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4月ユーロ圏消費者物価

~慎重な利下げペースを示唆~

田中 理

要旨
  • 4月30日に発表された4月のユーロ圏の消費者物価の速報値は前年比+2.4%と前月から不変。中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の再上昇を反映し、エネルギー価格の下落率が同▲0.6%と前月の同▲1.8%から緩和した一方、変動の大きい食料・エネルギー・アルコール飲料・たばこを除いたコア物価の上昇率が同+2.7%と前月の同+2.9%から鈍化した。コア物価の詳細は5月17日発表の確報値の結果を待たなければならないが、速報段階で入手可能な内訳からは、エネルギーを除く工業製品の上昇率が同+0.9%と前月の同+1.1%から一段と鈍化したことに加えて、高止まりが続いてきたサービスの上昇率も同+3.7%と過去5ヶ月の同+4.0%から鈍化した。
  • EUの統一基準でみた国別計数は、ドイツ(前月:同+2.3%→今月:同+2.4%)、スペイン(同+3.3%→同+3.4%)、ベルギー(同+3.8%→同+4.9%)などの上昇率が前月から加速した一方、イタリア(同+1.2%→同+1.0%)、オランダ(同+3.1%→同+2.6%)、オーストリア(同+4.1%→同+3.4%)などの上昇率が鈍化、フランス(同+2.4%→同+2.4%)が横這い。最も高い上昇率はベルギーの同+4.9%で、最も低い上昇率はリトアニアの同+0.4%。
  • 米FRBの利下げ開始が遠退くなかにあっても、最近のECB高官の発言からは、6月の利下げ開始が確実な情勢にある。その一方で、エネルギー価格の押し下げ一巡、PMIの物価関連指数やインディード賃金トラッカーなどの先行指標がサービス物価や賃金の粘着性の高さを示唆、同日公表された1~3月期のGDPで景気が想定を上回るペースで回復していることを確認するなど、中期的な物価安定達成の時間軸は長期化方向。利下げペースが慎重になる可能性が示唆される。

図表を含めた詳細についてはPDFファイルをご覧ください。

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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