンダーウェアや接触冷感・ひんやり冷感と銘打たれた衣類である。

④他の被服の中には、帽子とソックスが含まれる。熱中症の予防に、炎天下では帽子をかぶる人は多い。また、ソックスと言えば、最近は、夏でも快適な生地の冷感ソックスがある。同様に、⑤婦人用下着類、⑧履物類、⑩子供用下着類は、衣服を猛暑対応にしている創意工夫の表れであろう。ここ数年は、冷感グッズとして、扇風機内蔵の作業着や首に巻く保冷剤なども登場してきた。工場内で働く人などは、扇風機内蔵の作業着を手放せないと言う。また、寝具でも、寝るときのマットに敷く冷感マットやひんやり枕、吸汗速乾の掛け布団もある。家計は、エアコンをつけると電気代が高い分、衣類や寝具、身の回り品などを工夫して、節電型の猛暑対策を講じていると考えられる。

食べ物も猛暑シフト

暑くなると、私たちの食事の内容も変わってくる。図表2では、③他の飲料が上位に来た。③他の飲料とは、「果実・野菜ジュース、炭酸飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、ミネラルウォーター、スポーツドリンク」によって構成されている。炭酸飲料やミネラルウォーター、スポーツドリンクが増えるのはわかりやすい。

ほかには、⑥一般外食が増えやすい。これは、自宅で火を使って調理することが、猛暑では敬遠されることの裏返しであろう。少しうがった見方をすると、自宅に居るとどうしても電気代を使うので、暑い日中は飲食店内で過ごす人が増えているのかもしれない。筆者が公立図書館に行くと、日中の利用者には高齢者がとても多い。高齢者は公共施設に涼みに来ているのではないかと思う。そこから類推すると、猛暑には冷房の効いたカフェや飲食店で長く過ごす人が増えるから、そこで一般外食の支出が増えるのかもしれない。

食料品に関しては、③他の飲料とは別に、茶類と牛乳がある。茶類と牛乳は、夏に大量に水分を取るのならば、砂糖が使用されていない飲料を飲もうという人の姿勢が現れていると思う。そのほか、果実もある。スイカ、桃、パイナップルなど、水分の多い夏を代表する果実が増えていると考えられる。

一方、食料費も高温との相関関係は乏しい。高温になって増える品目もあるが、同時に別の品目が減らされていて、調整されて、食料費全体ではニュートラルということのようだ。

減らされる消費品目

逆に、猛暑で減らされている消費品目も調べてみた。①塩干魚介、②調味料、③他の魚介加工品、④コーヒー・ココア、などが上位に来る(図表3)。食料品が目立っている。

(図表3)最高気温の変動とは逆相関関係の消費品目
(図表3)最高気温の変動とは逆相関関係の消費品目

首位の①塩干魚介とは、「塩サケ、たらこ、しらす、干しアジ、煮干し」などである。③他の魚介加工品は、「鰹節、佃煮」である。ほかにも上位に生鮮魚介が来るなど、猛暑の時は魚介類は敬遠されがちになる。これは、おそらく、火を使うからだろう。リストには、⑨ガス代がある。⑧卵も調理に火を使うことが多い。そのほか、上位には、加工肉(ソーセージなど)や生鮮野菜もある。これらも調理の必要があるから手控えられるのだろう。逆の作用として、家庭での調理をせずに済ませるかたちで一般外食が増えている可能性はある。

温暖化によって食料高騰

猛暑によって、食料品全体の実質消費はニュートラルだと述べた。これは、データ分析上の結果であり、実際のところはマイナスだと考えられる。理由は、地球温暖化が、例年の猛暑を生んでいて、それが近年の食料品の高騰を引き起こしていると考えられるからだ。総務省「消費者物価」では、ここ数年の生鮮食品と、それらを除く食料品の価格高騰が目立っている(図表4)。データ分析をすると、近年の食料品高騰が、円安のせいなのか、異常気象のせいなのかを明確には区分できない。しかし、海外から報道される干ばつ・水害・山火事・土砂災害などが、穀物などの供給を阻害して価格高騰を引き起こしている状況を考えると、明らかに地球温暖化が、私たちの食生活を脅かしている。報道されるニュースでは、価格高騰のところを問題視しているが、筆者は価格高騰の原因のなっている地球温暖化のところから、事態を問題視しないと本質的解決に辿り着けないと感じる。

(図表4)食料品価格指数の推移
(図表4)食料品価格指数の推移

例えば、猛暑で増える消費の首位が電気代であるとすれば、地球温暖化によって、地球規模で電力消費量が増えていることが推察される。再生可能エネルギーへのシフトを世界的に進めていく必要を感じる。政府は、もっと国民を啓蒙して、脱炭素化シフトを進める機運を高めていく責任があると思う。

熊野 英生


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