シャドーレートでみると既に2%強の利上げ 利上げはここからが本番?

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月117程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施、年央にはQTに着手するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは+0.4%、S&P500は+0.5%、NASDAQは▲0.2%で引け。VIXは20.80へと低下。
  • 米金利はベア・フラット化傾向。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.982%(+3.8bp)へと上昇。債券市場の実質金利は▲0.509%(+6.6bp)へと上昇。
  • 為替(G10通貨)はUSD安傾向。USD/JPYは122近傍で一進一退。コモディティはWTI原油が113.9㌦(+1.6㌦)へと上昇。銅は10267.0㌦(▲82.5㌦)へと低下。金は1954.2㌦(▲8.0㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

経済指標

  • 2月米中古住宅販売成約指数は前月比▲4.1%と市場予想に反して減少。前年比でも▲5.4%へと落ちこんでいる。物件価格が高止まりするなか、住宅ローン金利の急激な上昇と相まってトレンドは明確に下方屈折。この指標の先行性に鑑みると、実際の中古販売件数は向こう2ヶ月に大幅な減少が予想される。

中古住宅販売件数・成約指数
中古住宅販売件数・成約指数

注目ポイント

  • アトランタ連銀が算出・公表するシャドーFFレートは2月に+0.2%となった。この指標は資産購入の緩和効果をFFレートに換算したもので、金融環境を体感的に推し量るのに有用である。飽くまで目安に過ぎないとはいえ、2021年3月に記録した▲2.0%を起点にすると、2021年11月開始のテーパリングを経て(2022年2月末時点までに)2%pt超のFF金利引き上げが実施されたことになる。この間、金融市場では米長期金利が上昇し、株価指数はNASDAQを中心に下落、日本株も巻き込まれた。

シャドーFF金利・FF金利
シャドーFF金利・FF金利

  • 3月FOMCでは毎回FOMCにおける利上げ計画が示されたばかりだが、直近ではパウエル議長を含む中枢メンバーが50bpの利上げ実施に賛意を示している。3月FOMC通過後にタカ派のウォラー理事、ダドリー・セントルイス連銀総裁が50bpの利上げを主張し、それにパウエル議長とウィリアムズ・NY連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁が追随。またハト派のデイリー・サンフランシスコ連銀総裁とエバンス・シカゴ連銀総裁も50bpの利上げに「前向き」あるいは「オープンマインド」な姿勢を示しており、筆者の知る限り50bpの利上げに否定的な見解を示したFED高官はこれまでのところいない。日本の大型連休中に開催される5月4日のFOMCは50bpの利上げとQT開始が同時決定される可能性が高まっており、歴史的とも言える引き締めイベントになると予想される。  
  • そうしたなか、金融市場の利上げ織り込み度合いは一段と進み、年内利上げ回数(25bp換算)は8回超、インプライド政策金利は2.4%近傍へと上昇した。これは5月以降も複数回のFOMCで50bpの利上げがあることを意識した水準である。こうした見通しが成立する下で株式市場に資金が還流し、一時期は崩壊が危惧された社債市場が安定感を強めていることは何とも心強いが同時に不気味な印象を受ける。  
  • 株式市場に対するひとつの「凶兆」として5年10年の長短金利差に注目したい。この年限間は3月21日に逆イールドとなった。前回の引き締め局面を通じて順イールドが維持されていたこの年限間が、初回利上げとほぼ同時に逆イールド化したことの意味は大きいように思える。一般論に従えば、逆イールドは金融引き締め局面(≒景気拡大局面)の後半に発生する現象と考えられるが、今回は初回利上げと同時(一部の年限間は利上げ前)に発生しており、このことは債券市場参加者の抱く景気オーバーキル懸念が強いことを物語っている。株式市場はそうしたシグナルを過小評価しているようにみえる。

米国 長短金利差(5年10年)
米国 長短金利差(5年10年)

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。