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2026.08.17
運用戦略・運用商品
社会保障・保険・年金
GPIF、国内債券を大きく買い越すも運用姿勢は変わらず?
~2026年4~6月、5兆円超買い越しの可能性~
奥田 宏二
1. 2026年4~6月の運用実績
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2026年8月7日に公表した同年4~6月の運用実績は収益率が8.2%になり、6月末の運用資産額は317兆7,596億円で、初めて300兆円を超えた。4~6月は、国内の長期金利が上昇(債券価格は下落)する一方、株価は大きく上昇、為替は円安傾向だった。こうした市場環境を反映し、資産別の収益率は国内債券がマイナス1.11%、外国債券が3.13%、国内株式が14.48%、外国株式が16.94%となった。
GPIFを巡り、片山さつき財務・金融相が7月、「日本の金融資産にさらなる投資をしていただくという方向で後押しをする方策を追求したい」と発言した。長期金利の上昇が進んでいたなかだったため、今回の運用実績で特に注目されたのが国内債券の動向だ。
国内債券(注1)が年金積立金全体に占める割合は、2026年6月末時点で25.59%と3月末(26.91%)から低下した。一見すると、片山財務・金融相のいう「日本の金融資産にさらなる投資」とは逆のようにみえる。しかし、筆者の推計ではGPIFは4~6月に国内債券を5兆円超買い越した可能性がある。
2. 国内債券割合の変動は年金特会が影響
GPIFの基本ポートフォリオは、国内外の株式と債券にそれぞれ25%ずつ投資する。一定の乖離許容幅の範囲で各資産の変動を認めており、国内債券の場合、±6%だ。市場変動によって資産構成が基本ポートフォリオから乖離するため、GPIFは必要に応じてリバランスを行う。基本的には、比率が高まった資産を売り、低下した資産を買うことになる。
現行基準で比較できる2020年度以降、四半期ごとに年金積立金全体に占める国内債券比率の変化をみると、例年9月末と3月末に高く、6月末と12月末に低いという動きが繰り返されている(資料1、左図)。四半期ごとの季節性があるようにみえるが、この規則的な動きがそのままGPIFの売買動向を示しているわけではない。年金特別会計で管理する積立金の影響が大きい(注2)。
年金特別会計で管理する積立金は、保険料収入と年金給付の支払い時点のずれなどに伴う資金繰りに備え、GPIFとは別に管理されている。この年金特別会計で管理する積立金について、2020年度以降の各四半期末残高を確認すると、3月末は平均6.3兆円と厚く、12月末は平均1.6兆円で最も薄く、国内債券比率の高低と対応している。
そこで、年金特別会計で管理する積立金の各期末残高を国内債券および年金積立金全体から除き、GPIFの運用資産に対する割合として計算し直した。2020~2025年度の四半期別平均は6月末24.82%、9月末25.05%、12月末24.67%、3月末24.71%となる。振幅は0.38ポイントに縮む(資料1右図)。四半期ごとの季節性にみえる動きは、リバランスの影響というよりも、年金特別会計で管理する積立金の残高循環をかなりの部分で映したものと考えられる。つまり、年金積立金全体で国内債券比率の動向を追うと、GPIFの売買動向を取り違える可能性がある。

3. 国内債券の買越額は5兆円を超えた可能性
ここから2026年4~6月に戻り、国内債券の買越額を試算する。国内債券比率の変化には、GPIFによる資産の売買だけでなく、相場の動きや利子・配当による運用損益が影響する。4~6月は、前述した通り株式が大きく上昇する一方、国内債券はマイナスになった。
そこで、4~6月に国内債券や株式の持ち高を動かさなかったと仮定し、相場の動きや利子・配当による運用損益だけで、国内債券比率がどこまで低下していたかを試算した。この場合、6月末の国内債券比率は23%台前半まで低下する計算になる(注3)。実際の国内債券比率は、この試算を大きく上回った。GPIFは4~6月に国内債券をリバランスで相当規模買い越したと考えられる。
では、実際にどの程度の資金が国内債券に振り向けられたのか。3月末と6月末の国内債券残高から、4~6月の運用損益による増減を除いて試算すると、国内債券への資金配分は約5.7兆円となる(注4)。
同じ方法で2021年度以降の4~6月を計算すると、2026年度の約5.7兆円が最大となった(注5)。2021~2025年度の平均は約2.5兆円で、今回はその2倍を超える。これまで最も大きかった2024年度4~6月の約3.7兆円も上回った。期首の運用資産額に対する比率でみても、2026年度が最も大きい。
ただ、国内債券のみを買っていたわけではない。同じ方法で4資産への資金配分を試算すると、外国債券にも約3.0兆円が振り向けられた。債券全体では約8.8兆円の資金配分となる。一方、株式は売却されており、国内株式と外国株式を合わせた売却額は約8.7兆円と試算される。4資産全体でみると、基本ポートフォリオに近づけるべくリバランスが行われたとみなすべきだろう(資料2)。なお、この試算では年金特別会計で管理する積立金を除き、GPIFの運用資産ベースで計算している。

4. 4~6月は運用姿勢に変化なしか
今回扱った2026年4~6月の運用成績は片山財務・金融相の発言以前の期間であるものの、リバランスに伴い、国内債券を大量に買い越した可能性があることが分かった。ただし、基本ポートフォリオに常に近づける運用姿勢は従来通りで、大きな変化を読み取ることはできない。株高と国内債券安によって広がった基本ポートフォリオからの乖離を戻す過程で、国内債券の買越額が大きくなったと考えられる。こうした運用姿勢に変化が出てくるか、第2四半期(7~9月)の動向がより注目されよう。
【注釈】
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GPIFの「国内債券」には為替ヘッジ付き外国債券と円建て短期資産が含まれる。
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GPIFの公表資料によると、年金積立金全体には年金特別会計で管理する積立金が含まれ、2026年3月末では約6.2兆円、6月末では約2.6兆円だった。
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2026年3月末のGPIFの運用資産について、4~6月に各資産の持ち高を動かさなかったと仮定し、GPIFが公表する資産別収益率を反映して6月末の構成割合を算出した。2026年3月末の運用資産額は293兆6,437億円、国内債券は74兆4,973億円。4~6月の収益率は国内債券マイナス1.11%、外国債券3.13%、国内株式14.48%、外国株式16.94%だった。この場合の国内債券比率は23.16%。同じ基準でみた実際の2026年6月末の国内債券比率は24.98%で、試算を1.82ポイント上回った。
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各資産への資金配分額は、GPIFの運用資産ベースで、期末残高から期首残高と期間中の収益額を差し引いて算出した。年金特別会計で管理する積立金は含まない。このため、実際の現物取引の純購入額とは必ずしも一致しない。また、GPIFの「国内債券」には為替ヘッジ付き外国債券と円建て短期資産が含まれるため、本稿の国内債券への資金配分額もこれらを含む。
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GPIFは2023年度以降、運用資産額等を約定日ベースで算出し、先物取引の想定元本等を加味している。2021年度と2022年度にはこの扱いが入っていないため、本稿の2021年度以降の比較には算出基準の違いがある。なお、本稿の方法を年度ベースに当てはめた推計値は、GPIFが公表する国内債券の配分・回収額との差が2024年度、2025年度とも1%未満にとどまる。
【参考文献】
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財務省(2026)「片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(2026年7月10日)」
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GPIF「各年度の運用状況(四半期運用状況・業務概況書)」
奥田 宏二
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。