米国 トランプ関税の影響は徐々に顕在化(8月CPI)

~CPIは前年比+2.9%(7月+2.7%)、財コアが+1.5%(同+1.2%)に上昇~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年8月の消費者物価(総合CPI)は、前月比+0.4%(前月同+0.2%)と上昇し、市場予想中央値同+0.3%(筆者予想同+0.3%)を上回った。エネルギー・食品を除く消費者物価(コアCPI)が同+0.3%(同+0.3%)と市場予想中央値(筆者予想同+0.3%)と一致した。一方、食品は、ミルク等が下落したが、穀物・ベーカリー製品、野菜・果物、珈琲、ジュース・同材料等の上昇によって、同+0.5%(同0.0%)と上昇率が高まった。また、エネルギーはガソリン等の上昇を背景に同+0.7%(同▲1.1%)と上昇に転じた。
  • トランプ関税は、4月に25%の自動車関税、10%の相互関税が発動されたうえ、中国からの輸入製品に対して125%の関税が上乗せされた(トランプ2.0での対中関税賦課は計145%)。5月に25%の自動車部品関税が発動された。5月12日に米中がそれぞれ115%の関税引き下げ(14日に引き下げ)や、米国が90日間相互関税の上乗せを行わないことで合意したため、貿易の停止や異常な価格高騰は一旦回避できたが、中国からの輸入製品に対する30%の関税は課されたままとなった。さらに、8月7日に各国・地域ごとに異なる税率の相互関税の上乗せが発動した。
  • このような関税政策のもと、企業の価格転嫁の抑制、駆け込み輸入による在庫増加、駆け込み需要の剥落による値下げ、貿易相手国の輸出価格の引き下げ等の影響でインフレの押し上げが抑制されているが、徐々に影響が顕在化しており、財コアの上昇率が高まっている。今後、在庫の減少、企業の価格転嫁によって、財コア価格の押し上げ圧力が強まっていくと予想される。
  • 金融市場では、8月のCPI統計が概ね市場予想通りだったこと等を受け、FF金利先物の示す9月FOMCで25bpの利下げの可能性が約94%(前日約91%)に上昇し、50bpの利下げの可能性が約6%(前日約9%)に低下した。一方、年末のFF金利の水準は、3.59%と前日の3.62%から低下した。また、2年国債金利、10年国債金利は低下し、ドルは主要通貨に対して弱含んだ(P6)。主要株価指数は上昇し、最高値を更新した。金価格は水準を切り上げた。
  • 金融政策に関して、8月のCPI統計が概ね市場予想通りとなり、物価の上昇圧力が強まっていることが示されたものの、長期の期待インフレ率が安定していることから、FRBは関税による物価上昇は一時的との見方を強めているとみられる。FRBは、労働市場の更なる軟化を防ぐために、9月のFOMCで25bpの利下げを実施すると見込まれる。8月の労働市場は、トランプ関税による不確実性の高まりによって、雇用の増加ペースが減速、労働投入量が鈍化したほか、失業率は職探しを再開した人の増加によって押し上げられたものの、需給バランスの悪化を示すなど、一段と軟化した。
  • コアCPIは、サービスコアが前月比+0.3%(前月同+0.4%)と低下したが、財コアが同+0.3%(同+0.2%)と上昇し、同+0.346%(同+0.322%)と上昇した。サービスコアでは、余暇サービスが下落に転じたほか、レンタカー、電話サービスが下落幅を拡大した。さらに、専門医療、病院・関連サービス、医療保険、自動車保険、その他個人向けサービスが低下し、カーリースは下落を続けた。 財コアでは、衣料品、新車、中古車、アルコール飲料、その他財が上昇した。情報機器は下落幅を縮小した。
  • 前年同月比では、総合が+2.9%(前月+2.7%)と市場予想中央値(筆者予想同+2.9%)と一致したが、上昇した。コアCPIは+3.1%(同+3.1%)とほぼ横ばいとなり、市場予想中央値(筆者予想同+3.1%)と一致したものの、食品が+3.2%(同+2.9%)と上昇したほか、エネルギーが+0.2%(同▲1.6%)と上昇に転じた。
  • コアCPIでは、サービスコアが+3.59%(同+3.64%)と小幅低下したもとで、財コアが+1.5%(同+1.2%)と上昇率を高め、全体で+3.11%(同+3.06%)と上昇した。 -サービスコアでは、レンタカーが下落に転じたうえ、携帯が下落幅を拡大した。また、賃貸料、帰属家賃、病院・関連サービス、医療保険、上下水道・ゴミ収集サービス、自動車保険、余暇サービス、教育関連サービス、その他個人向けサービスが低下した。サービスコアは、低下傾向を辿ってきたものの、賃金上昇の影響を受け易い部門や、住宅関連の高い伸びを背景に、前年比+3.6%と高い上昇率にとどまっている。
  • 財コアでは、医薬品など医療用品、教材が低下したうえ、情報機器が下落幅を縮小した。一方、衣服、娯楽用品が上昇に転じたほか、家庭用耐久品・消耗品、新車、中古車、自動車部品、アルコール飲料、その他財が上昇した。
こちらのレポートについては、PDF形式によるご提供となっております。
右上にある「PDF閲覧のアイコン」をクリックしてご覧下さい。

本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