半導体の名産地 台湾からの朗報が続く

日本株の持続的下落は想定しにくい

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。
  • 日銀は、10月に追加利上げを実施するだろう。
  • FEDは7月に利下げを開始、FF金利は年末に5.00%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.9%、NASDAQは+1.1%で引け。VIXは16.9へと低下。
  • 米金利はツイスト・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.405%(±0.0bp)へと上昇。 実質金利は2.202%(▲1.3bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲36.5bpへとマイナス幅縮小。
  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは154後半で推移。コモディティはWTI原油が82.9㌦(▲0.3㌦)へと低下。銅は9829.5㌦(▲46.5㌦)へと低下。金は2332.2㌦(▲66.2㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)
米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)

(%) 米国 イールドカーブ
(%) 米国 イールドカーブ

(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)
(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

注目点

  • 4月22日に発表された台湾の3月輸出受注は、半導体市況の先行き不透明感を和らげる結果であった。台湾半導体製造受託世界最大手と蘭半導体製造装置(露光装置メーカー)の決算を通過後、半導体関連銘柄を多く内包する日経平均株価は、それら銘柄の下落に主導され4月19日には37068円(3月22日に付けた直近高値の40888円から10%近い下落)まで下落する場面があった。もっとも、半導体市況の改善がよりはっきりとしてくれば、再び高値更新が視野に入るだろう。

  • 台湾は言わずと知れたIT関連財の生産集積地であり、その動向は日本経済(日本株)に有益な情報を与えてくれる。3月の輸出受注は前年比+1.2%とプラス圏に浮上した。輸出の6割を占める電子製品と情報通信技術製品(ICT)が共に増加。前者は同+12.0%とはっきりとプラス圏に浮上し、後者は+4.3%と3ヶ月ぶりのプラスであった。直近6ヶ月、全体の受注額はプラスとマイナスを繰り返しているが、世界半導体売上高の復調が鮮明化しつつある現状に鑑みると、先行きは更なる回復が期待される。実際、台湾経済部もAI関連需要にけん引される形で強気な見通しを示している。その上で「AI、ハイパフォーマンスコンピューティング、クラウド産業の需要は引き続き増加しているが、従来品の需要はまだ大きくは回復していない」(ロイター)として、先端品以外の回復も見込んでいる。その他、台湾の経済指標に目を向けると、製造業PMIが50に向けて前進している他、電子部品の出荷・在庫バランスが需給ひっ迫方向に向けて上昇基調にあるなど多くの指標が上向いている。こうした前向きな傾向が続き、広範な製品(用途)で半導体需要が回復すれば、本邦半導体企業(製造装置、部材)も当然恩恵を受ける。

台湾 輸出受注、台湾 製造業PMI
台湾 輸出受注、台湾 製造業PMI

台湾 輸出受注
台湾 輸出受注

台湾 製造業PMI
台湾 製造業PMI

台湾 電子部品 出荷・在庫バランス
台湾 電子部品 出荷・在庫バランス

  • また韓国の経済指標でもはっきりとした半導体市況の回復が示されている。鉱工業生産統計に目を向けると、半導体の生産水準は既に前サイクルのピークを凌駕しており、前年比では6割超の増加を遂げている。(※本題から逸れるためグラフを紹介するに留めるが、日本の鉱工業生産は韓国に大きく引き離されている)

韓国 鉱工業生産、日本・韓国 鉱工業生産
韓国 鉱工業生産、日本・韓国 鉱工業生産

韓国 鉱工業生産
韓国 鉱工業生産

日本・韓国 鉱工業生産
日本・韓国 鉱工業生産

  • これらを踏まえると、年初来の日本株上昇の背景にあった半導体市況の回復が頓挫する可能性は現時点で低い。半導体市況の先行き不透明感から日本株は下落したものの、持続的下落は想定しにくい。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。