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2023.01.04
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どうなる?2023年の物価と家計負担!
~今年の家計負担は昨年からさらに一人当たり+1.9万円程度増加の可能性~
永濱 利廣
- 要旨
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- 2023年の物価を展望すれば、総合経済対策による電気・ガス代の価格抑制策の影響が反映されるため、特に2月分以降の消費者物価の伸び率も鈍化の可能性が高い。ただ、4月分からは多くの地域で電気料金の大幅値上げが実施される可能性が高いことには注意が必要。また、政府による電気・ガス・ガソリンや灯油の価格抑制策も今年9月までとされているため、エネルギー価格のピークアウトが遅れる可能性があることには注意が必要。
- 岸田政権が昨年10月の政府小麦売り渡し価格を据え置いたため、当初懸念されていた年明けにかけての小麦関連製品の大幅値上げは回避されそう。その分、今年4月の政府小麦売り渡し価格は過去1年までさかのぼった平均価格で決まるため、4月の政府小麦売り渡し価格にはウクライナ危機直後の小麦価格の上昇分が反映されることには注意が必要。
- これまで物価上昇の主因となってきた為替も2023年以降はもう一段の円高に向かいそう。というのも、2023年の米国経済はさらに減速の度合いが強まることが予想される。となれば、これまで立て続けに急速な利上げを実施しているFRBも、今年前半中に利上げを打ち止め、景気悪化の度合い次第では年内に利下げに転じる可能性すらある。
- 円安の要因となっていた日本の経常黒字の縮小も、輸入一次産品価格が円安の進行以上に下落していることからすれば、日本の貿易赤字も縮小に向かおう。さらに、サービス収支の赤字も今後の水際対策の緩和に伴うインバウンド消費の増加などにより縮小に向かう等から、経常収支の黒字が拡大に転じることが2023年の円高要因となろう。また、日銀人事も円高圧力となる可能性がある。
- 日経センターが公表している最新12月分のESPフォーキャスト調査通りに今後も消費者物価が推移すると仮定すれば、2022年のインフレ率は+2.3%に対して2023年のインフレ率は+1.9%に鈍化することになる。そして、家計の一人あたり負担増加額は2022年に前年から+2.3万円(四人家族で9.1万円)増加することに加え、2023年は+1.9万円(4人家族で7.9万円)増加すると試算される。インフレ率が鈍化するとはいえ、今年の春闘の結果次第では、家計の実質負担はさらに増えることには注意が必要。
2023年の物価は伸び鈍化
原稿執筆時点における直近11月の全国消費者物価を見ると、生鮮食品を除く総合が前年比+3.7%となり、8カ月連続でインフレ目標の+2%を上回っている。更に、そのインフレ率は前月から+0.1pt拡大しており、季節調整値の前月比で見ても+0.3%上昇している。
背景には、これまでインフレ率押上の主因となってきたエネルギー価格の他品目への波及に、食料品値上げの加速や円安に伴う家電製品の大幅値上げ等が加わったこともあり、少なくとも2022年の秋まで日本のインフレ率は加速していたことになる。
しかし、2023年を展望すれば、既にエネルギー価格の上昇はピークアウトしていることから、特に2月分以降の消費者物価の伸び率も鈍化の可能性が高いだろう。というのも、足元ではエネルギー価格の元となる原油価格が130㌦/バレル超えから70㌦/バレル台まで下がっており、既にガソリン価格の値下がりに結び付いている。また、総合経済対策による電気・ガス代の価格抑制策の影響が2月分から反映されるためである。
ただ、多くの電力会社が価格上限引き上げを政府に申請していることから、4月分からは多くの地域で電気料金の大幅値上げが実施される可能性が高いことには注意が必要だろう。また、政府による電気・ガス・ガソリンや灯油の価格抑制は今年9月までとされているため、政府が9月以降に化石燃料価格の下落を反映して価格抑制を弱めたり、政策自体を止めるようなことになれば、エネルギー価格のピークアウトが遅れる可能性があることには注意が必要だろう。
一方、生鮮除く食料品の価格については、既に穀物価格自体はピークアウトしているものの、円安傾向が続いてきたことから、今後もしばらく価格転嫁が続く可能性が高いだろう。なお、当初は10月の政府小麦売り渡し価格がロシアのウクライナ侵攻の影響を受けて大幅に引き上がることが懸念されていたが、岸田政権が価格を据え置くことを決断した。このため、当初懸念されていた年明けにかけての小麦関連製品の大幅値上げは回避されそうである。
