Well-being LDの視点『「仕事」と「学び」のライフデザイン』

北村 安樹子

目次

60代以降の「学び」の現状

シニア世代の「学び」というと、若い頃には行えなかった各種の学習や、健康づくり、趣味・余暇などの活動を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかしながら、内閣府が2022年7月に行った調査によれば、この1年間に「仕事に必要な知識・技能や資格に関すること」を学んだ人は、60代前半で半数近く、60代後半で3割近くを占める(資料1)。仕事にかかわる学びを行うことは、いまや70代にもみられるライフスタイルになっており、70代でも1~2割前後が、このような学びを行っている。

この背景には、60代以降も収入をともなう仕事をする人が増えていることが関連しているだろう。現在、60代後半を迎えた人では、半数以上が収入をともなう仕事に就いており、この10年で大きく増加した。その多くが、生計維持や老後の生活資金のために働く人だと考えられる。自身や家族の今後の生活資金の見通しを少しでも安心できるものにしたり、それまでの多様な経験や人脈などを活かして、所属する組織の発展や同僚・後輩の活躍のために仕事を続ける人も多いだろう。

図表
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60代以降の「学び」の理由の多様性

このような状況は、60代以降の人が行う「学び」の位置づけや理由の多様性にもかかわる。資料1のように、60代前半の人では学びの内容として、「仕事に必要な知識・技能や資格に関すること」が最も多く挙げられている。また、学びの理由をたずねた別の設問でも「現在または当時の仕事において必要性を感じたため」が最も多く挙げられている(資料省略)。

これに対して、多くの人が公的年金を受給し始める60代後半以降の人では、学びの内容として「健康やスポーツに関すること」を挙げる人が仕事にかかわることを大きく上回り、趣味・余暇や教養など多様な内容の学びに取り組む人が仕事にかかわることと同程度以上にみられる。学びの理由でも、「健康の維持・増進のため」や「家庭や日常生活に生かすため」「人生を豊かにするため」といった多様な理由が、仕事上の必要性を上回っている(資料省略)。

現在のシニア世代の後悔

このようななか60代以上の男女を対象にした別の調査では、人生にかかわる様々な事柄のうち「もっと学べばよかった(以下「学び」)」という点を後悔する人が6割近くを占めて、最も多いことが明らかになった(資料2)。「もっと貯蓄を行えばよかった(以下「貯蓄」)」が僅差でこれに続き、「もっと運動をしておけばよかった」「もっと家族との時間を大切にすればよかった」「もっと生活習慣を見直せばよかった」「もっと食生活を気づかえばよかった」などを挙げた人が3~4割前後でこれらに続いている。

ただ、「学び」と「貯蓄」に関しては、「そう思う」とした人が約2割を占め、他に比べより強く後悔している人が多いことが示唆される。これらの結果を後続世代がそのまま参考にできるとは限らない。しかしながら、60代以上の「学び」が多様化するなかで、「学び」や「貯蓄」に後悔を感じている人が多かったことは、いくつかの点で考えさせられる結果といえるのではないだろうか。

図表
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「学び」のライフデザインの2つの視点

その1つが、社会に出て以降も社会環境の変化に適応し、社会に求められる人材であり続けるための学びを、個々人が積み重ねていくことの重要性だ。社会環境が大きく変化するなか、社会人の学び直しや事業戦略としてのリスキリングが注目されて久しい。仕事や職場を通じた学びの機会と、個人が行う学びの両輪で、古い知識・情報を更新し、スキルを磨き続けることが必要になっている。「もっと学べばよかった」と後悔している人のなかには、このような学びが十分ではなかったと感じている人も含まれるのではないか。他方、仕事に直結する以外の学びに向き合う機会をもたなかった人生を後悔する人もいるだろう。60代以降の学びでは双方の視点を意識していくことも重要ではないか。

もう1つは、「仕事」の概念や「学び」の時間の捉え方にかかわることだ。学びの内容にもよるが、ライフデザインに学びの機会をどう位置づけるかは、自身のキャリアデザインや余暇・生きがいといった観点から検討されることが多いだろう。だが60代以降の学びでは、自身の仕事の可能性や心身の健康につながるだけでなく、周囲の人や社会に役立つ活動にもなりうるという視点が重要だ。学びのテーマ・目的を広げ、それらをどう活かすのかを考えていくことも、豊かな学びの視点といえるだろう。

北村 安樹子


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