自立・持続を志向するシニアの住環境

~若いシニア世代は子世代との同・近居より自立・持続可能性を志向~

北村 安樹子

目次

1.現在のシニア世代が重視する住まいや地域環境

一般に、高齢になったとき、子や孫がすぐ近くに住んでいることは、親にとって大きな安心感につながるとされる。その理由は、虚弱化した場合に親の側が助けを求められると考えられているからだ。一方で、収入をともなう仕事からリタイアしたり、孫が生まれて以降も、近くに住んでいれば親世代から子世代に必要な支援を提供できる、との考えをもつシニア世代も多く、子世代にとって助けになる場合もあるだろう。

内閣府が行ったアンケート調査によれば、現在65歳以上の男女が住まいや地域の環境について重視することとしてもっとも多く挙げたのは「医療や介護サービスなどが受けやすいこと」であった(図表1)。回答者全体では、「駅や商店街が近く、移動や買い物が便利にできること」「手すりが取り付けてある、床の段差が取り除かれているなど、高齢者向けに設計されていること」などがこれに続いている。医療・介護を必要としたり、将来そのような事態が生じた場合に、施設や自宅でサービスを受けやすいこと、自宅で自立して生活するための環境を重視する人が多くなっている。病気やけがをしたり、虚弱化しても、できるだけ自立した生活をおくれる生活環境を重視する人が多いと考えられる。

図表1
図表1

2.子どもとの同・近居の重視度

一方、子どもがいる人の回答をみると、「子どもや孫などと一緒に住むこと、または近くに住めること」を重視する人の割合は、先の医療・介護の利用環境や生活の利便性・自由度等にかかわる項目に比べると低い。災害・犯罪の不安から身を守れることや静かな環境、安全に移動・外出できる環境、プライバシーなどを重視する人も多く、住まいや地域の環境として、子世代との同・近居を挙げる人はそれらほど多くない。また、子どもがいる人に、子どもと同居・近居をしたいかどうかの考えを直接たずねた結果をみると、もっとも多く挙げられたのは「同居ではなく近居したい」で、「同居したい、同居を続けたい」と答えた人を上回った(図表2)。

85歳以上では約4割が同居ないし同居の継続を希望している一方、60代後半や70代前半では「同居ではなく近居したい」「同居か近居のどちらかをしたい」と答えた人が多い。実際には若いシニア世代で子どもと同居している人は少ない。また、「同居か近居のどちらかをしたい」と答えた人には同居を希望する人も含まれるが、現状、若いシニア世代では、同居よりも近居を希望する人が多くなっている(注1)。

個人差はあるものの、現在、高齢のシニア世代には、子どもとの同居生活や子世帯との物理的な距離の近さ、対面でのコミュニケーション等に安心感をもつ人が多いと考えられる。一方、健康な人が多い若いシニア世代は、移動に支障がないこともあることに加え、情報通信機器等を介したコミュニケーションや各種手続き等にも支障がないなどにより、同居や近居にそれほどこだわらないという人も多いといえる。年齢や世代によって往来に必要な時間・労力などの感じ方が異なり、若いシニア世代のほうが物理的な距離があっても近さを感じやすいこともあり、同居よりも互いのライフスタイルを尊重しやすい近居のほうが良いと感じる人も多いのではないか。

図表2
図表2

3.同・近居のメリットは、ちょっとした手助けの「安心感」

では、子どもと同居・近居したいと答えた人は、どのようなメリットがあると考えているのか。

回答結果をみると、「ちょっとした手助けが必要な場合に安心して過ごせる」を挙げた人が9割近くを占めてもっとも多い(図表3)。介護保険の利用や高齢期の暮らしを支える多様な商品・サービス、自助による経済的備え等の広がりを受けて、生活の自立度が低下した場合も、家族だけに負担をかけず外部サービスを利用したいと考える人が多いからだろう。

一方、「自立した生活ができなくなった場合に世話をしてもらえる」を挙げた人も4割強を占め、85歳以上の人が特に多く挙げている。実際に家族の世話や見守りを得ながら生活していたり、同・近居すれば将来そのような支援を得やすいと思う人が多いことなども、このような年代差に影響しているのかもしれない。

他方、「子や孫の世話ができる」「子や孫の経済的な援助ができる」など、シニア側から子世代への支援提供をメリットとして挙げる人も1割強~3割弱を占める。このような回答は、現状では年齢が若いシニア世代や、有職のシニア世代、世帯収入の水準が比較的高いシニア世代等で多い傾向にある(図表省略)。シニア世代の経済状況には個人差が大きいが、収入や資産があることで、同・近居する子世代に援助や手助けを行えたり、そのような関係を同・近居のメリットと感じるケースもあるのだろう。

図表3
図表3

4.シニアの多くは、生活の自立・持続を可能にする住環境を重視 ~子との同・近居では、頼りすぎない距離感が重要に~

現在のシニア世代には、住まいや地域の環境に関し、医療・介護環境や移動・買い物の利便性、自宅内での生活の安全性などを重視する人が多い。このような環境が自身の自立した生活の持続性を高めるとともに、子どもがいる場合には、子世代の生き方や暮らしを尊重することにつながるからだ。

一方で、子どもがいるシニア世代では、子どもとの同・近居に関し、若いシニア世代を中心に近居を希望する人が多く、必要なときには手助けを頼れる安心感をそのメリットと考える人が多い。ただ、現実の親子の同・近居は、それぞれの経済状況をはじめ、仕事の都合や祖父母世代の介護など、多くの要因がかかわるなかで選択される。

子世代との同・近居をシニア世代の視点で考える場合、子世代の手助けを頼りすぎることなく互いの自立した生活を重視していく姿勢が求められる。たとえば、健康面に関する家族の気づかいで、病気やその重度化等を予防したり、安定した体調を維持できていても、そのことに気づいていない人はいるだろう。同・近居の場合を含め、ふだんはあまり意識することのない家族間の助け合いを改めて意識してみることや、それらを頼らない場合の対処を考えていくことも、自立した生活や安心感につながるのではないか。


【注釈】

  1. 「不明・無回答」を除いて再集計した場合も、全体では「同居ではなく近居したい」がもっとも多くなるが、高年齢者を中心に「不明・無回答」が多いことなどから、解釈には留意が必要。

北村 安樹子


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