ただ、これはあくまで値上げの先送りである。というのも、今年4月の政府小麦売り渡し価格は通常の過去半年間の平均輸入価格ではなく、過去1年までさかのぼった平均価格で決まる。このため、4月の政府小麦売り渡し価格にはウクライナ危機直後の小麦価格の上昇分が反映されることには注意が必要である。
為替はドル安進行の可能性
このため、これまでの商品市況高や円安の進展を理由に食料品や耐久財等の値上げは2023年以降もしばらく続きそうだ。となると、為替の動向も2023年の物価を大きく左右しよう。
しかし、これまでの物価上昇の主因となってきたドル高も2023年以降はもう一段の円高に向かいそうである。というのも、既に米国経済はこれまでの金利上昇などの影響を受けて明確に減速している。そして米国では逆イールド、すなわち2年債利回りが10年債利回りを上回るとその後必ず景気後退局面するという経験則があるが、すでに今年の夏時点でこの状況にあることからすれば、2023年の米国経済はさらに減速の度合いが強まることが予想される。
また、そもそもドル高のきっかけが、米国のインフレ率上昇に伴うFRBの利上げ観測の強まりである。しかし、米国のインフレ率上昇の主因の一つとなった一次産品価格は世界経済の減速などを見越してすでにピークアウトしている。となれば、年明け以降は米国のインフレ率も低下傾向がより明確になるだろう。事実、FRBが+2%のインフレ目標とするPCEコアデフレーターを直近前月比が今後も続くと仮定してインフレ率を延長すると、早ければ今年の夏以降にもインフレ率は+2%台に近づくことになる。
となれば、これまで立て続けに急速な利上げを実施しているFRBも、今年前半中に利上げを打ち止め、景気悪化の度合い次第では年内に利下げに転じる可能性すらあるだろう。
一方、円安の要因となっていた日本の経常黒字の縮小も、輸入一次産品価格が円安の進行以上に下落していることからすれば、日本の貿易赤字も縮小に向かおう。さらに、サービス収支の赤字も今後の水際対策の緩和に伴うインバウンド消費の増加などにより縮小に向かう等から、経常収支の黒字が拡大に転じることが2023年の円高要因となろう。
また、日銀人事も円高圧力となる可能性がある。というのも、3~4月にかけて日銀副総裁、総裁の任期が満了となる。そして、最も重要な日銀総裁の後任人事は、財務省と日銀の襷掛け人事が復活する可能性が高いことからすれば、次は日銀出身の総裁が誕生する可能性が高い。となると、リフレ的な政策志向の強い黒田日銀よりもタカ派にシフトする可能性があることからすれば、これも円高圧力となる可能性があろう。
今年の家計負担は+1.9万円/人程度
以上を踏まえれば、今年のインフレ率は低下トレンドに転じる可能性が高いだろう。というのも、足元のインフレ加速は輸入物価上昇に伴うコストプッシュによるものであり、すでに原因となる一次産品の国際商品市況はピークアウトしているからである。
実際、日経センターが公表している最新12月分のESPフォーキャスト調査によれば、CPIコアインフレ率は今年の10―12月期にピークを迎える見通しとなっている。
持続的なインフレ率の維持にはディマンドプルインフレが必要であるが、この年の世界経済は一段と減速が強まる可能性が高く、そもそも日本は海外と異なり需要不足である。このため、来年以降はコストプッシュインフレ圧力の低下により日本のインフレ率は低下に転じ、コアCPIのインフレ率も+1%台まで下がるとエコノミストはみている。
なお、ESPフォーキャスト通りに今後も消費者物価が推移すると仮定すれば、2022年のインフレ率は+2.3%に対して2023年のインフレ率は+1.9%に鈍化することになる。そして、家計の一人あたり負担増加額は2022年に前年から+2.3万円(四人家族で9.1万円)増加することに加え、2023年は+1.9万円(4人家族で7.9万円)増加すると試算される。インフレ率が鈍化するとはいえ、今年の春闘の結果次第では、家計の実質負担はさらに増えることには注意が必要であろう。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 永濱 利廣
ながはま としひろ
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経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析
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