武器になる経済指標 武器になる経済指標

高揚感なき金融相場へ

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月31,500程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月130程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを10‐12月期に修正するだろう。
  • FEDはFF金利を5.25%(幅上限)で据え置くだろう。利下げは24年1-3月を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+1.1%、NASDAQは+1.6%で引け。VIXは13.7へと低下。
  • 米金利はベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.195%(▲0.6bp)へと低下。実質金利は1.577%(+4.9bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲99.6bpへとマイナス幅縮小。
  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは144前半へと上昇。コモディティはWTI原油が67.7㌦(▲1.7㌦)へと低下。銅は8363.0㌦(▲28.0㌦)へと低下。金は1914.0㌦(▲9.7㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)
米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

経済指標

  • 6月CB消費者信頼感指数は109.7へと比較的大幅な上昇となった。インフレ沈静化と雇用環境の継続的な改善が相俟って消費者を取り巻く環境は改善している模様。雇用統計の先行指標として有用な雇用判断DIは34.4へと上昇。パンデミック発生前における最高点付近での推移が続いており、依然として求職者優位の構図にある。

CB消費者信頼感指数、CB消費者信頼感指数(雇用判断)
CB消費者信頼感指数、CB消費者信頼感指数(雇用判断)

CB消費者信頼感指数
CB消費者信頼感指数

CB消費者信頼感指数(雇用判断)
CB消費者信頼感指数(雇用判断)

  • 5月米コア耐久財受注(非国防/除く航空機)は前月比+0.7%と市場予想(+0.1%)を上回った。前月比分の下方修正によって5月分が押し上げられた面はあるにせよ、企業支出の方向感は上向いてきた。深刻な人手不足を背景に省力化投資が進んでいるとみられる。

  • 5月米新築住宅販売件数は前月比+12.2%と3ヶ月連続の増加。コロナ期の特需からの反動減は終了しつつある。住宅ローン金利が高止まりする反面、販売中央価格が前年比▲7.6%と下落していることから、住宅取得環境の悪化に歯止めがかかっている。

コア資本財受注・ISM、米国 新築住宅販売件数
コア資本財受注・ISM、米国 新築住宅販売件数

コア資本財受注・ISM
コア資本財受注・ISM

米国 新築住宅販売件数
米国 新築住宅販売件数

  • 4月ケース・シラー住宅価格指数は前年比▲1.70%と2ヶ月連続でマイナスとなったものの、前月比では+0.91%、3ヶ月前比年率では+5.26%と瞬間風速は加速基調にある。住宅ローン金利の急上昇を受け、住宅の買い替えを躊躇う人が増加しその結果として中古市場に出回る物件が限られ、住宅価格に押し上げ圧力を生じさせているとみられる。消費者物価指数のうち約3割の比重を有する家賃のインフレが長期化すれば、Fedの金融政策に一定の影響を与え得る。

ケース・シラー住宅価格指数
ケース・シラー住宅価格指数

注目点

  • 典型的な相場の4分類に従えば、現在の米国市場は逆業績相場にあると考えられる。企業業績の回復が鈍い中、金融引き締めの終了が間近に迫り、金利の上昇は一服している。この間、株価は「金融相場」を先取りする形でPERの上昇を伴い水準を切り上げている。

  • 現時点で7月FOMC(7/25-26)における金利据え置き確率(FF金利先物から逆算)は3割以下と利上げ予想が優勢となっている。筆者は、今後発表されるインフレデータが大きく加速しなければFF金利(誘導目標レンジ上限)は5.25%で据え置きとなる公算が大きいと判断しているが、いずれにせよ5.25%もしくは5.50%がターミナルレートになるとの予想が中心的となっている。6月FOMCで公表された2023年末のドットチャート中央値である5.75%に到達するにはインフレ率の明確な再加速など、現時点でやや想定しにくい状況に限られるだろう。したがって現在の金融政策サイクルは、金融引き締めの最終局面にあると判断するのが妥当である。そうした中、一部の金融市場参加者は一つ先の金融緩和局面の到来を意識しつつある。

  • 企業業績に目を向けると、S&P500の予想EPSは持ち直しつつあるものの、直近ピーク(2022年5月)からは低下した状態になっている。足もとの回復を重視すれば、逆業績相場との評価は妥当ではないかもしれないが、高インフレによって実質所得が蝕れる中、米経済の約7割を占める個人消費(含む住宅投資)の増勢が鈍化する下、テック大手や半導体関連企業を除くと企業業績は停滞した状態にある。急進的な利上げにより借り入れコストが急増する中、企業支出は抑制されており、たとえばNY連銀製造業景況調査では6ヶ月先の設備投資計画を問う項目が低水準にある。これらから判断するとやはり現在は「逆業績相場」に位置しているとの評価が妥当に思える。

S&P500 予想EPS(先行き12ヶ月)、NY連銀調査 設備投資(6ヶ月先)
S&P500 予想EPS(先行き12ヶ月)、NY連銀調査 設備投資(6ヶ月先)

S&P500 予想EPS(先行き12ヶ月)
S&P500 予想EPS(先行き12ヶ月)

NY連銀調査 設備投資(6ヶ月先)
NY連銀調査 設備投資(6ヶ月先)

  • 筆者は2024年1-3月頃の利下げ開始を見込んでおり、仮にそうなれば金融相場への移行となる。一般的に金融相場の初期局面、すなわち金融政策が緩和方向に傾斜し、企業業績のダウンサイドリスクが後退する時に株価は大きく上昇する傾向にある。ただし、今回もそうなるかと言うとそれは微妙であろう。というのも、本来、金融引き締めに伴う実質金利上昇によってPERは低下するはずであったが、将来の利下げ転換を先取りする形でPERが既に上昇に転じているためバリュエーションの拡大が期待しにくいためだ。この見方が正しければ、今後、金融政策が緩和方向に転換したとしても、株価は業績見合いでしか上昇しない可能性が考えられる。PERが上昇しない高揚感なき金融相場になる可能性が高まっているように思われる。

S&P500予想PER・実質金利
S&P500予想PER・実質金利

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。