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- ここが知りたい『確定拠出年金のキャッチアップ拠出』
確定拠出年金(DC)のキャッチアップ拠出とは、若年期に掛金を十分拠出できなかった人が後からまとまった資金を追加拠出できるようにして、老後の資産形成を支援する制度だ。米国で50歳以上を対象に導入されており、401kでは年8000ドル(2026年時点)を追加拠出できる。報道によると、自民党の資産運用立国議員連盟による新たな政府への提言案では、このキャッチアップ拠出を次期年金制度改革まで検討することが含まれたという。同議連はこれまでNISAやDCの拠出限度額引き上げなどを提言して実現につなげてきた経緯があり、今回も注目度は高い。
キャッチアップ拠出が求められる背景
キャッチアップ拠出が現在の日本で求められる背景として、就職氷河期世代の存在が挙げられる。1993~2005年ころにかけて就職活動を行った氷河期世代は新卒で正社員に就けなかった人や、正社員になった場合でも現在と比べて賃金水準が低いなど厳しい境遇に置かれた人が一定数存在する。その結果、老後の資産づくりを十分にできていない人が前の世代と比べても多いとみられる。こうした人が50歳を超えて収入が一定水準に達し、子育てが一段落するなどにより支出も減った段階でまとまった資金を拠出したいというニーズが考えられる。また、近年はライフコースの多様化が進み、転職などで個人の所得が一時的に変動するケースも珍しくなくなった。月額で一律の掛金とする現行制度は、見直しの時期に来ているといえよう。
キャッチアップ拠出は、厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会でも議論されてきた。2024年12月の議論の整理では「中長期的には、キャッチアップ拠出や生涯拠出限度額といった拠出の仕組みについても、引き続き検討を深めるべきである」とした。いわば「宿題」として同部会に残っている。慎重意見としてあったのは、高所得者優遇になるという点だ。
米国のように50歳以上を対象に新たな追加拠出枠を設定する仕組みはシンプルで分かりやすい。しかし、追加拠出枠を使いきれる人とそうでない人で分かれることから、資金余力のある高所得者に有利な仕組みであるとの批判を招きやすい。
制度導入のポイント
こうした点を踏まえると、新たな拠出枠を創設するよりも拠出限度額まで使いきれなかった分の繰り越しを可能とする仕組みの方が妥当ではないだろうか。就職氷河期世代を念頭に、過去に十分な拠出機会を持てなかった人の資産形成支援という政策目的をより明確に示すことができる。
具体的には、月の拠出限度額と実際の拠出額の差が2万円あった状態が20年間続いた場合、合計480万円分を50歳以降に追加拠出できるといった仕組みが考えられる。この際、単年の拠出上限額や生涯拠出限度額を設定し、税制優遇の恩恵が高所得者に過度に偏らないよう配慮する必要があるだろう。
ライフコースの多様化を考慮すれば、50歳以上という年齢にはこだわらず、例えば5年間は未使用分を繰り越し可能とする仕組みも考えられる。未使用分の繰り越し期間に一定の期限を設けることで、老後の資産づくりを先送りし過ぎるリスクの抑制に寄与するだろう。できる限り公平性を確保しつつ、多くの人の老後資産づくりを後押しする仕組みづくりが重要である。
12月の拠出限度額引き上げの恩恵、広く行き渡らせる効果も期待
2026年12月には改正DCの施行によって拠出限度額が月6.2万円に増える。現行制度から最大で4.2万円の増額となるため、若い世代を中心に上限まで使いきれない人が増えるのは確実だ。未使用分を繰り越せる仕組みを導入すれば、限度額引き上げの恩恵をより広く行き渡らせる効果が期待できるだろう。
奥田 宏二
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。