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2024.06.25
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親目線でみる子の進路選択
~家計・仕事・生活時間再編の前向きな節目に~
北村 安樹子
1.高校生が保護者とよく話すこと・あまり話さないこと
高校生というと、学校や友人との予定で忙しく、保護者との会話の機会は限られるのでは、というイメージをもつ人もいるかもしれない。
しかしながら、全国の高校1・2年生を対象に行われたアンケート調査によると、男子では4割弱、女子では6割弱が「学校での出来事」に関し保護者と「よく話す」と答えている(図表1)。「ときどき話す」を合わせると男子では8割、女子では9割を占める。高校生といっても、「学校での出来事」に関しては保護者と比較的よく話している。
また、「高校卒業後の進路」や「将来の夢」に関しては、話す(「よく話す」「ときどき話す」)と答えた生徒が6~7割前後を占めるものの、「よく話す」と答えた生徒は男子で2割弱、女子でも3割弱にとどまっている。高校1・2年生では、まだ卒業後のことなど具体的には考えが至っていないケースも多く、親子の日常会話の話題として「学校での出来事」の方が頻度が高くなるのは自然なことだろう。このため「親の仕事内容」を含め、将来や進路の話について親子で話すこと自体はあるものの、「学校での出来事」に比べると話す頻度が少ない傾向にあるといえる(注1)。
また、これらに比べ「悩み事(進路以外)」や「お小遣いの使い方」「万が一のこと(病気・ケガ・事故等)に備えるための手段(注2)」「今の家計状況」に関しては話すと答えた生徒がかなり少ない。進路以外の悩みやお金の使い方、健康面や経済面の危機に関する話題は、話す機会が限られるか、話しにくいテーマなのだろう。

2.男子より女子、父親より母親との間で多い会話
このように、「進路」や「将来の夢」などのテーマは家庭によって話す機会に差がみられ、そうした傾向は男女の双方に共通している。他方、「学校での出来事」をはじめ、「進路」や「将来の夢」を含む多くのテーマにおいて、親との会話は男子より女子の方が多い傾向にある。
また、父親・母親別に親子の会話の頻度を集計した別の調査結果では、高校生の親との会話の頻度は、父親を母親が上回っている(注3)。個人差や家庭による違いはあるものの、現状では、男子より女子、父親より母親との間の方が、会話の「頻度」という点では多い傾向にある。
ただ、高校生の時期は、学校生活の予定や、進学に向けた学習、アルバイトなどで忙しく、通学等の移動に時間を要する子どもも多い。友人と過ごす時間や、一人で過ごす時間が増えて、子どもにとって親と話す機会の優先順位は、娘・息子にかかわらず必ずしも高くはなくなってくる。親もまた、仕事が忙しくなったり、職場で重責を担う立場になるなどキャリア上の転機を迎える人が、父親・母親の双方で増えている。コミュニケーションの機会が多かった娘であっても、親と一緒に過ごしたり、ゆっくり話したりする時間をとりにくいライフステージを迎える家庭が多いのだろう。
3.子の進路選択を家計・仕事・生活時間再編の前向きな節目に
子どもの高校卒業後の進路選択については、ふだんは子どもとの会話が少ない父親でも話す機会が増えるだろう。進学や1人暮らしに必要となる費用、家庭の資金面の備えや経済状況について、家族ではじめて話し合う機会になることもある。成年年齢が18歳に引き下げられたなか、子どもが働いて自分の収入を得たり、進学や就職で親元を離れるといった経済面・生活面の変化を経験する家庭もあり、子どもが自身のひとり立ちについて考える機会になるだろう。
つまり親にとっても、子の進路選択は、子どもの将来の夢を応援していくための資金繰りや、子の経済面・生活面の自立について考える大きな節目となる。子どもが進学や留学を選択するケースでは、資産形成の見直しや、転職や副業などで収入を増やすことが必要な親もいるだろう。一方、子どもが就職するケースでは、子の生活が安定するか不安な思いで見守る親は多いものの、家計の面では1つの節目を迎える。いずれの場合も、新しい生活に向けて資金計画を練り直すことが求められる。
また、経済面の見通しとともに、親が自身の人生後半期に向けて、中長期的な人生設計の視点をもつことも重要だ。仕事や生活資金にある程度の見通しが立った親のなかには、子どもの自立を見守りながら、次のライフステージを見据えて、仕事だけではないライフワークを考え始める人もいるだろう。他者のためにできることや、自分のための時間のよりよい過ごし方について考えていくことがあらためて求められる。そのなかには、旧友や子育て、仕事などを通じて得たつながりを大切に積み重ねていくことも含まれる。
子どもが親元を離れるケースでは、子どもとの暮らしの残り時間で「子離れ」に備えることも必要だろう。ただ、スマホがあればいつでもつながれる現代では、子どもが進学・就職を迎えたり、親元を物理的に離れることがコミュニケーションや支援の節目にならないこともある。そのようなケースを含め、子どものひとり立ちを程よい距離感で見守りながら、親も新しい生活のスタートを前向きな節目にしていく「子離れ」を少しずつ始めていくことが求められる。
【注釈】
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金融広報中央委員会が行った別の調査では親との会話の頻度を客観的な指標でたずねている(「15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査2023年」2024年1月26日)。その結果によれば、「自分のつきたい仕事や保護者の仕事のこと」「将来の夢や進路のこと」について親と週に1回以上の頻度で話していると答えた高校生は、この調査で「よく話す」と答えた割合よりもさらに限定的な範囲にとどまっている。話す頻度に対する生徒の捉え方や、それらへの評価にもよるが、調査対象が1年生で、卒業後がまだ先のことだと感じられることも影響しているのではないか。
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調査票には「社会保険(健康保険などの国の保障)や民間保険(生命保険・損害保険)」と記載。
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東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査2022」によると、高校生(1~3年生)が「友だちのこと」「勉強や成績のこと」「将来や進路のこと」「社会のニュース」について親と話す(「よく話す」「ときどき話す」の合計)割合は、いずれも父親より母親で高い傾向にある(木村治生編『「子どもの生活と学びに関する親子調査2022」ダイジェスト版』株式会社ベネッセコーポレーション ベネッセ教育総合研究所、2023年4月11日)
北村 安樹子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。