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- よく分かる!経済のツボ『訪日外国人の減少は何に影響しているの?』
入国制限により前年比▲87.1%の大幅減
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限により、2020年(暦年)の訪日外客数は411万5,900人(前年比▲87. 1%)と大幅に減少しました(図表1)。2021年に入ってからも感染状況の悪化に伴い入国制限は一層強化され、段階的に進んできた入国制限の緩和は振り出しに戻る形となりました。
消費減少のみならず、高スキル人材の戻りの弱さも
訪日外国人の減少による影響の一つとして、インバウンド消費の減少が挙げられます。コロナ前の2019年には3,188万人の外国人が日本を訪れ、訪日外国人旅行消費額は4.8兆円に達していました。しかし、入国制限に伴う訪日客の急激な減少によって、そのほとんどは消失することとなりました(資料2)。
ビジネスにも大きな影響が生じています。商用客については、14日間の待機や活動計画書の提出など、一定の条件の下で入国を認める緩和措置が段階的に進んでいましたが、手続きの煩雑さやリモートでの商談の浸透等を背景に、商用客の回復は極めて限定的なものに止まっています。
また、入国在留管理庁が11月から公表している国際的な人の往来再開に向けた入国者数をみると、入国者数12万8,625人のうち、7割超が技能実習生と留学生で占められており、高度専門職は199人、経営・管理は779人に止まるなど、特にスキルの高い人材に戻りの弱さがみられます(統計上確認できる2020年11月1日から2021年1月21日までの入国者数の合計)。
緊急事態宣言の再発令に伴い、爆発的な感染拡大は避けられたものの、依然として予断を許さない状況は続いており、現時点で大幅な入国緩和を進めることは困難です。今後ワクチンの普及等により感染状況の改善が見込まれる中で、段階的な入国制限緩和への道筋を立てることは、経済活動正常化に向けた次の一手として重要な要素となり、その動向が注目されます。
小池 理人
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。