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- 時評『今年の辰年は~竜頭蛇尾?それとも昇竜への登竜門?』
2024年も早いもので、もう1カ月が過ぎた。年末年始に各々イメージした今年の姿は、果たして現状ではどうであろうか。通常年末に干支にちなんだ特集記事をよく目にするが、1カ月経過したこの時期に改めて過去の辰年を振り返り、今後への参考としていただければ幸いである。
「辰」は「振(ふるう)」に通じるように、過去の辰年は大きく動き、時に動乱ともいえる出来事が生じている。また辰は古代中国で皇帝のシンボルであり、権力の象徴でもある。したがって特に政治面での「振動」は、過去の辰年でも見られた。
まず海外を見ると、昨今権威主義と言われるわが国周辺の国々のトップ、すなわちロシアのプーチン大統領(2000年)、中国の習近平国家主席(2012年)、北朝鮮の金正恩総書記(同)は軒並み辰年に権力の座についた。一方、1976年の辰年には戦後の中国を率いてきた毛沢東国家主席、周恩来首相が相次いで死去した。また2000年の米大統領選は史上稀にみる大接戦で、投票からブッシュ大統領の誕生まで1カ月以上を要した。くしくも今年は世界的な選挙イヤーであり、既に終了した台湾総統選のほか、その米大統領選(11月)、ロシア大統領選(3月)、また韓国やインド、英国でも総選挙が予定されている。
国内に目を転じると、直近では2012年の衆議院選挙で自民党が政権を奪還し、憲政史上最長となる第二次安倍政権が誕生した。一方、76年にはロッキード事件、88年にはリクルート事件と大きな贈収賄事件も起きており(ともに辰年)、いずれもその後の選挙では政権与党が大敗を喫することとなった。また2000年4月には小渕首相が脳梗塞で倒れ(翌月死去)、いわゆる「五人組」(当時の官房長官や自民党幹事長、同政調会長ら)が密室で森氏を事実上後継首相に決めたと言われた。足元でも政治とカネの問題が取り沙汰され、「五人衆」という単語が飛び交うなど、過去の辰年を彷彿させるような動きがある。また衆議院議員の任期は折り返し地点を過ぎており、本年中にも選挙があるとの見方も多い。
一方、国内の社会・経済に目を転じると、年始には能登半島地震や羽田の飛行機事故といった「大振動」に見舞われたが、概して過去の辰年は「前向きの振動」が多いように思う。1988年には当時としては最長の青函トンネルと、鉄道道路併用橋としては世界一の瀬戸大橋が、2012年には世界一高い電波塔として東京スカイツリーが完成した。また2000年のシドニー五輪女子マラソンでは高橋尚子氏が女子陸上として初となる金メダルを獲得、12年には山中伸弥教授がiPS細胞の研究等でノーベル生理学・医学賞を受賞した。そもそも十干十二支で言うと今年は「甲辰(きのえたつ)」で、前回の甲辰だった1964年はアジア初の東京オリンピック開催や東海道新幹線開業など、高度成長の階段を駆け上がっていた。
株価に目を転じると、1988年には日経平均株価が初の3万円の大台に乗せ、2012年にはその後本格化する、いわゆるアベノミクス相場の起点となった。足元ではバブル期以来の高値水準が続くが、相場の格言では「辰巳天井」とある。過去5回の辰年の日経平均株価年間騰落率は+10%で、今年は新NISA(少額投資非課税制度)スタートという追い風もある。なお今年は金融政策の行方も注目だが、当時のゼロ金利政策が解除されたのも辰年の2000年。当時日銀審議委員だった植田総裁は拙速なゼロ金利解除に反対したが、今回の判断は如何に。「竜頭蛇尾」とならず、「昇竜」への「登竜門」となる1年であってほしいものである。(2024年1月11日現在)
松村 圭一
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

