米国 トランプ関税の影響が徐々に顕在化(6月CPI)  

 ~財コア価格は前年比+0.7%と上昇幅を拡大~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年6月の消費者物価(総合CPI)は、前月比+0.3%(前月同+0.1)と上昇し、市場予想中央値(筆者予想同+0.3)と一致した。食品は、穀物・ベーカリー製品、卵が下落したものの、肉、野菜・果物、外食の上昇によって、同+0.3%(同+0.3%)と同率の伸びとなった。また、エネルギーがガソリンやガス等の上昇を背景に同+0.9%(同▲1.0%)と上昇に転じたほか、エネルギー・食品を除く消費者物価(コアCPI)が同+0.2%(同+0.1%)と市場予想中央値の同+0.3%(筆者予想同+0.3%)を下回ったものの、上昇した。
  • FRBは、7月のFOMCも政策金利を据え置くと予想される。先行きの不確実性の高い状況が続く中、6月のCPI統計ではコアCPIが前月比で低い伸びとなったものの、前年比で+2.9%と高い上昇率にとどまっている他、CPIは前月比+0.3%、前年同月比+2.7%と伸び率を高めた。また、労働市場が堅調さを維持していることから、FRBはトランプ関税政策の進展を見極めるため、様子見を継続すると見込まれる。
  • 金融市場では、CPI統計公表直後はインフレが大幅上昇しなかったことを好感し、金利が低下し、為替はドル安となり、主要株価指数は上昇した。しかし、自動車による押し下げがなければ、インフレの上昇率が高かったこと等を背景に、インフレ懸念が高まった。FF先物の利下げの織り込み度合いが弱まり、10年国債利回りが上昇、ドルは主要通貨に対して上昇した。主要株価指数は水準を切り下げた。
  • トランプ関税は、2月に中国からの輸入品に対して10%賦課され、3月に中国からの輸入製品に対して10%上乗せされたほか、カナダ、メキシコからの輸入製品の一部に25%の関税が課された。4月に25%の自動車関税、10%の相互関税が発動されたうえ、中国からの輸入製品に対して125%の関税が上乗せされた(トランプ2.0での対中関税賦課は計145%)。5月に25%の自動車部品関税が発動された。5月12日に米中がそれぞれ115%の関税引き下げ(14日に引き下げ)や、米国が90日間相互関税の上乗せを行わないことで合意したため、貿易の停止や異常な価格高騰は一旦回避できた。しかし、中国からの輸入製品に対する30%の関税は課されたままとなったことで、財価格の押し上げは避けられない。 このような関税政策のもと、カーテン、カーペット、タオル等のリネン類、時計、家電、玩具、スポーツ用品等の上昇率が高まるなどトランプ関税の影響が顕在化している。一方、駆け込み輸入による在庫増加の他、駆け込み需要の剥落による値下げ、貿易相手国の輸出価格の引き下げ等の影響で、自動車価格が下落を続けたため、6月のコアCPIは低い伸びにとどまった。しかし、今後在庫の減少によって、財価格の押し上げ圧力が強まっていくと予想される。
  • コアCPIでは、財コアが前月比+0.2%(前月同0.0%)、サービスコアが+0.3%(同+0.2%)とともに上昇した。 財コアでは、新車、中古車は下落を続け、自動車部品、情報機器は低下した。一方、衣料品、アルコール飲料が上昇に転じたうえ、家庭用耐久品・消耗品、医療用品、余暇商品、その他財が上昇した。特に、家電、玩具、カーテン等の上昇ペースが加速した。
  • サービスコアでは、専門医療、自動車メンテナンス・修理、余暇サービス、インターネットサービスが上昇に転じたうえ、上下水道・ゴミ収集サービス、医療保険、レンタカー、その他個人向けサービスが上昇した。
  • 前年同月比では、総合が+2.7%(前月+2.4%)と上昇し、市場予想中央値+2.6%(筆者予想同+2.6%)を上回った。食品は、外食が低下したが食材の上昇によって、+3.0%(同+2.9%)と上昇したほか、エネルギーが▲0.8%(同▲3.5%)と下落幅を縮小した。また、コアCPIは+2.9%(同+2.8%)と市場予想中央値(筆者予想同+2.9%)と一致したものの上昇した。コアCPIを財、サービス別にみると、財コアが+0.7%(同+0.3%)、サービスコアが+3.62%(同+3.56%)とともに上昇した。
  • 財コアでは、中古車、その他財が上昇した他、家庭用耐久品・消耗品は同率となった。さらに、衣服、娯楽用品、情報機器が下落幅を縮小した。
  • サービスコアでは、病院・関連サービス、専門医療サービス、医療保険、レンタカー、余暇サービスが上昇した。また、航空運賃、インターネットが下落幅を縮小した。サービスコアは、低下傾向を辿ってきたものの、賃金上昇の影響を受け易い部門や、住宅関連の高い伸びを背景に、前年比+3.6%と高い上昇率にとどまっており、引き続きコアCPIの前年比での鈍い低下の主因となっている。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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