内外経済ウォッチ『米国~銀行破綻を受けFRBの政策運営はより困難に~』(2023年5月号)

桂畑 誠治

目次

FRBは銀行破綻もインフレ警戒から利上げを継続

米国では、3月に米中堅銀行の破綻、スイス大手銀の経営問題によって、金融不安が高まった。破綻銀行の預金全額保護、FRBの融資プログラムなど流動性支援、早期の救済案の策定等によって、金融不安が一旦収まるなか、3月21、22日のFOMCで、FRBは政策金利であるFFレート誘導目標レンジを4.75~5.00%に引き上げた。FRBは、銀行破綻によって金融環境が大幅に引き締まる可能性があるものの、強い経済、高いインフレを背景に25bpの利上げが適切と判断した。

FRBは銀行破綻でターミナルレート引き上げ撤回

銀行破綻が起きるまでは、FRB関係者はターミナルレートの引き上げを示唆していた。しかし、3月公表のFOMC参加者の経済・金利予測では、インフレ予想が上方シフトしたが、ターミナルレート予想は、前回22年12月から変わらず5.1%となり、後1回の利上げが適切と予想された。

銀行破綻の影響について、FRBは米国の銀行システムは健全で強じんであるほか、FRBの流動性供給によって銀行システムの安全性が維持されているとの認識を示した。しかし、家計や企業の信用状況を厳しくし、経済活動、雇用、インフレを下押しする可能性が高いとの見方を示したうえで、引き続きインフレの高止まりを警戒していることを強調した。

図表1
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FRBは信用収縮とインフレのバランスを探る

3月の銀行破綻を受け、銀行融資の一部で縮小が起きているほか、3月のISM景気指数は製造業、非製造業ともに景気悪化懸念から新規受注が大幅に低下し、全体が押し下げられた。一方、3月の労働市場では、非農業部門雇用者数が前月差+23.6万人(2月同+31.1万人)と堅調な水準を維持したうえ、失業率は3.5%と前月の3.6%からさらに低下するなど、労働市場は依然過度に引き締まっている。インフレ環境では、2月のPCEコアデフレーターが前年同月比+4.6%とピークから低下しているものの、高止まりしており、FRBの目標である+2%を大幅に上回っている。

FRBは、政策金利の適切な水準を判断するうえで、これまでの大幅利上げの累積的な効果、経済活動やインフレに遅れて顕在化する影響、景気動向や金融環境の引き締まりなどを考慮する方針を維持しており、インフレが目標の2%に達する前に利上げを停止する考えだ。しかし、利上げ継続で信用状況がより悪化し、景気後退に陥るリスクがある一方、早すぎる利上げ停止は、株高、金利低下を招き、経済成長加速によるインフレ再上昇リスクがある。そうなれば、利上げが再開され、深刻な景気後退に陥る可能性が高い。銀行破綻によってFRBの政策運営はより困難さを増しており、米国経済のハードランディングリスクが高まっている。

図表2
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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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