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- Side Mirror(2025年4月号)
長く金融市場に係る仕事をしてきたが、いつの時代も、世の中で起きていることを正しく知ることは難しい。マクロのデータは、多くが、完全な個別データの集合ではなく、推計を含む加工データで、集計の難しさもあり、公表までそれなりの時間が必要だ。また、当たり前に使われる“季節調整値”は、前月比、前期比のように切片の傾きを知るには非常に有効であるが、それ以上ではない。一方、消費の現場での動きや、企業の設備投資等の動きは、具体的で、ライブ感もあることから、そうしたものに繰り返し触れていると、本来個別の話のはずなのに、世の中全体が同じように動いていると勘違いすることもある。
だからこそ、「木を見て森を見ず、森を見て木を見ず」という言葉が広く知られているわけだが、マーケットに携わる者は、改めて意識する必要があると感じている。どちらが正しいとか、どちらをしっかり見るべきという問題ではなく、マクロ情報、ミクロ情報にはそれぞれの特徴があるので、十分理解したうえで扱うべきということだろう。
また、世の中で起きていることを正しく知るためには、立体的に見る努力をする必要もありそうだ。
経済は各主体が複雑に絡み合う、立体的で流動的なものだ。だから、それをある時点で、ある方向だけから見て理解しても、それで全体を正しく知ったということにはならないだろう。ただ、そうしたものも“事実”であることには変わりはないが、それが“事実”の切り取りでしかないのか疑う、どこからみた事実なのかを考える、違う方向から見た“事実”を集める、といった癖をつけておきたい。まだ若い頃、会社の上司から、世の中で起きていることを正しく知るのは、正しい判断や行動をするための大前提であり、それが大人の責任だと教えられた。改めて肝に銘じておきたい。
なお、2013年5月号よりこの欄を担当してきましたが、今回号が最後となります。少しでも皆様のお役に立てたものがあったとすれば幸いです。これまで、ありがとうございました。
佐久間 啓
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。