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2024.04.17
アジア経済
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ニュージーランド、インフレの粘着度は中銀の抑制姿勢の長期化を示唆
~NZドルの対米ドル相場は米FRBの動き如何の一方、日本円に対しては底堅い展開が続くであろう~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド経済を巡っては、物価高と金利高の共存が長期化するとともに、世界経済の不透明感も重なる形で昨年後半はスタグフレーションに陥っている。こうした状況ながら、中銀は今月の定例会合でも金利据え置きに加え、先行きも長期間に亘って抑制的な政策運営を堅持する方針を示している。1-3月のインフレ率は前年比+4.0%と一段と鈍化するも中銀見通しから上振れしている上、非貿易財やサービス物価の上昇が確認されるなどインフレの粘着度の高さがうかがえる。米ドル高の再燃を受けてNZドル相場に下押し圧力が掛かるとともに、中東情勢の不透明さを理由に原油相場も底入れするなどインフレに繋がる動きもみられる。中銀は引き続き現行の抑制姿勢を維持せざるを得ない一方、NZドルの対米ドル相場は米FRBに対する見方に左右されるも、日本円に対しては底堅い展開が続く可能性が高いと見込まれる。
ニュージーランドにおいては、過去3年以上に亘ってインフレ率が中銀目標を上回る水準で推移している上、中銀は物価と為替の安定を目的に累計525bpもの断続利上げを迫られるなど、物価高と金利高の共存状態が長期化している。さらに、最大の輸出相手である中国経済を巡る不透明感の高まりに加え、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引してきた欧米など主要国景気の勢いにも陰りが出るなど、外需を取り巻く環境にも厳しさが増している。このように内・外需双方に下押し要因が山積していることを受けて、昨年後半の同国経済は2四半期連続のマイナス成長というテクニカル・リセッションとなるなど景気に急ブレーキが掛かる状況となっており、同国経済はスタグフレーションに陥っていると捉えられる(注1)。こうした状況にも拘らず、中銀は今月の定例会合において政策金利(OCR)を6会合連続で5.50%に据え置くとともに、先行きの政策運営を巡って長期間に亘って抑制的な水準を維持することによりインフレを目標域に引き下げられると確信するとして、引き締め姿勢を維持する考えを示している(注2)。中銀が引き締め姿勢を維持している背景には、昨年末に発足したラクソン政権が経済重視路線を打ち出すなど、アーダーン、ヒプキンスと2代連続の労働党政権下から大規模な政策転換を図る動きをみせており、景気の底打ちに繋がる動きがみられることに加え、短期的なインフレ上振れを警戒していることも影響している。なお、1-3月のインフレ率は前年同期比+4.0%と前期(同+4.7%)から一段と鈍化して3年弱ぶりの水準となっている一方、コアインフレ率は同+4.1%と前期(同+4.1%)からほぼ横這いで推移している上、ともに中銀目標(1~3%)の上限を上回る推移が続いている。前期比もインフレ率は+0.64%と前期(同+0.48%)から上昇ペースが加速しており、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレ圧力がくすぶるものの、貿易財を中心に物価に下押し圧力が掛かる動きがみられる。他方、コアインフレ率は同+0.88%と前期(同+0.89%)並みの上昇が続いており、非貿易財を中心に物価上昇の動きが続いているほか、堅調な雇用環境を反映してサービス物価も上昇圧力を強めるなど、インフレ圧力の粘着度の高さをうかがわせる動きがみられる。さらに、足下のインフレ率は中銀による最新見通し(1-3月は前年比+3.8%)をわずかに上回っているほか、上述のように中銀は引き締め姿勢の長期化を示唆する動きをみせているにも拘らず、国際金融市場では米国のインフレの粘着度の高さがあらためて確認されるなかで米FRB(連邦準備制度理事会)の政策運営に対する見方の変化を反映して米ドル高の動きが再燃しており、こうした動きを受けてNZドルの対米ドル相場は下振れするなど輸入インフレ圧力が強まる懸念が高まっている。また、足下では中東情勢を巡る不透明感の高まりを反映して国際原油価格は底入れの動きを強めており、エネルギー価格に押し上げ圧力が掛かることも懸念される。よって、中銀は先行きも抑制的な政策姿勢を維持せざるを得ない展開が続くと見込まれるものの、NZドル相場については米ドルに対しては引き続き米FRBの動き如何とみられる一方、日本円に対しては日本銀行による『次の手』が見通せないなかで底堅い推移が続くと予想される。
注1 3月21日付レポート「ニュージーランドはテクニカル・リセッションで景気に急ブレーキ」
注2 4月10日付レポート「ニュージーランド中銀、スタグフレーションにも拘らず「長期間の抑制姿勢」を堅持」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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