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- 時評『“人間”の時代へ』
今年に入り、AIの凄まじい進化を実感するサービスの出現が話題になっている。
単純な検索エンジンを超えて、テキスト作成をまるで人間のように書き進める会話型AIサービスが米国IT大手から競うように出されている。筆者も実際に使用してみたが、「人生の目的は何か?」とか「well-beingについて論ぜよ」など、かなり難解な質問や解説要求に、端的な回答を提示するのにはやはり驚いてしまう。課題次第ではまだまだ誤返答もあり技術的には発展途上のようだが、テキスト作成以外にも、画像・映像や楽曲作成など人間特有の創造的分野にも、生成系AIといわれるAI技術は広まりつつあり、今後急速に進化していくことが予想されている(当研究所の柏村レポート23.01.25、同02.01もご覧頂きたい)。
当社の研究員との会話でも、いずれ調査研究・分析とレポート作成、挿入する各種グラフやイラストなど、研究員の価値創造の幾つかの部分が代替されて、「研究員の存在意義はどうなってしまうのだろう」との真面目な危惧に触れたりする。洗練されたAIが伴走するには、一段の技術進歩と合わせて法規制なども整備が必要であるが、今後も飛躍的な進歩は間違いないと思われる。
今後のAIの進化と一般社会への浸透は、改めて人間が担う仕事や価値創造の分野について再定義を迫るであろう。AI登場初期には、やがて仕事の相当部分はAIに代替され、高度な価値創造を担える人間とAI同等か以下の処理を担うだけの人間に分化するのではないかとの議論も見られたが、具体的なAI技術やサービスが数多く普及し始めた現在では、人間が独立した存在として、道具であるAIを使いこなす、「人間とデジタルの融和した世界」の確立という、新たな人間社会の在り方に、論点が移ってきたと感じている。
企業経営においても、生成系AIに代表される先端技術の職場への導入が進むにつれ、一段と人財に期待する価値創造のありようが変化していくものと見られる。
元来、企業経営では、激変する事業環境の下で、持続的な企業価値の向上を実現すべく絶えざる事業ポートの調整が不可欠であるが、これに連動した人財ポートの構築と、テクノロジーと調和して新たな価値を創造できる個々の人財の育成・確保が、成長の成否を分ける要素となろう。「人的資本経営」の重要性は、益々ハイライトされていくと思われる。
企業の人財戦略は、従来のPL的視点から、BS的視点、換言すれば、借り方に計上される人財投資額と、貸方にある人財が生み出す将来価値の評価を、事業戦略の方向性とマッチさせるべく不断の調整(リスキリングや補充など)を図りながら如何に最大化するか、への発想の転換が鍵とも言える。
人生100年時代の到来で社会保障制度が限界を迎える中、働く人々のキャリア形成への価値観は大きく変化している。企業側としても従来の福利厚生制度的発想から、自社の成長に適合した従業員個々人のエンゲージメントの向上、職場でのパーパスの追求とwell-being向上、職務遂行上のテックを含めたスキルセット確保の支援などへの政策転換が必要である。
長く続いた機械化・自動化の流れから、AI技術の活用による新たな“人間能力拡張”の時代へ向け、逆説的ではあるが今後は一段と“人間の価値”にフォーカスがなされていく局面と感じている。
当研究所もこの4月から企業の従業員様向けに各種セミナーを提供させて頂く部署の名称変更を実施した。「ライフデザインセミナー事業部」改め「人財開発コンサルティング事業部」。プロダクトアウト的発想から企業様の個別戦略に連動した人財開発の提案へ、ささやかなチャレンジの第一歩である。企業の皆様と一緒にご相談させて頂く機会をお待ちしています。
最後に、以上レポートは、会話型AIではなく筆者が執筆したものです。
寺本 秀雄
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。