- HOME
- レポート一覧
- 第一ライフ研レポート
- エコノミスト大胆予測、23年度はこうなる!『2023年の景気上振れ要因』(2023年4月号)
わざわざ好材料を集めている訳ではないが、年初から景気に対して上振れする要因が相次いでいる。今、注目されているのは春闘である。
労働団体の連合が発表した2023年の春闘交渉で労働組合が経営者側に求めた要求額は前年比4.49%になった。前年の要求は2.97%だったので、大幅な上積みである。前年の実績、つまり回答額は、要求額の7割だったから、それを2023年の要求額に当てはめると、3.1%の上昇率になる。2022年の回答額は2.07%だったので、これが3.1%へと+1%のベースアップ率の上積みという計算だ。
この賃上げの加速は、春先以降の消費拡大に寄与することが期待される。これまでコロナ禍では、家計所得の伸びが鈍いこともさることながら、所得の中から消費支出に回っていく割合である消費性向がそれ以前よりも低下していた。この状況は、消費マインドが萎縮していることを反映している。消費マインドを大きく改善させる妙案はなかなか見つからないが、大幅な賃上げによって所得の見通しが明るくなれば、それがいくらかマインドの好転に結びつくのではないかと期待される。
コロナ分類の見直し
マインド好転を促す施策は、コロナ分類の見直しも挙げられる。5月8日から政府はコロナの感染症法上の分類を2類相当から5類へと見直す。それによって屋内でのマスク着用を原則なしにする。マスク着用なしの活動は3月から拡大された。5月からは範囲が広げられる。
政府はそうした見直しを契機にして経済活動をコロナ以前並みに戻そうとしている。人々の萎縮した心理を好転させられるかどうかが試される。サービス消費の分野では消費者の慎重姿勢が根強く残っている。お酒を提供する飲食店の利用や、フィットネス・ジムやボーリング場などスポーツ施設利用も戻りが鈍い。
マスク着用を原則なしにすることで、そうした根強く残っている慎重さを変えることができればよいと狙っているのだろう。コロナ禍が始まってから、「アフター・コロナが到来すれば、消費がV字型回復する」と言われた時期があった。マインドの萎縮で貯め込まれていた貯蓄が一気に取り崩されるという思惑を背景にしていた。コロナ分類の見直しによって、そうした以前の期待感がにわかに実現するとは思えないが、多かれ少なかれ、消費拡大に流れが傾いていく可能性はある。こうした消費拡大は、これまで価格転嫁がしにくかったサービス分野での値上げを促していくと考えられる。価格転嫁が進めば、中小企業であっても賃上げをするための原資を確保できるようになるだろう。
インバウンドの復活
春先以降に消費が上振れるとすれば、訪日外国人の増加も期待される。最近、都心部には早くも野外でマスクを着用していない外国人を本当に多く見かけるようになった。
コロナ前に訪日外国人の約3割を占めていた中国人が戻ってくれば、インバウンド消費の嵩上げは一気に進むだろう。中国は、2月に海外への団体旅行を解禁した。その相手国の中に日本は含まれていないが、年内のどこかで日本への団体旅行も認められると予想される。2兆円近くとみられるインバウンド消費が元に戻ってくれば、サービス消費は増加する。サービス分野での値上げもより容易になっていく。
このコロナの3年間には、日本と海外の物価格差が広がった。欧米やアジアでは、急速にインフレが進み、同時に賃金も上がった。その変化に円安も加わって、外国人にとって日本の物価は割安なものに感じられるだろう。2022年に価格転嫁に苦しんでいたサービス分野の企業も、値上げを実現する突破口としてインバウンド消費に注目することだろう。
熊野 英生
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。