武器になる経済指標 武器になる経済指標

もし日銀が緩和を止めるとしたら 意外としっかりしている賃金に注目

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月133程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施。利下げは23年後半以降だろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.1%、S&P500は+0.3%、NASDAQは+0.7%で引け。VIXは26.2へと低下。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.471%(+3.0bp)へと上昇。実質金利は0.928%(▲3.4bp)へと低下。
  • 為替(G10)はJPYが最強。USD/JPYは143近傍まで低下。コモディティはWTI原油が88.5㌦(+1.2㌦)へと上昇。銅は7803.0㌦(▲65.5㌦)へと低下。金は1698.2㌦(▲8.9㌦)へと低下。

図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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注目点

  • 円安を受けて政府は為替介入も辞さない構えをみせている一方、日銀が金融政策の修正を模索している様子はない。仮に金融政策の修正を本格検討しているならば、今頃リーク記事が相次いでいるはずであるが、筆者の知る限りそうした報道はなく、現在のところコロナオペ終了に関する観測報道のみである。マスコミ報道で円安批判が強まるのをよそに、日銀は現行の金融政策を維持する見込み。長期金利の誘導目標を引き上げたり、操作対象年限を短縮化(10年→5年)したり、ましてや短期金利を引き上げたりすることはないだろう。消費者物価上昇率が2%を明確に上回る状況でも、現在のように輸入物価上昇を起点に消費者物価が上昇する状況で日銀が金融引き締めに転じるとは思えない。日銀(黒田総裁)も輸入インフレに対して金融引き締めを講じる必要はないとの説明を繰り返してきた。

  • もっとも、日銀が内生的なインフレメカニズムが整いつつあるとの認識を示せば話は変わってくる。その点、最近は意外にも賃金上昇の兆しが観察されている点に注意したい。毎月勤労統計によれば2022年1月以降の現金給付総額は前年比+1.0~+2.0%で推移し、直近値の7月は前年比+1.8%(共通事業所ベースでは+2.5%)と比較的高い伸びが実現し、所定内賃金も上昇基調にある。また名目雇用者報酬などマクロ的な賃金動向を示す尺度も増加基調にあり、多くの尺度で賃金上昇が観察されている。もちろん現時点では2020-21年に減少した反動の域を脱しておらず、物価上昇を加味した実質賃金はマイナス圏にあることから、日銀が満足するとは考えにくいが、それでも賃金上昇を伴ったインフレの萌芽であると認識するに至るには十分だろう。また人手不足感が強まるなど、先行きの賃金が上昇しやすい環境にあることも重要。日銀短観の雇用人員判断DIは大幅なマイナス圏にあり、直近の数値は2015-16年平均に近い。今後のインバウンド本格的再開を踏まえれば、飲食・宿泊、対個人サービスなど労働集約的な産業を中心に労働需給は一段とひっ迫し、賃金上昇圧力が強まると想定される。むろん、企業業績次第ではあるが、賃金上昇の素地は思いのほかしっかりとしている。

図表6
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図表7
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図表8
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図表9
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図表11
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図表12
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  • 筆者は基本路線として黒田総裁の任期中は現在のYCCを維持するとの見方を維持する。もっとも、2023年を見据えれば「輸入物価上昇が終わればインフレは終わる、ゆえに金融緩和を継続する必要がある」とする現在の見解が変化する可能性はある。マイナス金利撤回を含めたYCCの修正機運が高まるのではないか。ちなみに日銀が「直ちに」金融政策を修正するという結論ありきでその後に理由を探すならば、筆者は名目賃金の上昇がその一つになり得るとみている。

藤代 宏一


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