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- よく分かる!経済のツボ『資源高で「下がる」物価指標とは?』
消費者物価指数とGDPデフレーター
消費者物価指数が、今年4月以降、世界的な資源高を背景に前年比+2%を超える推移が続いていることで、日本国内でもインフレに関する議論が取り沙汰されています。その一方、もうひとつの重要な物価指標であるGDPデフレーターは、依然としてマイナス圏での推移となっており、二つの指標は大きく乖離しています(資料1)。両者の違いはなぜ生まれているのでしょうか?
「ホームメイド」な物価上昇を表すGDPデフレーター
GDPデフレーターは、名目GDPと実質GDPの比で表されます。GDPは国内で生産した付加価値の合計ですから、輸入は控除されます。これは、原油高のような海外発の価格上昇によって輸入額が増加した時、名目GDPが減少し、GDPデフレーターの押し下げ要因となることを意味します。輸入価格の上昇が物価指標の押し下げ要因となることに違和感があるかもしれませんが、次のように考えることができます。すなわち、輸入価格上昇の一方で、輸入コスト増加分がすべて商品に価格転嫁されれば、最終的な消費額も増加するはずです。そのため、輸入価格上昇によるマイナス分は相殺され、GDPデフレーターは不変となります。一方で、もし価格転嫁が不十分な場合には、GDPデフレーターは下落することになります(資料2)。こうしたことから、GDPデフレーターは「ホームメイド・インフレ(国内主導の物価上昇)を示す物価指標」と呼ばれます。
いま、世界的な資源価格高騰で輸入物価は大幅な上昇が続いており、消費者物価はこれを反映して高い上昇が続いています。一方で、GDPデフレーターはマイナスの推移が続いていることから、足元の物価基調は輸入インフレに留まり、国内における需給バランスの改善による自律的な物価上昇は実現していないことが読み取れます。実際に、経産省が中小企業に向けて行った調査では、コスト上昇分の3割以下しか価格転嫁できていないとする企業が過半数をしめており、国内価格へ波及は十分に進んでいるとは言えません(資料3)。景気が十分に回復していない中では、消費者の値上げに対する抵抗感も強く、国内企業の値上げ行動が難しいという課題の表れとも言えるでしょう。このように、物価の基調を正しく判断する上ではGDPデフレーターに注目することも重要です。
大柴 千智
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。