武器になる経済指標 武器になる経済指標

政策金利の終着点は見えてきた。ただしその先は視界不良

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月137程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは23年3月までにFF金利(誘導目標上限値)を5.0%へと引き上げるだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.6%、S&P500は+0.5%、NASDAQは+0.0%で引け。VIXは23.1へと低下。
  • 米金利カーブはベア・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.268%(▲2.5bp)へと低下。実質金利は1.565%(+8.7bp)へと上昇。
  • 為替(G10)はUSDが堅調。USD/JPYは140近傍で一進一退。コモディティはWTI原油が80.1㌦(▲1.6㌦)へと低下。銅は8076.0㌦(▲34.0㌦)へと低下。金は1754.4㌦(▲8.6㌦)へと低下。

図表1
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図表2
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図表3
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図表5
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経済指標

  • 10月米中古住宅販売件数は前月比▲5.9%、443万件へと9ヶ月連続で減少。前年比では▲28.4%へと落ち込み、2000年代の住宅バブル崩壊時に比肩。販売価格(中央値)は、住宅在庫が復元する下で前年比+13.3%へと鈍化。依然として高い伸び率にあるが、販売市場の冷え込みに鑑みると今後は一段の低下が予想される。

図表6
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図表7
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図表8
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  • 10月米景気先行指数(コンファレンス・ボード作成)は前月比▲0.8%と8ヶ月連続でマイナス。6ヶ月前比年率では▲6.3%へと下落幅拡大。消費者マインドの悪化、製造業の新規受注減少、住宅着工件数の落ち込みなど、実体経済の先行きを示す指標は何れも明確に冷え込んでおり、来年前半までに実質GDP成長率(前年比)がマイナス圏に落ちこむことを示唆している。

図表9
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図表10
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図表11
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注目点

  • 10月の米CPIとPPIがそれぞれ鈍化したことで12月FOMCにおける利上げ幅縮小(75bp→50bp)の蓋然性はより高くなった。金融市場参加者はほぼ100%の確率でそれを織り込んでおり、また2023年2月と3月のFOMCでは25bpに利上げ幅が縮小するとの見方が定着しつつある。

  • インフレ関連データに目を向けると、これまでインフレ率全体を押し上げてきた家賃や中古車の価格低下が示唆されている。CPI家賃に1年程度先行するケース・シラー住宅価格(最新は8月)やZillow住宅価格指数(同10月)は住宅市場の急激な冷え込みを反映して直近の前年比伸び率は鈍化しており、瞬間風速(3ヶ月前比年率)は急減速している。過去の傾向から判断するとCPI家賃は向こう数ヶ月でピークアウトしその後はCPI全体を下押しするだろう。またCPI中古車の先行指標として注目されるマンハイム中古車価格指数は前年比▲10.6%へと落ち込んでいる。これまで主役級のインフレドライバーを演じてきたCPI中古車は今後、全体のインフレ率に下押し圧力をかける公算が大きい。

図表12
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図表13
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図表14
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図表15
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図表16
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  • 他方、Fedが重視しているミシガン大学やNY連銀が調査する消費者の予想インフレ率は再び上昇の気配がある。1年先予想インフレ率は両調査とも5%を超え、3年先は+3.1%(NY連銀)、5-10年先(ミシガン大学調査)は+2.9%と何れも直近のボトムから反発し不気味な存在になっている。最近のガソリン価格反発によってインフレの予想形成が過度に押し上げられた可能性は否定できないが、生活費の上昇が続くなどして人々の予想インフレ率が高止まりすれば、再びFedの懸念事項になっても不思議ではない。6月FOMCの直前、Fedがこれら予想インフレ率の上振れに驚き、土壇場で利上げ幅を75bpに変更したことは記憶に新しい(※ミシガン大学調査の予想インフレ率は確報段階で下方修正された)。

図表17
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図表18
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図表19
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  • またFedを悩ませ続けている、賃金の異常値的上昇とその背景にある労働参加率の停滞についてその改善が遅々としていることも重要。当初、パンデミックを契機に労働市場から退出した多くの人は、政府からの手厚い給付が途切れ、資産価格(株式)が下落し、インフレが高止まりすれば止む無く復職を選択すると予想されていたが、55歳以上の人々は現在も頑なに労働市場への復帰を拒んでおり人手不足の主因となっている。労働供給の回復なくして賃金の異常値的上昇が解消するとは考えにくい。過去2年程度、高インフレを牽引してきた家賃や中古車、エネルギーといったある種の特殊要因が剥落し全体のコアインフレ率が低下したとしても、賃金の異常値的上昇が続く下でサービス物価の上昇圧力が残存していれば、Fedが緩和方向に舵を切るのは容易ではない。インフレ沈静化を示す指標が増加する中、労働参加率が一向に上向いていないことを再認識する必要があるだろう。政策金利の終着点は徐々に見えてきたとはいえ、利下げを見込む根拠は現在のところ乏しい。

図表20
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図表21
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図表22
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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。