成人子と親の経済的関係の行方

~親は「自立型」「子支援型」の関係をどう想定するか~

北村 安樹子

目次

1.子の成人後も続く親子の経済的関係

配偶者のいる女性へのアンケート調査によると、子が成人して以降も、親子の間には様々な形で経済的関係が続いている。前稿でみたように(注1)、たとえば未婚の息子・娘に対しては、同居の場合で7割強から8割弱、近居の場合で6割弱から7割強、遠居の場合で7割弱から8割弱の母親が、様々な形でお金を使っている(図表1)。

子が結婚している場合、母親が子や孫のためにお金を使った割合はさらに高く、息子・娘とも8割を超える。子が成人し、結婚や別居などを経験して以降も、親の多くが子や孫のためにお金を使っている様子があらためて確認される。

図表
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2.親子の経済的関係の多様なタイプ

一方、配偶者のいる女性が成人した子からお金や物品を受け取った割合は、自身が子や孫のためにお金を使った割合に比べると低く、受け取った金額も大幅に少ない(図表2)。たとえば、同居する息子・娘や遠居する娘には、年間12万円以上のお金を使った母親が4割前後、近居の場合も2割程度はみられるが、子から受け取った金額が「10万円以上」のケースは同居の場合で2割強、近居・遠居では1割に満たない。

データには学生なども含まれ、金額の位置づけや分布などの詳細もわからないため解釈には留意が必要だが、子が成人して以降の経済的関係として比較的多いのは、親が子や孫のために使うお金が、子から受け取る金額を上回る「子支援型」か、互いに支援を行わない「自立型」であることが示唆される(注2)。このように、過去1年間にお金を使った経験やその金額でみた場合、20~40代の子の支援が親を上回るケースは少ないと考えられる。一方、家事や病気の時の世話などの物理的な支援や、情報・精神面の支援については、親の加齢にともなって、親が子を頼りにする場面が増えて、子の支援が親の支援を上回ることもあるだろう。

図表
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3.親は、成人期以降の子との関係をどう想定すべきか

図表1、2は、配偶者のいる女性とその20~49歳の子に関する集計であるが、最も年長の40代の子の母親世代が第1子を出産した平均年齢は20代半ばであった(図表3)。子の進路選択などにもよるが、晩産化は第1子が経済的に自立する時期を、これまでより遅い年齢で迎える親を増やすことになるだろう。

さらに晩産化は、親のリタイア、介護、死別といったことを、より若い年齢で経験する子を増やすことになる。就職や結婚で親元を離れる前に親がリタイアしたり、出産・子育て期に助ける親が70代になっている人もいるだろう。また、働き盛りのミドル期に、親の介護に向き合わなければならない人もいる。

そのため親世代には、子の経済的な自立をこれまでの世代より早くから意識的に促すことが求められる。逆に、自身が子を頼る姿勢は、精神面や手助けの面を含め控えた方がよいのではないか。

もちろん、子が成人して以降の親子関係には多様なあり方がある。だが親世代には、経済面に加え、世話・手助け、情報、精神面のいずれに関しても、まずは自身の生活の自立が求められるのではないか。これからの時代、リタイアの時期や働き方が多様化することで、60歳以降も働き続ける人が増える。親世代には、各々の家計やライフプランに応じて、仕事を続けたりリタイア後に向けた資産形成を継続するなど、老後生活の持続可能性を高めるための取組みが必要だ。

そのような自身の経済的・精神的自立を前提とした上で、子への支援について改めて考えるという姿勢が大切だろう。

図表
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【注釈】

  1. 北村安樹子「親との会話が少ない遠居の既婚男性~限られた機会を意識したコミュニケーションを~」第一生命経済研究所、2024年8月

  2. 親子の経済的関係には今回の分類による「子支援型」や「自立型」以外にも多様な関係が想定される。なお、親が子や孫のために使ったお金(図表1)と、親が子から受け取った物品やお金(図表2)に関する設問の選択肢は異なり、後者の方が少額で小刻みのカテゴリーで設計されている。

北村 安樹子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。