受注好調でも物足りなさを覚える局面

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月117程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施、5月にはQTに着手するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+1.0%、S&P500は+1.1%、NASDAQは+2.0%で引け。VIXは21.80へと低下。

  • 米金利はブル・スティープ化。2年金利は2日累積で約15bp低下。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.829%(▲4.6bp)へと低下し、実質金利は▲0.133%(+2.3bp)へと上昇。

  • 為替(G10)はUSDが中位程度。USD/JPYは125半ばで一進一退。コモディティはWTI原油が104.3㌦(+3.7㌦)へと上昇。銅は10299.0㌦(▲43.5㌦)へ低下。金は1981.0㌦(+8.9㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブと米国 予想インフレ率(10年)と米国 実質金利(10年)
米国 イールドカーブと米国 予想インフレ率(10年)と米国 実質金利(10年)

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

注目ポイント

  • 日本の2月機械受注統計は前月比▲9.8%と2ヶ月連続の減少。製造業が▲1.8%、非製造業が▲14.4%と双方とも2ヶ月連続で減少した。製造業は電気機械からの受注が+13.8%と高水準から一段と増加したほか、情報通信機械(+52.8%)も増加し、低水準ながら自動車(+11.3%)も増加した。反対にはん用・生産機械は▲5.7%と減少したが高水準を維持。サプライチェーン影響で自動車からの受注低調が続き全体を下押ししているものの全体として底堅さを維持している。

  • 他方、懸念されるのは非製造業からの受注低調。2月の水準は驚くほど低く、2011年と同程度であった。11の需要者のうち8業種が前月比マイナスとなり、なかでも運輸・郵便や情報サービスの落ち込みが大きかった。個人消費の停滞を背景に卸売・小売の弱さも続いた。通信業を中心に5G関連投資が一巡するなか、個人消費の弱さが企業の設備投資意欲を蝕む構図にあり、当面は変化が期待しにくい。なお資本財輸出の先行指標である「外需」も前月比▲2.8%と減少したが、水準は十分に高く悲観は不要と考えられる。

  • 株式市場目線では半導体製造装置の受注動向が反映される「電子計算機等」に注目(機種別の受注額)。2月は前月比▲19.8%と大幅に減少し3ヶ月平均値でみても明確に下方屈折した。中国国内のコロナ感染状況悪化によって一部受注が延期された可能性はあるが、12月をピークに受注の増勢鈍化が鮮明になっており、これが日本株の重荷になっていると考えられる。実際、「電子計算機等」の受注額と日経平均株価は共に下向きのカーブを描いている。

  • 半導体製造装置の受注動向は電子部品や化学品(半導体部材)など広範なIT関連財と関係を有する。半導体製造装置を直接手掛ける企業の存在感は、必ずしも株価全体の方向感を決めるほど大きくはないが、関連企業を含めると日経平均に大きなインパクトを与え、結果的に両者が連動すると考えられる。半導体製造装置の受注急増が一服する局面において、株式市場では「広義半導体」関連銘柄の業績拡大期待が膨らみにくく、株価指数の牽引役が不在となる。中長期的にみて広義半導体が有望セクターであることに変わりはないが、現在の株価指数を持ち上げるにはエンジンの出力が足りない印象だ。

電子計算機等受注額・日経平均
電子計算機等受注額・日経平均

藤代 宏一


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