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マイオピニオン~若手研究員の意見~『バリューベースド・ヘルスケア:量から質への変化の潮流』

田村 洸樹

目次

量から質への変化の潮流

産業革命と高度経済成長によって私たちは物質的豊かさを手に入れました。その一方で、近年は資源の枯渇や環境汚染などの問題が表面化しています。社会における持続可能性の優先度が高まる中、人びとの重視する価値観も量から質へと変化しています。

量よりも質を重視する潮流は、様々な分野で見られます。例えば、ファッション業界では「ファストファッション」と呼ばれる低価格・大量生産・大量消費のビジネスモデルから「スローファッション」と呼ばれる自分に似合う・着心地の良い・長持ちするファッションを選ぶ方向へと消費者の嗜好が変化しています。

医療業界も例外ではなく、医療サービスの量よりも患者にもたらされる価値や成果を重視する「バリューベースド・ヘルスケア(VBHC)」が注目されています。

バリューベースド・ヘルスケアの実現に向けて

VBHC実現の鍵を握るのが報酬体系の変革です。具体的には、従来のFee-for-Service(FFS)モデルからPay-for-Performance(P4P)モデルへの転換が大きな役割を果たします。FFSは、提供された医療サービスの量に応じて報酬を支払うモデルです。P4Pは、患者にもたらされる価値や成果に基づいて報酬を決定するモデルです。

OECDが32ヶ国を調査した結果によると、報酬体系にFFSのみを採用している国は、総合診療で47%、外来診療で56%とされています(資料)。これは、世界的に見るとFFSが今も報酬体系モデルの主流であることを示しています。一方、P4Pのみ、または、FFSとP4Pの両方を採用している国の数は、総合診療で31%、外来診療で32%まで増加しています。

FFSモデルが主流だった日本でも、近年は段階的なP4Pモデルの採用が進んでいます。例えば、DPC(Diagnosis Procedure Combination)と呼ばれる出来高評価と包括評価を組み合わせた新しい医療報酬の制度が一部の分野で導入され始めています。

VBHCの実現は、量から質への転換、つまり、より少ない介入で効果の高いソリューションが評価される医療制度への移行を意味します。医療費や医療関係者などの医療資源を効率よく利用することによって、持続可能な医療システムの構築に寄与することが期待されます。

保険会社に求められる役割の変化

このような医療分野における量から質への変化は、保険会社の役割を大きく変化させるでしょう。

保険会社はこれまで、顧客や患者が望む医療サービスを受けられること(量的側面)を、入院給付金などの形で支えてきました。これからは、顧客や患者が医療を通じて体験する価値(質的側面)を支えていくことが求められるでしょう。つまり、従来の「病気を治すための支援」に加えて、健康増進や生活の質(QOL)向上に主眼を置いた「病気にならないための支援」へと事業領域を拡大する必要があるのではないでしょうか。

健康診断結果によって割引等が受けられる健康増進型の保険商品や、アプリを通じて日々の運動データから個人の健康状態に合わせた運動メニューの提案を行うサービスなどは、その先駆的な事例といえるでしょう。

図表
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田村 洸樹


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